「過去問は、いつから始めればいいんですか?」「塾は12月からと言うけれど、本当にそれで間に合うんでしょうか」。三者面談の時期になると、多くの保護者の方が気にされる疑問です。
周りの子が過去問を解き始めたと聞くと焦りますし、かといって基礎が固まっていないまま始めても意味があるのか、迷いますよね。
結論から言うと、過去問を始める時期は「志望校が学校選択問題かどうか」と「北辰テストの偏差値が志望校のラインに近づいているか」で決めるのが現実的です。学校選択問題を使う上位校を目指すなら9月ごろに1年分だけ触れておき、標準問題の学校なら10月〜12月、基礎の固めが先に必要なら1月以降でも間に合うことがあります。
この記事では、2027年(令和9年度)入試から変わる点を確認したうえで、北辰偏差値の帯ごとの開始時期の目安、私立の確約との兼ね合い、教科別の入り方、何年分を何周するか、家庭で進めるときの注意点までまとめます。数字や日程は県教育委員会の発表に基づくものと、この記事が示す開始時期の目安とを分けて書きます。
過去問を始める前に知っておきたいこと
2027年(令和9年度)入試で変わること
今の中3は、埼玉県公立高校入試が大きく変わる最初の学年です。過去問をいつ、どう使うかにも関わるので、先に県教育委員会の発表を整理します。
選抜の仕組み
- 選抜の種類:学力検査・調査書・面接で選ぶ「共通選抜」と、これに各校が定める「特色検査」(実技検査または作文・小論文)を加えられる「特色選抜」があります。どちらで実施するか、両方を組み合わせるかは各高校が決めます
- 調査書:記載項目は、9教科5段階の評定と総合的な学習の時間の記録です
- 自己評価資料:受検生が自分で作る資料です。それ自体は評価されず、面接の参考にされます
- 面接:全ての受検生に、個人面接または集団面接が行われます
- 学力検査:国語・社会・数学・理科・英語の5教科(各100点、合計500点)で、マークシート方式と記述式を組み合わせた形になります
日程(令和9年)
- 出願期間:1月26日(火)〜2月9日(火)(インターネット出願)
- 学力検査:2月25日(木)
- 面接:2月26日(金)(全ての学校)
- 特色検査:3月1日(月)(一部の学校。2月26日に行う場合もあります)
- 追検査:3月2日(火)
- 入学許可候補者発表:3月5日(金)
調査書や面接の得点の扱いは学校によって違い、各校が「選抜実施内容」として公表しています。共通選抜では、調査書の学年ごとの比率を1:1:1、1:1:2、1:1:3から、面接の配点を30点か60点から、各校が選びます。志望校がどれを選んでいるかは、必ず県のページで確認してください。
この変更を踏まえた過去問の位置づけは、次のように考えると整理しやすくなります。令和8年度以前の過去問は、現行の解答形式のものです。そのため、出題の傾向や難しさをつかむ教材としては引き続き役に立ちますが、解答の方式や配点は、志望校の最新の選抜実施内容で別に確かめる必要があります。
過去問は何のために解くのか
過去問演習は、実力を測る「力試し」であると同時に、志望校の出題形式とペース配分に慣れるための練習です。
埼玉県の公立高校入試では、数学と英語について、各高校の判断で、問題の一部に応用的な内容を含む「学校選択問題」に変更できます。つまり、同じ学力でも、学校選択問題に慣れているかどうかで、本番の落ち着き方が変わる可能性があります。
- 学校選択問題の対象は数学と英語の2教科で、国語・社会・理科は共通です
- どの学校が実施するかは、県が毎年「学校選択問題実施校」として公表しています
- 志望校が実施校かどうかで、数学・英語の過去問に取りかかる時期の考え方が変わります
過去問の価値は、解いた点数そのものより、「今の自分と本番のレベルの差」がわかることにあります。そのため、早く始めるほど良いわけでも、遅くてよいわけでもありません。基礎が固まっている状態で始めるから、結果の分析が意味を持ちます。
塾の「12月から」をどう受け止めるか
多くの塾では、過去問演習を冬期講習のころ(12月前後)から始めると案内しています。これは間違いではありません。一方で、全員に同じ時期を案内する形になりやすいので、ご家庭の側でも、お子さんに当てはまるかを確かめる物差しを持っておくと安心です。
