塾なしのまま中2の秋。クラスの半分以上は塾に通っているようで、そろそろ焦る気持ちも出てくる時期です。それでも「中3になってから考えればいいのでは」と、先延ばしにしている家庭は少なくないはずです。
「中3から始めて、塾に通っていた子に追いつけますか?」
「いま何かやっておかないと手遅れになりますか?」
この疑問に答えるカギは、塾に通っているかどうかではなく、「中1・中2の内容がどこまで身についているか」と「中3の1年で点が動く部分がどれだけ残っているか」にあります。埼玉の公立高校入試では、中3の評定が占める割合を学校が選べる仕組みになっており、中3から始めても動かせる部分は確かにあります。一方で、すでに決まっている部分もあります。
ここでは、県教育委員会の資料で確かめられる内申の仕組みを土台に、塾なしで中3を迎える家庭が間に合うかどうかを判断する目安を整理します。独学で足りる家庭と、外部の力を借りたほうがよい家庭の分かれ目も、中立の立場で書きます。
「間に合う」かどうかは、入試の仕組みから逆算して決まる
まず、何に対して「間に合う」のかをはっきりさせます。埼玉県公立高校の入試は、学力検査(当日の点数)、調査書(内申)、面接の3つで合否が決まります。県教育委員会が2024年9月26日付で公表した「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施基本方針」によると、共通選抜の基本は次のとおりです。
共通選抜の基本(令和9年度)
- 学力検査:国語・社会・数学・理科・英語の5教科。各100点、合計500点満点
- 調査書:9教科の5段階評定を学年ごとに合計(45点満点)し、学年の比率をかけて足す
- 面接:全ての受検生に実施。基本点は30点満点で、学校が1倍か2倍かを選ぶ
この中で、いま中2の子にとって特に大切なのが調査書の部分です。次の節で詳しく見ていきます。
いまの中2に当てはまる入試は、まだ公表されていない
注意しておきたいのは、ここに書いた数字は「現在の中3が受ける2027年(令和9年度)入試」のものだということです。いまの中2が受ける入試は、翌年度の令和10年度入試にあたります。令和10年度の実施方針は、2026年11月8日の時点で県から公表されていません。制度が令和9年度と同じとは限らないので、県教育委員会の「入試・転編入学」のページで、公表される時期に必ず確認してください。
ただし、令和9年度の仕組みは、「中1・中2・中3の成績がどう合算されるか」を知る手がかりとして使えます。以下は、その前提で読んでください。
→ 埼玉の公立入試で中1・中2の通知表はどう使われる?学年の比率を解説
中3の評定が占める割合は、学校によって3通りある
調査書の得点は、中1・中2・中3の評定合計(それぞれ45点満点)に、学年の比率をかけて計算します。基本方針では、共通選抜の比率(1年:2年:3年)は、各高校が次の3つから選ぶと定められています。
学年の比率(1年:2年:3年)の3つの選択肢
- 1:1:1:満点は135点。3学年が同じ重さ
- 1:1:2:満点は180点。中3が全体の半分
- 1:1:3:満点は225点。中3が全体の5分の3
つまり、中3の評定が占める割合は、学校によって約3分の1から5分の3まで幅があります。選んだ比率に応じて、調査書の基本点は200点・300点・400点のいずれかに換算されます。どれを使うかは、学校ごとに県が公表する「選抜実施内容」で決まります。令和9年度の分は令和7年12月に公表される予定と基本方針に書かれており、令和10年度の分も同じ形で出るかどうかは、今後の公表を待つことになります。
この比率が「間に合うか」の判断にどう効くか
中3から本気で動き出す家庭にとって、この仕組みは次のように読めます。
- 中3の比率が高い学校を志望するなら、中3の1年間の評定を上げる余地が大きい。中3から始めても、巻き返せる部分が広い
- 1:1:1の学校を志望するなら、中1・中2で取った評定が3分の2を占める。すでに決まった部分が大きいので、中3だけで大きく変えるのは難しい
- どちらの場合でも、学力検査の500点は、中3の入試当日までの勉強量で動かせる
ここから言えるのは、「塾なしで中3から始めた」ことそのものが不利になるわけではないということです。不利になるのは、中1・中2の評定が低いまま固定されていて、しかも志望校の中3の比率が低い場合です。逆に、中1・中2の評定が悪くなくて、学力検査で取れる力を中3で積み上げられるなら、塾に通っていなくても条件は整います。
なお、特色選抜を実施する学校では、比率の選び方がもう少し自由になります。基本方針では、各学年の比率の数値は1以上の整数で、合計が10を超えない範囲と定められています。志望校が特色選抜を行うかどうかは、志望校ごとの「選抜実施内容」で確かめます。
いまの中2が自分でできる、間に合うかどうかの自己診断
