「うちの子、社会の暗記はやっているのに、なぜ模試の点数が伸びないんでしょうか」「理科と社会は、一問一答を回していれば大丈夫ですよね?」。こうした疑問を持つ保護者の方は少なくありません。
毎日の仕事や家事のあいだに、教科ごとの勉強のしかたまで確かめるのは大変です。「暗記しているのに点が取れない」と聞くと、勉強が足りないのかと不安になるものです。
結論から言うと、埼玉県の公立入試の理科・社会は、一問一答の暗記だけでは点が伸びにくい教科です。ただし暗記が不要なわけではなく、暗記を「使える知識」に変える練習を足すのが対策の中心になります。しかも、現中3が受ける令和9年度(2027年)入試からは、学力検査の解答方式がマークシートに変わります。
この記事では、県教育委員会が公表している制度の変更点を確かめたうえで、理科・社会の対策の考え方と、家庭でできる進め方を整理します。
令和9年度入試で変わること:マークシート導入と作文の廃止
埼玉県教育委員会は2025年7月24日に、令和9年度の公立高校入試の学力検査について、解答方法にマークシート方式を導入すると発表しました。学力検査と追検査の両方が対象です。
各教科の出題形式の割合は、得点に換算して、マークシート方式の問題が9割程度、記述式の問題が1割程度とされています。あわせて、国語の作文は出題しないことも公表されています。英語のリスニングは、これまでどおり実施される予定です。
令和9年度入試の主な日程は、県の公表資料では次のとおりです。
- 出願期間:2027年1月26日(火)〜2月9日(火)(インターネットを使った出願)
- 学力検査:2027年2月25日(木)
- 面接(全ての学校):2027年2月26日(金)
- 特色検査(一部の学校):3月1日(月)。2月26日に実施する場合もある
- 追検査:3月2日(火)
- 入学許可候補者発表:3月5日(金)
面接は全ての学校で行われると示されています。特色検査は一部の学校だけの実施です。受けたい学校が対象かどうかは、志望校の選抜実施内容で確かめてください。
理科・社会の出題内容そのものが、この発表で変わるわけではありません。変わるのは「答え方」です。そのため、勉強のしかたも見直す価値があります。
理科・社会は全員が同じ問題。だから差がつく
埼玉県の公立入試には「学校選択問題」があります。令和9年度入試では、数学と英語について、届け出のあった23校が学校選択問題を出題します。理科と社会は対象になっていないので、どの高校を受ける人も同じ問題を解きます。
ここで「学校選択問題ではないなら、基礎的な暗記でなんとかなる」と考えるご家庭があります。ただ、全員が同じ問題を解くということは、基礎を固めた受験生どうしの中で点差がつくということでもあります。
この点差のつきやすい部分は、資料を読んで考える問題だと考えられます。これは一般的な見方で、県が公表している配点の話ではありません。実際にどの程度の割合で出るかは、過去問で確かめてください。
数学・英語に比べて、理科・社会は「後回しでも間に合う」と思われがちです。けれども、点数を安定して取りやすい教科でもあるので、早めに仕組みをつくる価値があります。
マークシートになっても「暗記だけ」では足りない理由
選択式が増えると聞くと、「簡単になるのでは」と感じるかもしれません。県が示している出題の基本方針を見ると、そうとは言い切れません。
令和9年度の出題の基本方針には、次の趣旨が書かれています。
- 中学校での平素の学習を重んじ、学習指導要領に基づいて出題する
- 基礎的な知識・技能をみる問題とともに、知識・技能を活用して課題を解決するために必要な、思考力・判断力・表現力等をみる問題の出題に配慮する
- 受検者の学力を十分に把握できるよう、記述による解答を求めるよう配慮する
つまり、答えを選ぶ形式になっても、考える力をみる方針は続いています。選択肢を選ぶ前に、頭の中で筋道を立てる力が必要なことは変わりません。
ここで、暗記と理解の違いを整理しておきます。入試で必要になる力は、大きく3段階で考えると分かりやすくなります。
- 知識の再生:用語・年号・公式を思い出せるか
- 知識の理解:その知識が「なぜそうなるのか」「ほかの知識とどうつながるのか」を説明できるか
- 知識の運用:初めて見る資料や場面に、持っている知識を当てはめて考えられるか
一問一答は、1段階目を鍛えるのには効率のよい方法です。ただ、2段階目、3段階目は、それだけでは育ちにくいものです。暗記には熱心なのに点が伸びないお子さんは、1段階目で止まっていることが多いものです。
選択式の問題では、とくに選択肢の吟味が大切になります。「正しいものをすべて選ぶ」「AとBの組み合わせで正しいものを選ぶ」といった形は、消去法だけでは解きにくいものです。自分の言葉で理由を説明できる状態をつくってから選ぶ、という順番を崩さないようにしてください。