確かめたいのは、たとえば次のことです。
- 志望校は学校選択問題の実施校かどうか
- 直近2〜3回の北辰テストの偏差値は、志望校のラインに対してどう推移しているか
- 過去問演習は通常の授業料の中に入っているのか、別の講座として費用がかかるのか
- 記述の答案を、誰が、どのくらいの頻度で見てくれるのか
面談では「うちの子の志望校と今の偏差値だと、過去問はいつ始めるのがよいですか」と具体的に聞いてみてください。理由まで説明してもらえれば、判断の材料になります。
北辰偏差値の帯ごとの開始時期の目安
ここからは、開始時期の目安です。公式に決まっている時期ではありません。前提は、志望校のラインに近い北辰偏差値を、複数回安定して取れていることです。基礎が固まっていない状態で早く始めると、かえって自信をなくすことがあります。
北辰偏差値65前後以上で、学校選択問題の学校を目指す場合
目安は、中3の9月ごろに、まず1年分です。ここでの目的は、点数を取ることではなく、今の実力と本番形式との距離を測ることです。
学校選択問題は、応用的な内容を含み、記述量も多くなりがちです。傾向を知らないまま冬を迎えると、対策に使える時間が短くなります。9月に1年分解き、弱点の補強と過去問演習を並行して進めるのが、無理の少ない流れです。
この層では、記述の答案を誰かに見てもらえる環境があるかどうかも大きな要素です。学校の先生や塾の講師に添削を頼めるか、早めに確かめておいてください。
北辰偏差値60〜64前後の場合
目安は、10月ごろからです。志望校が学校選択問題の実施校なら、9月に1年分だけ傾向確認として触れておくと、その後の演習が進めやすくなります。標準問題の学校なら、10月からで間に合うことが多いでしょう。
ただし、内申点の取り組みや定期テストの時期と重なります。過去問を理由に定期テストの勉強を後回しにしないよう、週ごとの予定を先に決めておくと安心です。
北辰偏差値55〜59前後の場合
目安は、11月ごろからです。それまでは、基礎から応用までの単元の学習を丁寧に積み上げるほうが、結果的に点につながりやすい層です。
焦って前倒しをする必要はありません。ただし、10月の北辰テストの結果で志望校のラインに届いていない教科があれば、その教科の復習を優先してください。
北辰偏差値50〜54前後の場合
目安は、12月(冬期講習のころ)からです。この層は、基礎〜標準レベルの取りこぼしを減らすことが、得点アップに直結します。
12月までは、過去問よりも基礎の総復習に時間を使うほうが、点数が伸びやすい層です。その代わり、12月に入ったら、時間を計って本番どおりに解く練習を始めましょう。
北辰偏差値40台後半以下の場合
過去問演習よりも、中学校で学ぶ内容の定着が最優先です。1月以降に、過去問で出題形式に慣れる程度でも、基礎の穴を埋めていれば間に合うことがあります。
この層で大切なのは、「どの単元の何でつまずいているか」を特定することです。過去問を解いて見つかった失点の原因が、そのまま復習の優先順位になります。
なお、これらは学力の目安です。志望校の学校名ごとの偏差値は、「みんなの高校情報」などで確認し、お子さんの北辰偏差値と見比べて、どの帯に当てはまるかを判断してください。
→ 学校選択問題はいつから対策?浦和・大宮・浦和一女の中3へ
私立の確約と、過去問の時期の関係
埼玉では、秋の私立高校の個別相談会で、北辰テストの成績や通知表をもとに入試前の見通しを聞く「確約」という運用があります。この見通しが立つ時期と、公立の過去問を本格的に進める時期は重なりやすくなります。
一般的な流れは、次のとおりです。
私立の確約から公立の過去問までの年間の流れ
- 7月〜9月:北辰テストを受け、私立が示す基準を満たせるかを確認する時期
- 9月〜11月:個別相談会に参加し、私立の見通しを聞く時期
- 11月〜12月:併願先の見通しが立ち、公立の過去問に時間を回しやすくなる時期
併願先の見通しが立つと、気持ちに余裕ができて、公立の過去問に集中しやすくなります。反対に、見通しが立たないまま公立だけに時間を使うと、私立の基準にかかわる北辰テストの対策が手薄になることがあります。
