確約の基準は下がらない?少子化でも私立が強気な3つの背景

「うちの子の代から、去年より確約の基準が厳しくなっている気がする…」

「少子化で受験生が減っているのに、どうして私立の基準は下がらないの?」

秋の個別相談会のシーズンになると、こうした声は少なくありません。仕事や家事の合間に相談会を回っている保護者の方ほど、示された数字に戸惑われるようです。

結論から言うと、少子化だから私立の確約の基準が下がる、とは限りません。受験生の数が減っても、私立を現実的な選択肢にできる家庭が増えているため、基準を下げる必要が小さくなっている可能性があります。ただし、基準は学校ごと、年度ごとに違い、非公表のことも多いので、この記事の内容はあくまで背景の整理です。

この記事では、確約の仕組みをおさらいしたうえで、公立高校の志願状況、授業料支援の変化、学校選択問題、県の動きの順に整理します。最後に、保護者が三者面談や個別相談会の前に確認しておきたいことをまとめます。

そもそも「確約」とは何か。埼玉ならではの慣行

埼玉県の私立高校入試には、「確約」と呼ばれる慣行があります。夏以降の個別相談会に北辰テストの成績表や通知表(内申点)を持参すると、学校から「この成績なら受験して大丈夫です」といった趣旨の説明を受けられる、というものです。

「確約」は正式な制度名ではありません。学校側も、公の場ではこの言葉を使わないのが一般的です。建前としては、調査書、アピール資料、当日の試験などを総合して判断する、という形になっています。

そのため、基準は学校の公式サイトや募集要項にそのまま書かれているとは限りません。個別相談会で口頭で示される場合もあれば、資料に書かれている場合もあります。基準の数字は、学校が公式に出しているものだけを信じ、出ていないものは個別相談で直接確かめるのが基本です。

また、確約のような仕組みがあるのは、県内の私立高校のなかでも一部です。大学附属校などには、入試一発勝負のところもあります。どの学校がどうかは、志望校ごとに確認してください。

→ 埼玉だけの「確約」とは|他県出身の親が知る私立の仕組み

数字で見る公立高校の志願状況と、私立を選ぶ家庭の増加

まず、公立高校の志願状況を見ておきます。埼玉県が2026年2月20日に発表した令和8年度(2026年度)の公立高校入学志願確定者数は、全日制で35,976人、倍率は1.04倍でした。昨年同期の倍率は1.10倍だったので、0.06ポイント低くなっています。

その後に発表された実施状況では、全日制の一般募集の受検者数は35,872人、入学許可候補者数は32,399人で、競争率は1.11倍でした。志願確定のときの倍率とは計算のしかたが違うため、二つの数字を直接くらべることはできません。

この数字から読み取れるのは、公立高校の志願の倍率が前年より下がったことまでです。その理由が何かは、県の発表だけでは断定できません。ただ、次の項で見る授業料支援の変化と時期が重なっているため、私立高校を選ぶ家庭が増えた影響もあるのではないか、という見方は成り立ちます。これは推測です。

授業料支援の拡充で、私立の負担感が変わった

国の高等学校等就学支援金は、2026年度(令和8年度)から対象の範囲が広がりました。文部科学省の資料では、私立高校(全日制等)の支給上限額は年45万7,200円で、所得の上限はなくなっています。私立の通信制は年33万7,200円です。

これとは別に、埼玉県にも私立高校に通う家庭向けの支援があります。金額や対象となる世帯の条件は年度ごとに変わるため、ここでは数字を書きません。現在の内容は、埼玉県の私学関係の窓口と、志望校の入学案内で確認してください。

授業料の面で、公立と私立の差が小さくなれば、「学費がネックで私立は考えていなかった」という家庭でも、私立を選択肢に入れやすくなります。学校側から見れば、自校を現実的に検討してくれる家庭が増える、ということです。

なぜ私立の基準は下がりにくいのか:考えられる3つの背景

ここからは、基準が下がりにくい理由として考えられることを整理します。いずれも考えられる見方で、学校が公式に説明しているわけではありません。学校ごとに事情は違うので、「そういう面もある」くらいの感覚で読んでください。