理科の対策:実験の条件と結果を読む練習
理科は、物理・化学と、生物・地学で、対策の向きが少し変わります。共通して言えるのは、問題文の中の条件を落とさずに読む力が点数に直結することです。
問題文を最後まで読む習慣
理科の問題は、実験や観察の場面を文章で説明し、そのうえで設問が続く形が多くなっています。問題文に書かれた条件を読み落とすと、知識があっても解けません。過去問で「どこに答えのヒントがあったか」に線を引いて確かめると、読み方の癖が見えてきます。
物理・化学:数値と条件から法則を考える
表やグラフから必要な数値を自分で取り出し、そのうえで計算する問題では、立式の前に「何を求めるのか」「どの条件が変わっているのか」を整理することが大切です。公式を覚えているだけでは足りず、「なぜこの条件だとこの結果になるのか」を言葉にできるかどうかで差が出ます。
生物・地学:図や観察記録を読む
植物のつくり、天体の動き、地層の重なりなどは、図やグラフとセットで出ることの多い分野です。用語だけを覚えるのではなく、「なぜこの形をしているのか」「なぜこの順番で重なっているのか」を理屈で説明できるようにしておくと、切り口が変わった問題にも対応しやすくなります。
理科全体では、「用語 → 意味 → 理由 → 応用」と、4段階で積み上げる意識をもってください。用語と意味で止まってしまうお子さんが多いので、理由と応用まで一歩進める練習を、家庭学習に少しずつ入れていきましょう。
理科の見直しで確かめたいこと
- 問題文の条件(温度、質量、時間など)に線を引いて読んだか
- 表やグラフから、必要な数値を自分で取り出せたか
- 答えの理由を、一文で言えるか
この3つを間違えた問題ごとに確かめるだけでも、「分かったつもり」で終わる問題が減ります。解説を読んで納得できたときほど、何も見ずにもう一度自分で説明してみてください。説明できなければ、まだ理解の段階に届いていないということです。
社会の対策:資料を速く正確に読み取る
社会は、地理・歴史・公民で求められる力が少しずつ違います。共通して重要なのが、グラフ・地図・統計などの資料を読み取る力です。知識があっても資料を読むのが遅いと、時間が足りなくなります。
地理:なぜその地域でそうなるのかを考える
雨温図、統計、地形図などを読み取る問題が中心になります。地名や産業名を覚えるだけでなく、「なぜこの地域でこの産業が盛んなのか」「なぜ降水量が多いのか」といった原因まで説明できるようにしておきましょう。地形図は、縮尺から実際の距離を求める練習も必要です。
歴史:出来事の因果関係で覚える
年号を単独で覚えるより、「なぜ起きたのか」「その結果、何が変わったのか」という流れで覚えたほうが、選択式にも記述式にも使えます。年表を作るときも、出来事のあいだに矢印を書いて、つながりを確かめてみてください。
公民:ニュースと結びつけて理解する
政治や経済の仕組みは、身近な話題と結びつけて理解すると定着しやすくなります。夕食のときに「その日のニュースで気になったこと」を1つ話題にするだけでも、考える土台になります。
分野をまたぐ視点
地理・歴史・公民をバラバラに覚えるのではなく、「この時代の出来事が、今の地理や公民の仕組みにどうつながるか」という横のつながりを意識しておくと、初めて見る資料にも対応しやすくなります。
資料の読み取りの練習としては、間違えた問題の資料に「どの数字を見て答えを決めたか」を書き込む方法が手軽です。グラフのどこを見ればよいかが分かると、選択肢で迷う時間が減っていきます。
家庭でできる対策と、時期ごとの進め方
ここまでの考え方を、家庭で進めやすい形にします。
ステップ1:間違いの原因を分けて見直す
過去問や北辰テストの見直しでは、正解・不正解を確かめて終わりにしません。間違いの原因を、次の3つに分けてみてください。
- 知識が足りなかった
- 資料や問題文の読み取りでつまずいた
- 時間が足りなかった
ノートに原因を一言メモするだけで、見直しの質が変わります。原因が違えば、直し方も違うからです。
分析の結果、知識不足が多いなら暗記に戻り、読み取りでの失点が多いなら資料を読む練習を増やします。時間切れが多いなら、解く順番や、資料を読む時間の配分を見直します。「全部やり直す」のではなく、原因に合わせて手を打つほうが、限られた時間では効率的です。
ステップ2:資料集や図説を暗記帳と並行して使う
用語を覚えるときは、対応する図やグラフ、写真、地図とセットで確かめます。教科書の文章だけでなく、資料集を普段から開いておくと、本番の初見の資料にも落ち着いて向き合えます。
ステップ3:説明するアウトプットを増やす
覚えたことを、口で説明する、あるいはノートに自分の言葉で書いてみる。この練習が、理解と運用の段階を育てます。