確約の基準は、公表している学校と、個別相談で伝える学校があります。公表されていない場合は、志望する私立高校の説明会や個別相談会で直接聞くのが確実です。基準の一覧は、こちらの記事にまとめています。
→ 内申・北辰の確約基準一覧【2027年入試】埼玉私立の学校別
過去問の進め方:教科ごとの入り方と、年数・周回数
教科ごとの過去問への入り方
5教科すべてを同じタイミングで過去問に移す必要はありません。教科の性質によって、効果が出やすい時期は違います。
- 数学・英語:出題形式や設問の構成に特徴が出やすい教科です。志望校が学校選択問題を実施しているかを先に確認し、上の帯ごとの目安に沿って始めます
- 国語:文章量や記述の傾向をつかむため、他の教科より少し早めに、1〜2年分だけ触れておくと、読む速さの感覚がつかみやすくなります
- 理科・社会:過去問より先に、単元ごとの知識の抜けを埋めることが得点に直結します。11月〜12月ごろまでは知識の整理を優先し、直前期に過去問で知識の使い方を確かめる流れが効率的です
理科・社会の進め方は、こちらの記事でくわしく書いています。
過去問は何年分・何周するか
よく聞かれる質問です。決まった正解はありませんが、目安は次のとおりです。
年数
- 目安:直近3〜5年分
- 理由:1年分だけでは傾向のぶれが読めません。古い年度は、出題の傾向が変わっている可能性があります。令和9年度から解答方式が変わるため、形式の違いにも注意してください
周回数
- 目安:2〜3周
- 理由:解き直しで、時間配分と正答率の精度を上げるためです
1周目の使い方
- 点数は気にしません
- 今の実力と本番レベルとのずれを知る、診断として使います
2周目以降の使い方
- 間違えた問題を、原因ごとに解き直します
- 時間配分と、記述の書き方を整えます
年度によって難しさにばらつきがあります。1回の点数に一喜一憂せず、複数年分を通して傾向をとらえましょう。過去問の北辰テスト版の使い方は、こちらにあります。
過去問と並行して気をつけたいこと
内申点との時間配分を忘れない
令和9年度入試でも、調査書は選抜の資料に使われます。共通選抜では、各学年の評定に学校ごとの比率を掛けて得点にするので、3年生の2学期までの評定は引き続き大切です。
過去問に力を入れるあまり、定期テストや提出物がおろそかになって評定を落とすと、もったいない結果になります。特に2学期の期末テストの時期は、過去問を始める時期と重なりやすくなります。
- 定期テストの2週間前からは、定期テストの勉強を優先する
- テストが終わったら、過去問の演習に戻る
- 提出物の期限は、過去問の予定より先にカレンダーに書き込む
→ 中3の2学期で内申点は上げられる?提出物とテストの4つの工夫
北辰テストの結果を「始めるサイン」にする
過去問を始めるかどうかは、学校の授業の進み具合や塾のカリキュラム表だけで決めるより、直近2〜3回の北辰偏差値が志望校のラインに対してどう動いているかで判断するほうが、実態に合います。
1回のテストだけだと、体調や出題分野の偏りに振り回されます。複数回を並べて、傾向として見てください。
志望校のラインから大きく離れている状態で過去問に手をつけると、傾向をつかむ前に「基礎の穴」ばかりが見つかり、演習にならないことがあります。反対に、偏差値がライン付近で安定してきたら、過去問を入れるよい時期です。「ライン」の具体的な数字は、志望校や年度で変わるので、お子さんの志望校について、学校や塾の先生にも確認してください。
家庭で過去問を進めるときの注意点
塾に任せきりにせず、家庭でも過去問を進める場合は、次の点に気をつけてください。
- 時間を本番どおりに計る:教科ごとの制限時間が決まっています。だらだら解くと実力を正しく測れません
- 採点を甘くしない:記述式は、部分点の基準を自己流にせず、できれば学校や塾の先生に確認してもらいましょう
- 傾向と点数を分けて分析する:初回の点数が低くても、慌てる必要はありません。どの分野で、なぜ失点したかをノートにまとめることのほうが大切です
- 間違いを原因で分類する:知識不足、時間切れ、問題文の読み違いでは、対策が変わります
記述の採点と失点の原因の分類は、親子だけで進めると行き詰まりやすいところです。学校の先生や、通っている塾の講師に見てもらえる場合は、頼ってかまいません。すべてを家庭で抱え込む必要はありません。
