元大手塾講師が暴露!埼玉の塾「合格実績」のカラクリと見抜き方

こんにちは、あおばです。

埼玉県内の大手学習塾で10年間、高校受験の現場に立ち続けてきました。この仕事をしていて一番いたたまれなかったのが、実は「授業」でも「教材」でもなく、チラシに載る「合格実績」の作り方でした。今日は、その裏側を現場にいた人間として、忖度なしですべて暴露します。

三者面談で保護者の方が「御三家に〇〇名合格!」というポスターを見て「この塾なら安心」と入塾を決める瞬間を、何度も現場で見てきました。でも正直に言うと、あの数字の作られ方を知ったら、塾選びの基準そのものが変わると思います。

今日は、塾業界の内側にいた人間として、「合格実績」という数字にどんなカラクリが隠れているのか、そして親御さんがどうやって「本当の実力がある校舎」を見抜けばいいのかを、できるだけ具体的にお話しします。

そもそも「合格実績」は誰が作った数字なのか

大前提として知っておいてほしいのは、合格実績の数字は文部科学省や教育委員会が管理・監査している公式データではない、ということです。あの数字は、塾自身が集計し、塾自身が発表している「自己申告」の数字にすぎません。

実は業界にまったくルールがないわけではありません。公益社団法人全国学習塾協会が、合格実績の集計方法について自主基準(在籍期間や受講時間などの条件を満たした生徒のみを実績に含める、といった内容)を定めています。

ただし、これはあくまで協会に加盟している事業者向けの「自主基準」であり、法律のような強制力や罰則があるわけではありません。協会に加盟していない塾はそもそもこの基準の対象外ですし、加盟塾であっても運用のチェックが厳格に行われているとは限らないのが実情です。

つまり「一応のルールはあるが、抜け道は多い」というのが正直なところ。どこまでを「実績」に含めるかは、最終的にはかなりの部分が塾の裁量に委ねられています。この「裁量の幅」の中に、保護者を惹きつけるための様々な工夫(あえて悪く言えば操作)が入り込む余地があるのです。

なぜ塾は実績の数字を大きく見せたがるのか(業界構造の話)

これは責めているというより、構造として理解しておいてほしい話です。

塾業界、特に個人経営ではない大手・中堅チェーンの校舎は、本部から売上目標(入塾者数・継続率)を課されています。校舎長や教室責任者の評価は、この数字にほぼ直結します。そして、新規入塾の一番の決め手になるのが「合格実績」なのです。

つまり、合格実績のチラシは「教育の成果報告書」であると同時に、「集客のための営業資料」でもあります。この二つの役割が同居している以上、集計方法に多少なりとも”見栄え”を意識したバイアスがかかるのは、ある意味で自然な力学だと理解しておいた方が、冷静に数字と向き合えます。

ここからは、実際に現場で目にしてきたカラクリを、「数の水増し」と「質のすり替え」の2つのタイプに分けて解説していきます。

【数のトリック編】合格者数そのものを大きく見せる手口

カラクリ①:「のべ人数」のマジック

これが最も多く使われている手法です。

例えば「浦和高校・大宮高校など難関校に150名合格!」というチラシがあったとします。この150という数字、実は一人の生徒が複数校に合格した分を、それぞれ1件ずつカウントして合算しているケースがほとんどです。

仮に、ある生徒が私立高校を3校併願し、全て合格したとします。この生徒1人の合格実績が、集計上は「合格者3名」として計上されます。埼玉の受験は私立の併願受験(滑り止め校を含む)が一般的なので、実際の合格者の「実人数」は、チラシの数字よりもかなり少ないのが普通です。

チラシを見るときは「合格者〇名」ではなく、「その校舎に在籍していた中3生は実際に何名だったか」「実人数ベースでの合格者数はどのくらいか」を必ずセットで考える癖をつけてください。

カラクリ②:校舎丸ごとの実績を、あたかも1校舎の実績のように見せる

「〇〇校の合格実績」として掲載されている数字が、実はそのチェーン全体(県内数十校舎)の合計だった、というのもよくある話です。

保護者の方が見学に行く「近所の校舎」で、実際に合格を勝ち取った生徒が何人いるのかは、チラシだけでは分かりません。特に、県内トップクラスの合格者数の多くを、ごく一部の「特進コース」や「トップ校舎」だけが稼いでいて、その他大勢の一般校舎はほとんど貢献していない、という構造は珍しくありません。

ここは面談で遠慮なく「この校舎単体での、今年の合格者数と在籍者数を教えてください」と聞くべきポイントです。答えを濁す、あるいはすぐに数字が出てこない塾は、正直あまりおすすめできません。

カラクリ③:講習だけ参加した生徒も「実績」に計上される

夏期講習や冬期講習、正月特訓だけスポットで参加した生徒の合格実績も、通常の在籍生と同じ扱いで合算されることがあります。極端な話、もともと成績が良く、他塾がメインで、夏期講習だけ参加した生徒が難関校に合格しても、その塾の「実績」としてカウントされてしまうことがあるのです。「この塾の指導力で合格した」という因果関係は、実はかなり怪しいグレーゾーンなのです。

