「うちの子、単願にしたほうがいいのか、併願確約で公立にチャレンジしたほうがいいのか……」
「単願確約って、何校か取っておいて、あとから選べるものなの?」
中3の秋、三者面談や個別相談会が続く時期になると、こうした迷いを抱えるご家庭がとても多くなります。仕事や家事の合間に説明会を回りながら、この選択まで迫られるのですから、負担が大きいのは当然です。
単願確約として正式に出願できるのは1校だけで、複数校から取ってあとで選ぶものではありません。一方、併願確約は複数の学校で相談し、複数校を受験することもできます。どちらが得かは、お子さんの北辰偏差値の伸び方、内申点、公立へのこだわりの強さで決まります。
この記事では、単願と併願確約の仕組みの違い、北辰テストの日程と確約の相談時期の関係、タイプ別の考え方、お金の面で確認しておきたいこと、最後に「あと一歩」をどう埋めるかを順に整理します。読み終えるころには、お子さんの場合にどちらを軸に考えるかを、ご自身の言葉で説明できるようになるはずです。
単願・単願確約・併願確約、まず用語を整理する
保護者の方が混乱しやすいのが、この3つの言葉です。まずは意味を分けて押さえておきましょう。
単願(単願推薦)
単願は、私立高校に対して「合格したら必ずその学校に入学します」と約束する形の受験方法です。公立高校は受けない、あるいは公立の結果にかかわらずその私立に進学することが前提になります。
この性質上、単願として正式に出願できるのは1校です。複数の私立に、同じ単願の形で同時に出願することはできません。
単願確約
現場では「単願確約」という言い方もよく使われます。北辰テストの偏差値や内申点が学校の定める基準を満たし、個別相談で「この条件なら合格の見込みが高い」と伝えられた単願を指すことが多い呼び方です。
単に「単願で出願する」ことと、「基準を満たして見込みを確認したうえで単願にする」ことは、少し意味合いが違います。塾や中学校から「単願確約は取れそうですか」と聞かれたら、後者の話をしていると考えると会話がスムーズです。
比較のために複数校の個別相談を受け、それぞれで見込みを聞いておくこと自体は珍しくありません。ただし、実際に単願で出願できるのは1校です。本命を絞る時期が来たら、中学校の進路担当の先生に早めに状況を伝えておくと安心です。
併願確約
併願確約は、私立高校を「公立が不合格だった場合の進学先」として押さえつつ、公立高校にもチャレンジできる仕組みです。私立の併願入試を受ける前に、個別相談で合格の見込みを確認しておきます。
単願と違い、併願は複数の私立を受験することもできます。公立の結果が出るまで進学先を決めなくてよいことが大きな違いです。
「確約」は公式な制度ではない
「確約」という言葉そのものは、入試要項に載っている公式の制度名ではありません。私立高校の個別相談で、保護者や生徒が学校の担当者と面談し、内申点や北辰テストの結果が学校の基準を満たしていれば合格の見込みが高い、と伝えられる慣習のことです。
確約の基準を公表している学校は多くありません。そのため、基準や手続きは、個別相談会や説明会で学校に直接確認するのが確実です。年度によって変わることもあるので、前の年の情報をそのまま当てはめないようにしてください。
なお、早大本庄や慶應志木のように、確約のような事前相談の仕組みを前提にせず、学力試験の結果で合否を決める学校もあります。志望校がどちらのタイプかも、早めに確かめておきましょう。
北辰テストの日程と、確約の相談が進む時期
単願か併願かを考えるうえで、北辰テストの日程と確約の相談がどう重なるかを知っておくと、動き出す時期が見えてきます。
2027年入試の受検生(2026年度の中3)の北辰テスト日程
北辰図書の案内によると、2026年度の中3の北辰テストは年8回です。
- 第1回:4月26日(日)
- 第2回:6月21日(日)
- 第3回:7月19日(日)
- 第4回:9月6日(日)