保護者の方が聞き役になる場合は、お子さんが詰まったときに、先に理由を説明してしまわないよう気をつけてください。考えて言葉にする機会が、そこで失われてしまうからです。「なぜだと思う?」と聞いて、答えが出るまで待つだけでも十分な練習になります。親子で衝突しやすい時期でもあるので、聞き役は学校の先生や塾の先生など、親以外でもかまいません。
時期ごとの目安
- 中1・中2:基礎用語を丁寧に身につけながら、資料集や図説を見る習慣をつける時期です。理解を飛ばして暗記だけに偏ると、中3で伸び悩みやすくなります
- 中3の秋〜冬:過去問を使い、間違いの原因を分けて見直す練習を回す時期です。分野をまたぐ問題にも慣れておきます
- 直前期:新しい内容を詰め込むのではなく、既習範囲の精度を上げることに集中します。時間を意識して過去問を解き、時間配分を確かめます
令和9年度入試の学力検査は2027年2月25日です。現中3のお子さんは、「暗記中心」から「理由を説明する練習」へ、早めに少しずつ切り替えていくのが現実的です。11月からの仕上げ方は、こちらの記事でも整理しています。
北辰テストの理科・社会の勉強法を知りたい方は、次の記事も参考にしてください。
保護者がやってしまいがちな対応
「子どものために」と思ってしていることが、遠回りになる場合があります。心当たりがあれば、見直してみてください。
- 模試の点数だけを見て「暗記が足りない」と決めつけ、問題集を追加で買い与える
- 正解・不正解の確認だけで終わり、間違いの分析をお子さん任せにする
- 理科・社会を「学校選択問題がないから後回し」にして、数学・英語ばかりに時間を使わせる
- 直前期になってから急に詰め込み、消化不良のまま入試当日を迎える
理科・社会は積み上げの教科です。早い段階から「理解」を意識した学習に切り替えることが、結果的に近道になります。
まず、今の立ち位置を確かめる
対策を始める前に、お子さんの現在の学力と、志望校との距離を確かめておくと、理科・社会にどれだけ時間を割くかを判断しやすくなります。志望校選びの参考には、こちらの記事を使ってください。
それでも伸び悩むときは、誰に何を頼むかを考える
資料の読み取りや、考えを筋道立てて説明する力は、独学だけでは身につけにくい面があります。ご家庭で聞き役を続けるのが難しいときは、学校の先生に質問する、個別指導や家庭教師で「間違えた問題の考え方を確認する」部分だけを頼む、といった方法もあります。
外の力を足すかどうかは、お子さんが何でつまずいているかを、先に見きわめてから決めましょう。判断の手順は、こちらの記事に整理しています。
→ 苦手な1教科だけ外部に頼むとき、先に確認したい7つのこと
まとめ:暗記を土台に、理由を説明する練習を足す
- 令和9年度入試から学力検査にマークシート方式が入り、得点換算でマークシート問題が9割程度、記述式が1割程度になる。国語の作文は出題されない
- 県の出題方針では、選択式になっても、知識を活用する思考力・判断力・表現力をみる問題に配慮するとされている
- 理科・社会は学校選択問題の対象ではなく、全員が同じ問題を解く。基礎を固めた受験生どうしの中で差がつきやすい
- 理科は問題文の条件を落とさず読む力、社会は資料を速く正確に読み取る力を鍛える
- 暗記は土台として必要。そこに「なぜそうなるのか」を説明する練習を足す
- 家庭では、間違いの原因を3つに分けて見直し、資料集を併用し、説明するアウトプットを増やす
- 令和9年度入試は、学力検査が2027年2月25日、面接が2月26日(全ての学校)の予定。志望校の選抜内容は、県の公表資料で確認する
解答の見た目が変わっても、考える力が問われることは変わりません。まずは今週、直近の模試の理科・社会から1問選び、「なぜその答えになるのか」をお子さんと一緒に説明してみてください。そこから、勉強のしかたを切り替えるきっかけが見えてきます。
この記事で確認した資料
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜学力検査問題について(埼玉県・2025年7月24日報道発表)(2026年11月5日確認)
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜における学力検査問題の出題の基本方針(埼玉県教育委員会)(2026年11月5日確認)
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜の日程(埼玉県教育委員会)(2026年11月5日確認)
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜に関する情報(埼玉県教育委員会)(2026年11月5日確認)