同様に、映像授業だけの受講生や、模試だけ受けに来た外部生の合格実績まで合算している校舎も存在します。実績の「対象範囲」がどこまでなのかは、集計する側の裁量にほぼ委ねられています。

【質のトリック編】合格の「中身」をすり替える手口

数を盛るだけでなく、「その合格が本当に難関入試を突破した結果なのか」という質の部分をぼかす手口もあります。こちらの方が、実は見抜くのが難しく、埼玉の受験制度を知らないと騙されやすいポイントです。

カラクリ④:私立の「確約」を稼いで、公立志望者への”看板”にする

これは埼玉特有の事情なので、少し詳しく説明します。

埼玉の私立高校入試の多くは、内申点と北辰テストの偏差値が一定基準を満たしていれば、入試当日よほどのことがない限り合格が約束される「確約(実質的な単願・併願優遇)」という仕組みがあります。つまり、基準さえクリアしていれば、追加の対策をしていなくても合格すること自体はそれほど難しくありません。

しかも、この確約のポイントは「決まる時期の早さ」にあります。北辰テストの成績や内申点をもとに、秋の個別相談・事前相談の段階で、私立側から内々に合格の見込みが伝えられるのが一般的です。つまり、2月に行われる本番の入試を待つまでもなく、実質的な結果は前の年のうちに固まっているケースが多いのです。

ここで、埼玉特有の集客構造を正直にお話しします。多くの塾は、こうして早い段階で積み上げやすい私立高校の確約合格者数を大量に稼ぎ、それを春のチラシの目立つ位置に「〇〇高校合格〇名!」と並べます。本来は秋の時点でほぼ決まっていた結果を、あたかも2月の厳しい本番入試を勝ち抜いたかのような文脈で見せてしまう。すると、実際にその塾が本当に受からせる力を証明すべき公立上位校(浦和・大宮・一女・川越など)を志望する層が、「これだけ実績があるなら」と安心して入塾してしまう、という流れが生まれるのです。

しかし、私立の確約合格の多さと、公立の学校選択問題(数学・英語の2教科で出題される、思考力・応用力を問う難易度の高い問題)を突破させる指導力は、本来まったく別の能力です。「確約による私立の合格実績」を、あたかも「公立難関校にも通用する指導力の証明」であるかのように見せる。これが、埼玉の塾業界における質のすり替えの核心部分だと、現場にいた人間として感じていました。

内申点と北辰偏差値のどのラインで、どの私立高校の確約が取れるのかという基準は、塾によって説明の濃淡が大きく、しっかり調べておかないと損をする分野です。より詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

内申・北辰の確約基準一覧【埼玉県私立高校入試】

カラクリ⑤:「偏差値60から難関校合格」という謳い文句の危うさ

「入塾時偏差値〇〇から、難関校合格!」という逆転合格アピールもよく見かけますが、これも要注意です。

北辰テストは科目・回・母集団によって数字の出方に幅があります。特定の1回だけ低かった偏差値を「入塾時」として切り取り、合格が固まった直前期の高い偏差値と並べて見せれば、実際の伸び幅以上にドラマチックな数字を演出することができてしまいます。また、そもそもどの回の北辰テストの結果を「入塾時」として採用するかという基準自体、塾側が自由に選べてしまう点も見落とされがちです。

正しく校舎の実力を見極めたいなら、チラシの数字ではなく、志望校の合格ラインとなる客観的な北辰偏差値を、まず自分自身で把握しておくことが何より大切です。公立上位校の実際のボーダーラインは、目安として以下の通りです。

  • 偏差値70前後:浦和・大宮(普通科)
  • 偏差値69:浦和第一女子
  • 偏差値68:市立浦和
  • 偏差値67:県立川越(川越女子・川越南・市立川越とは別の学校です)
  • 偏差値66:越谷北(理数)・春日部

学校ごとの実際のボーダーラインを知っていれば、塾の言う「難関校合格」がどのレベルの話なのかを、冷静に判断できるようになります。志望校ごとのより詳細な立ち位置は、以下の一覧でぜひチェックしてみてください。

埼玉県公立高校偏差値ランキング【2026年度北辰テスト】

カラクリ⑥:「難関校」の定義があいまいなまま強調される

「難関校合格者続出!」というキャッチコピーも要注意です。ここでいう「難関校」の定義が明示されていないケースが非常に多いのです。

北辰偏差値でいうと、55〜59あたりの中上位校(例えば伊奈学園総合高校・上尾高校・与野高校クラス)までひとくくりに「難関校」に含めて発表している塾もあれば、偏差値65以上の上位校だけを厳密に「難関校」として扱う塾もあります。この線引きが不透明なまま「難関校〇名合格」とだけ書かれていると、実態よりも印象が誇張されて伝わりやすくなります。面談では「こちらの塾で言う『難関校』とは、具体的に偏差値いくつ以上の学校を指しますか」と確認してみることをおすすめします。