背景① 検討してくれる家庭が増え、基準を下げる必要が小さい

受験生の総数が減っても、私立を第一の選択肢として考える家庭が増えれば、学校にとって「生徒を集めるために基準を下げる」理由は小さくなります。とくに人気のある学校では、その傾向が出やすいと考えられます。

反対に、志願者の確保に苦労している学校では、基準を据え置いたり、内申点との組み合わせで柔軟に対応したりすることもあります。同じ私立でも、学校ごとの事情の差は大きいと考えておいてください。

背景② 学校どうしの競争が「学費」から「中身」に移っている

授業料の差が小さくなると、家庭が学校を選ぶ基準は、大学の合格実績、コースの内容、通いやすさ、校風などに移りやすくなります。学校側も、そうした「中身」で選ばれることを意識せざるを得ません。

その結果、確約の基準を広げて志願者を増やすより、入学後の学力のそろい方を重視して基準を保つ学校も出てくるでしょう。逆に、基準を見直して間口を広げる学校もあります。どちらの方向に動くかは、学校の方針しだいです。

なお、「去年は偏差値〇〇で出た」という話を聞いても、そのまま今年に当てはまるとは限りません。去年の数字は、あくまで参考程度にとどめてください。

→ 内申・北辰の確約基準一覧【2027年入試】埼玉私立の学校別

背景③ 公立上位校の学校選択問題が、併願の需要を支えている

埼玉県の公立高校入試には、英語と数学で通常より難しい問題を使う「学校選択問題」があります。公立の上位校を中心に、一部の学校が実施しています。実施校の一覧は年度によって変わる可能性があるので、志望校が対象かどうかは、県教育委員会の発表で確認してください。

学校選択問題を使う学校を第一志望にする場合、当日の得点で勝負する面が大きくなります。そのため、併願先の私立を事前に確保しておきたいという家庭は、今後も一定数いると考えられます。私立側の基準が簡単には下がらない理由の一つになりうる、と考えられます。

公立の対策と私立の基準クリアを同時に進めるのは、本人にもご家庭にも負担がかかります。どこまでを自宅で進め、どこから外の手を借りるかを、早めに切り分けておくと後が楽になります。

あと数ポイントの差が、そのまま確約の可否につながる局面では、苦手な科目だけ別の手段で補うことも考えられます。基準が学校ごとに違い、年度で変わる以上、準備として北辰テストの得点と内申点を上げる以外に確実な方法はないからです。

県の動きと、確約の今後

業者テスト(北辰テストなど)の結果を入学者の選抜に使うことについては、文部省(現在の文部科学省)が出した「高等学校の入学者選抜について」の通知で、業者テストの偏差値を用いない選抜への改善が求められてきました。学校側が確約という言葉を公の場で使わない背景の一つと言われています。

確約の運用が今後どう変わるかについては、推測で書かず、県の発表と志望校の説明で確認するのが確実です。

確かなのは、基準や運用が年度によって変わりうる、ということです。「去年はこうだった」「先輩はこうだった」という話は、今年の判断材料としては弱いと考えてください。

個別相談会で、次のようなことを直接聞いておくと、基準の見通しが立てやすくなります。

個別相談会で確認したいことのチェックリスト

  • 今年度の基準は、北辰テストの偏差値と内申点のどちらが対象か、両方か
  • 単願と併願で基準が違うか
  • 基準は文書になっているか、口頭の説明だけか
  • 英検などの資格が加点や基準に使えるか
  • 国や県の支援と、学校独自の奨学金や特待の条件が、それぞれいくらか