入試の仕組みが分かったところで、次は子どもの現在地を確かめます。塾に行かない家庭でも、家で次の3つは確かめられます。
診断1:中1の内容の穴を探す
中2の内容がつまずいている原因は、中1の内容が抜けていることがよくあります。特に差が出やすいのは数学と英語です。
中1の穴を探すチェックリスト
- 数学:正負の数の計算、文字式、方程式の文章題を、ワークの基本問題で解き直したとき、8割以上取れるか
- 英語:be動詞と一般動詞の使い分け、過去形、疑問文・否定文の作り方を、教科書の例文を見ずに書けるか
- 理科・社会:中1の単元の用語を、教科書の太字だけでも説明できるか
- 国語:漢字と文法の基本事項で、学校のワークの間違いが毎回同じ種類に集まっていないか
8割はこの記事が目安として置いた線で、公式の基準ではありません。ここで8割を取れない分野が見つかったら、それが「中3までに戻る場所」です。教科別の戻り方は、次の記事にまとめています。
→ 中2の数学で一次関数・証明につまずいたら|中3までに戻る順番
→ 中1の英語でつまずいた子へ|中2の内容が進む前に戻る場所
診断2:学校の提出物と授業態度の状況を見る
評定は、テストの点だけで決まるわけではありません。ワークやノートなどの提出物、授業への取り組み方も評価に入ります。ここは、塾に通っていなくても、家庭の声かけで直せる部分です。
- 提出物の期限を守れているか。ワークが期限前日の夜にまとめて仕上がる形になっていないか
- 通知表の教科ごとの評定を見て、同じ教科の中でテストの点と評定が離れていないか
- 先生から配られたプリントや連絡を、子どもが自分で管理できているか
テストの点が悪くないのに評定が伸びない教科は、提出物や授業態度に原因があることが多く、勉強量を増やすより、提出の習慣を整えるほうが効果が出ます。
→ 中1・中2の提出物と授業態度|内申点の観点別評価で差がつくところ
診断3:1人で勉強を進められる型があるか
塾なしで受験を乗り切れるかどうかを分けるのは、勉強の内容より「1人で進める型」の有無です。
- テスト前に、自分で範囲を確認して計画を立てているか。親が毎回言わないと動かない状態ではないか
- 分からない問題に当たったとき、解説を読んで解き直すところまで自分でやっているか
- 間違えた問題を、同じ形でもう一度解く習慣があるか
この3つが自力でできている子は、塾なしでも進めやすい子です。反対に、どれも親が声をかけないと動かない場合は、家庭だけで中3の1年を回すと、親の負担が大きくなります。そこで次の節の判断が出てきます。
独学でいける家庭と、外部の力を借りたほうがよい家庭
ここまでの診断をもとに、家庭の状況を2つに分けて考えてみます。どちらが良い悪いではなく、今の子どもと家庭の条件に合うほうを選ぶための整理です。
家庭中心で進めやすい条件
- 中1・中2の内容に、大きな穴がない(診断1で8割以上取れる分野が多い)
- 提出物を期限内に出せていて、評定がテストの点とそれほど離れていない
- 子どもが自分で計画を立て、解き直しまでできる
- 志望校が、学力検査の点数よりも調査書の比率が高い、あるいは内申で届く範囲にある
この条件に近ければ、市販のワークと学校の教材、過去問を使った家庭学習でも、中3の1年間は組み立てられます。親の役割は、教えることではなく、予定を確認する、提出物の期限を一緒に見る、といった管理側に回ることです。
外部の力を借りることを考えたほうがよい条件
- 中1の内容にも穴が複数あり、自力で戻る順番が決められない
- 親が教えようとすると親子で衝突し、勉強の時間が険悪になる
- 解き直しまで進められず、同じ種類の間違いが続く
- 志望校の入試まで、戻って積み上げる時間が足りるか不安がある
この場合は、「塾に入る」「家庭教師に頼む」といった形に限らず、学校の先生への質問、学習支援の制度、個別指導など、いくつかの選択肢があります。大事なのは、何を外に任せるかを決めることです。教える部分だけを任せるのか、勉強の計画や進捗の管理まで任せるのか、によって、向く形が変わります。
塾・個別指導・家庭教師を比べるときの視点
形式ごとの違いは、費用や特徴が会社によって大きく違うため、ここでは具体的な金額や会社名は書きません。比べるときの視点だけを挙げます。
- 授業の形:集団で進むか、1対1か。子どもが質問しやすい形はどちらか
- 戻って学び直せるか:中1の内容に戻る必要があるとき、カリキュラムを子どもに合わせて組み替えてもらえるか
- 家庭での学習管理:宿題や進捗を誰が見るか。親が見る前提なのか
- 通う・来てもらう手間:送迎や時間が、家庭の負担にならないか
- 費用の総額:月謝のほか、教材費、講習費、入会費などを含めた年間の見込み
どの形でも、体験や面談で「中1の内容に戻る必要があること」を最初に伝え、どう対応してもらえるかを聞くと、実態が見えてきます。形式の違いを詳しく比べたいときは、次の記事が参考になります。