具体例で見る「盛られた実績」のシミュレーション

抽象的な話だけでは分かりにくいと思うので、あくまで仮の数字でシミュレーションしてみます(特定の塾を指すものではなく、業界にありがちな集計パターンの一例です)。

  • ある校舎の中3在籍生:実質20名
  • そのうち私立を3校ずつ併願し、全て合格:20名 × 3校 = のべ60名合格(数の水増し)
  • 加えて、他塾がメインで夏期講習だけ参加した生徒が5名難関校に合格 = +5名(数の水増し)
  • 系列の別校舎(在籍生とは無関係)の合格実績を合算 = +10名(数の水増し)

この時点で、実質的にその校舎が育てた合格者は20名前後にもかかわらず、チラシ上の「合格実績」は75名まで膨らみます。さらにこの75名の内訳の多くが、実力を問わず取りやすい「確約」による私立合格だったとすれば(質のすり替え)、数字だけを見て「この塾なら公立難関校も安心」と判断するのは、かなり危険だということが分かるはずです。

良い塾のサイン・要注意な塾のサイン

信頼できる塾の傾向 要注意な塾の傾向
実績の見せ方 実人数・在籍者数を併記する のべ人数のみを大きく表示
校舎単位の開示 校舎ごとの数字を即答できる 「全体では」とぼかす
確約の扱い 確約合格と一般合格を分けて説明 すべて一緒くたに「合格実績」
偏差値の提示 入塾時期・回を明記した推移を見せる 「偏差値〇〇から」とだけ強調
「難関校」の定義 具体的な偏差値ラインを示す 定義があいまいなまま強調

面談で聞くべき「5つの質問」

塾の合格実績のカラクリを見抜くために、面談で必ず聞いてほしい質問を5つに絞りました。

  1. 「この校舎単体での、今年度の在籍中3生の人数と、実際の合格者の実人数(延べ人数ではなく)を教えてください」
  2. 「難関校合格の生徒のうち、確約を使わず一般入試(学校選択問題を含む)で合格した人数は何人ですか」
  3. 「その生徒が入塾した時点の北辰偏差値と、そこからの伸び幅を、個別の記録で見せてもらえますか」
  4. 「こちらの塾で言う『難関校』とは、具体的に偏差値いくつ以上の学校を指していますか」
  5. 「講習会だけの参加生や、他校舎・映像授業のみの生徒の実績は含まれていますか」

この5つに具体的な数字で即答できる塾は、実績の管理体制が整っており、指導力にもある程度の裏付けがあると考えていいでしょう。逆に、曖昧に流されたり、「全体的にはこのくらいです」とぼかされたりする場合は、少し立ち止まって他の選択肢も検討する価値があります。

まずは、気になっている塾の面談で、この5つの質問をそのままぶつけてみてください。答え方一つで、その塾の透明性がかなり見えてくるはずです。

よくある質問

Q. 合格実績が良い塾は、やはり避けた方がいいのですか?

A. そういうわけではありません。実績を大きく見せる工夫をしている塾でも、指導力そのものはしっかりしているケースは多くあります。大切なのは「数字を鵜呑みにしない」ことであり、実人数や校舎単位の数字を確認したうえで判断すれば、実績は十分に参考材料になります。

Q. 「確約」で合格した生徒は、実績としてカウントされるべきではないのですか?

A. 確約合格も紛れもない「合格」ですので、実績に含めること自体は間違いではありません。問題は、確約合格と一般入試での合格を区別せずに発表し、あたかも難関入試を勝ち抜いたかのように見せてしまう「伝え方」の部分です。

Q. 北辰テストの偏差値は、どこで正確に確認できますか?

A. 北辰テストの結果表で自分の偏差値を確認するとともに、志望校ごとのボーダーライン(合格の目安となる偏差値)を一覧で把握しておくと判断がしやすくなります。

まとめ:数字の「中身」を見る目を持ってほしい

塾の合格実績は、決して「すべて嘘」というわけではありません。ただ、あの数字は塾側の裁量で作られた、いわば「見せ方」の産物であることは、10年間現場にいた人間として断言できます。

大切なお子さんの3年間(あるいは1年間)と、決して安くない塾代を預ける相手を選ぶのですから、チラシの派手な数字に安心するのではなく、「その数字の中身は何なのか」を一歩踏み込んで確認する。それだけで、塾選びの失敗はかなり防げるはずです。

もし面談で5つの質問を投げかけてみて、答えを濁されたり、なんとなくお子さんに合う環境ではないと感じたりした場合は、無理に集団塾にこだわる必要はありません。確約の交渉や北辰対策といった埼玉特有の受験を乗り切るうえでは、集団塾よりも地域の事情に詳しい家庭教師の方が向いているケースも少なくないからです。

そうした個別対応を求める方には、埼玉の受験事情に強い「家庭教師の合格王」のように、地域の入試制度をふまえた指導に力を入れているところもあります。集団塾か個別指導かで迷ったときは、こうした選択肢も比較材料の一つに加えてみるとよいと思います。