→ 単願確約は何校まで?併願確約との違いと選び方

保護者が今、意識しておきたい5つのポイント

以上を踏まえて、保護者が三者面談や個別相談会の前に意識しておきたいことを五つにまとめます。

  1. 偏差値だけでなく内申点との組み合わせを確認する:学校によっては、偏差値と内申点の両方に条件が付きます。北辰の偏差値が足りていても、内申点が基準に届かなければ、その場で確約が出ないこともあります。
  2. 単願か併願かで基準が変わる前提で情報を集める:単願のほうが基準が下がりやすい学校もあります。併願のつもりで相談すると、想定より高い基準を示されることがあります。
  3. 去年の情報だけで安心しない:基準は年度ごとに見直されることがあります。今年の数字は、今年の個別相談会や募集要項で確かめてください。
  4. 学費の支援は、学校ごとに金額で確認する:国の就学支援金、県の支援、学校独自の制度がそれぞれいくらで、重ねて使えるのかを、具体的な金額で聞いておきましょう。
  5. 英検などの資格は早めに調べる:資格を基準に使える学校もあります。中3の夏を待たず、中2のうちから取得計画を立てると選択肢が広がります。

北辰テストの偏差値が志望した私立の目安に届いていても、通知表の評定が基準にあと少し足りなければ、個別相談会の場で確約が出ないことがあります。偏差値と内申点の両方に条件があるかどうかを、学校のページや募集要項で先に確かめておけば、2学期の提出物やテスト対策の優先順位を早めに変えられます。

→ 北辰偏差値が1足りないとき|個別相談前に確かめること

よくある質問

Q. 確約は法律や県の制度として正式に認められているのですか?

A. 「確約」は公式な制度名ではなく、学校の説明も「受験して大丈夫です」といった表現になることが一般的です。制度として決まっているわけではないため、基準は学校ごとに違います。詳しくは志望校に直接確認してください。

Q. 確約をもらったのに不合格になることはありますか?

A. 基本的には想定されていませんが、確約は法的な合格の保証ではありません。当日の試験や、提出する書類の内容によっては、結果が変わる可能性があります。どんな場合に不合格になりうるかは、学校ごとに確認しておくと安心です。

→ 確約があっても不合格になる?私立高校で起きる5つのケース

Q. 公立と私立、両方で確約を取ることはできますか?

A. 公立高校には、確約のような仕組みはありません。確約は私立高校の個別相談会などを通じて受けるものです。公立を第一志望にする生徒が、併願の私立を確保するために使う、というのが一般的な使い方です。

Q. 学校選択問題の対策と、確約の基準クリアは両立できますか?

A. 両立を考える家庭は多くあります。北辰テストの偏差値を上げる勉強は、どちらにも役立ちます。ただし、時間には限りがあるので、苦手科目の洗い出しと優先順位づけが大切です。

入試までの期間は限られています。基準の確認と、足りない科目の見極めは、早く始めるほど余裕が生まれます。比べる材料だけでも、いまのうちにそろえておくと安心です。

まとめ:基準の数字を確かめて、準備の優先順位を決めよう

この記事で整理したことを振り返ります。

  • 令和8年度の公立高校の志願確定倍率は、全日制で1.04倍(昨年同期1.10倍)。数字の理由は断定できないが、私立を選ぶ家庭が増えた影響もありうる
  • 2026年度から、私立高校(全日制等)の就学支援金は上限年45万7,200円、所得の上限なし。私立を検討しやすくなった
  • 人気の学校ほど基準を下げる必要が小さい、と考えられるが、学校ごとに事情は違う
  • 確約の基準は非公表のことも多く、年度で変わりうる。去年の情報だけで安心しない
  • 県の動きや今後の運用は、推測せず、県の発表と志望校の説明で確かめる

「うちの子は基準に届くのか」を判断するには、感覚ではなく、北辰テストの偏差値と内申点の数字を整理することが出発点です。そのうえで、志望校の個別相談会で基準を確認し、足りない部分があれば、どの科目をどこまで上げるかを決めます。

不安から高額な講座を次々と足してしまう前に、「どの科目の、どこが足りないのか」をはっきりさせてください。弱点がわかれば、今の塾の講座で足りるのか、苦手な1〜2科目だけ別の手段で補うのかを、落ち着いて選べます。

後者の場合、家庭教師や個別指導も選択肢になります。料金や指導内容は会社によって大きく違うため、料金・指導の形・担当の決まり方といった同じ項目で見比べてから選んでください。個別相談会や三者面談が続く時期は、比べる時間を取りにくいので、足りない科目をメモにしておくと、話を聞くときに迷いません。