→ 家庭教師と個別指導塾の違い|埼玉の中3の親が比べる7項目
中2の3学期に決めておく、3つのこと
今の時点で動くか、中3になってから動くかを決める前に、中2の3学期にやっておきたいことを3つに絞ります。どれも費用がかからず、家庭だけでできます。
1つ目:中2の3学期の評定を、今の最優先にする
3学期の成績は、中2の評定の一部として、調査書に記録されます。学年末テストと提出物は、中3の比率が低い学校ほど、入試の結果に響きます。3学期の過ごし方は、学年末テストで内申点を上げる記事に詳しくまとめています。
→ 学年末テストで内申点を上げる|中1・中2が2月までにやること
2つ目:北辰テストを受けるかどうかを、親子で決める
中2のうちに北辰テストを受ければ、5教科の現在地を数字で知ることができます。ただし、受けなくてよい家庭もあります。受ける場合は申込期限があるので、早めに決めておくのが安全です。
→ 中2で北辰テストは受けるべき?中3から受ける家庭との違い
3つ目:中3の4月にどうするかの「基準」を決めておく
「春休みまでに中1・中2の内容の穴を、自分で8割まで埋められなければ、外部の力を借りることを検討する」のように、あらかじめ家庭内でラインを決めておくと、中3の春に慌てずに済みます。基準は、診断1の「8割」のように、確かめられる形にしておきます。
基準を決めていないと、4月になってから、周りの様子や広告に流されて塾を選ぶことになりがちです。そうならないよう、いま決めておく価値があります。
中3から始める1年間の大まかな流れを知っておく
間に合うかを考えるとき、中3の1年間の道筋が見えていると判断しやすくなります。実際の日付は年度ごとに変わるため、ここでは今の中3(2027年入試)の日程を、一例として示します。
2027年入試の公立高校の日程(県教育委員会が2025年5月22日に発表)
- 学力検査:2027年2月25日(木)
- 面接:2027年2月26日(金)
- 追検査:2027年3月2日(火)
- 入学許可候補者の発表:2027年3月5日(金)
いまの中2が受ける入試の日程は、2027年の日程と同じとは限りません。県が令和10年度の日程を発表したら、公式ページで確認してください。
日程の枠組みが同じだと仮定すると、中3の1年間は、おおまかに次の流れになります。
- 中3の1学期:評定の土台を作る時期。定期テストと提出物に集中する
- 夏休み:中1・中2の穴埋めと、5教科の総復習ができる最後のまとまった時間
- 2学期:評定が固まりに向かう時期。北辰テストの結果を見て、志望校を絞る
- 冬:過去問演習と、私立の個別相談や出願の準備
- 2月下旬:公立の学力検査と面接
この流れの中で、塾なしの家庭がもっとも注意したいのは、夏休みに穴埋めの時間を確保できるかです。夏休みに中1・中2の内容の復習を終えられれば、2学期以降は中3の内容と入試対策に集中できます。反対に、夏休みで穴埋めが終わらないと、2学期に新しい内容と並行して復習することになり、負担が一気に大きくなります。
私立の併願を考える家庭は、1月の私立入試に向けた動きも必要になります。中3の秋から外部の力を借りる場合の考え方は、次の記事で入試日程と合わせて整理しています。
→ 中3の秋から家庭教師は遅い?埼玉の入試日程で考える始め方
まとめ:塾なしで中3を迎えるかどうかの判断材料
- 入試は学力検査500点、調査書、面接で決まる。中3の評定が占める割合は、令和9年度の基本方針では学校が1:1:1、1:1:2、1:1:3から選ぶ
- いまの中2が受ける令和10年度入試の方針は、県教育委員会の公表を待って確認する
- 塾に行っていないこと自体は、不利の理由にならない。差が出るのは、中1・中2の内容の穴と、固定された評定、1人で進める型の有無
- 家庭でできる自己診断は3つ。中1の内容を8割で解けるか、提出物と評定がかみ合っているか、解き直しまで自分でできるか
- 外部の力を借りるかどうかは、「何を任せたいか」で形式を選ぶ。金額や会社名ではなく、比べる視点で決める
- 中2の3学期は、評定と学年末テスト、北辰テストを受けるかどうか、中3の春の基準づくりに使う
まず今週のうちに、子どもと一緒に中1の数学と英語のワークを開き、基本問題を解いてみてください。結果が8割に届くかどうかが、中3から始めて間に合うかどうかを考える、最初の材料になります。
この記事で確認した資料
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施基本方針(埼玉県教育委員会・2024年9月26日、2026年11月8日確認)
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜の日程について(埼玉県・2025年5月22日発表、2026年11月8日確認)