よくある質問
Q. 過去問の点数が悪くても大丈夫ですか?
A. 特に初回は、志望校のラインに届かなくても慌てなくて大丈夫です。過去問は、今の弱点を洗い出すための道具です。点数よりも、間違えた原因の分析に時間を使ってください。
Q. 学校選択問題と標準問題、両方解いたほうがいいですか?
A. 志望校が学校選択問題を実施している場合は、まずそちらを優先してください。余裕があれば標準問題にも触れておくと、基礎の抜けを確認できます。
Q. 北辰テストと過去問、どちらを優先しますか?
A. 役割が違います。北辰テストは今の立ち位置を測るもの、過去問は志望校の出題形式に慣れる練習です。北辰テストの結果を見ながら、過去問を始める時期を調整するのがよいでしょう。
Q. 私立の確約が取れていないと、公立の過去問に集中できませんか?
A. 確約が取れていなくても、過去問を進めて問題ありません。ただし公立だけに偏らず、私立が求める北辰テストの基準も、並行して意識しておくと慌てずに済みます。
Q. 入試制度が変わりますが、過去問を解く意味はありますか?
A. あります。出題の傾向や、単元ごとの難しさをつかむ教材として、引き続き役に立ちます。ただし、令和9年度入試からはマークシート方式が導入されるなど、解答の形式が変わります。志望校の選抜実施内容と、県が出している受検の注意の資料もあわせて確認してください。
まとめ:過去問の開始時期は、志望校の問題の種類と北辰偏差値の推移で決める
- 学校選択問題の上位校を目指すなら、9月ごろに1年分、傾向と距離を測る
- 標準問題の学校は、偏差値の帯に応じて10月〜12月ごろが目安
- 基礎が固まっていない場合は、基礎の穴埋めを先にして、1月以降でも間に合うことがある
- 教科ごとに入り方は違い、数学・英語は形式に慣れ、理科・社会は知識の整理を優先する
- 私立の併願先の見通しが立つ11月〜12月は、公立の過去問を本格化させやすい時期
- 塾のカリキュラム表より、直近の北辰偏差値の推移で判断する
- 内申点とのバランスを崩さず、定期テストの前は定期テストを優先する
過去問は、早ければよいわけでも、決められた時期まで待てばよいわけでもありません。お子さんの北辰偏差値と志望校のライン、私立の見通しを見ながら、始める時期を決めてあげてください。
次にやることは3つです。志望校が学校選択問題の実施校かを県のページで調べること、直近の北辰テストの成績表を並べてみること、そして志望校の選抜実施内容で、調査書と面接の扱いを確認することです。
この記事で確認した資料
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜に関する情報(埼玉県、2026年11月5日確認)
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施基本方針(埼玉県教育委員会、2024年9月26日、2026年11月5日確認)
- 令和9年度入学者選抜から変わる入学者選抜制度の紹介リーフレット(埼玉県教育委員会、2024年12月、2026年11月5日確認)
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜の日程(埼玉県、2026年11月5日確認)