- 第5回:10月11日(日)
- 第6回:11月8日(日)
- 第7回:12月6日(日)
- 第8回:2027年1月31日(日)
第7回と第8回は、埼玉県公立高校入試の学校選択問題(数学・英語)に対応した内容を予定している、とされています。上位校を目指す場合は、後半の回の得点力が大事になります。
確約の相談は、秋から本格化する
私立高校の個別相談会は、学校によって時期が異なりますが、秋から冬にかけて本格化するのが一般的です。相談では、内申点と北辰テストの結果を持参し、見込みを聞く流れになります。
基準にまだ届いていない場合は、「次の北辰でこの偏差値が取れたら、あらためて相談に来てください」と言われることもあります。つまり、秋の北辰テストでどこまで取れているかが、単願・併願のどちらを選ぶ場合にも、実質的な判断材料になるということです。
第8回は1月末の実施で、私立の入試日程が始まったあとになります。確約の相談で使える北辰の結果は、おおむね12月の第7回までと考えて、逆算して動くのが安全です。具体的にどの回の成績を見るかは、学校ごとに違うので、個別相談で必ず確認してください。
内申点は「早い時期の通知表」が見られることがある
内申点についても補足します。併願推薦などでは、中3の1学期など、早い時期の通知表を基準に使う学校があります。「3学期に上げれば間に合う」と考えていると、基準の見られ方と合わない可能性があります。
どの学期の成績をいつ見るのかは、学校や方式によって違います。志望校の募集要項か個別相談で、早めに確かめておきましょう。内申点の考え方は次の記事も参考になります。
→ 通知表に「2」がある中3へ|2学期でできることと確約への影響
北辰偏差値の差で考える、単願と併願チャレンジの距離感
感覚ではなく数字で判断するために、志望校の目安と、お子さんの直近の北辰偏差値を並べる考え方を整理します。学校の偏差値は、模試会社や塾によって数字が異なります。気になる学校の数字は、一つの資料だけでなく、学校の個別相談で聞いた話と合わせて見てください。
差の大きさで、考え方の目安を持つ
あくまで一般的な考え方の目安ですが、次のように整理できます。
- 志望校との差がほとんどない、または上回っている:併願確約で私立を確保しつつ、公立にチャレンジする選択肢が有力になります
- 3〜5ポイント程度の差:残りの北辰テストでの伸びしろしだいです。11月・12月の結果を見て、判断を待つ余地があります
- 5ポイント以上の差が縮まらない:公立勝負にこだわり続けるより、見込みの立つ私立を軸にした単願も、現実的な選択肢になります
内申点の状況や、得意・苦手な科目によって変わるので、これだけで決める必要はありません。「差を数字で把握する」ことが目的です。
偏差値の推移を見る
一度きりの偏差値ではなく、直近3回ほどの推移を見てください。右肩上がりなのか、横ばいなのか、回によってムラが大きいのかで、判断が変わります。第5回(10月)、第6回(11月)、第7回(12月)の結果を並べると、冬の見通しが立てやすくなります。
塾の「単願をおすすめします」への向き合い方
三者面談で、塾から「安全に単願で固めましょう」と提案されることがあります。それが最適な場合も多くあります。大切なのは、なぜその提案になるのかを、北辰偏差値の推移や内申点の状況にそって説明してもらうことです。
説明を聞いたうえで、「志望校と今の偏差値の差はどれくらいか」「残りの回でどこまで伸ばせば併願にできるか」を質問してみてください。進路やお金にかかわる判断は、1か所の説明だけで決めず、材料を並べてから決めると納得しやすくなります。
単願・併願確約、それぞれ向いているタイプ
単願が向いているタイプ
- 内申点は安定しているが、北辰偏差値にムラがあり、本番一発勝負のリスクを避けたい
- 公立上位校への強いこだわりがなく、その私立の学習環境やカリキュラムに魅力を感じている
- 進路を早めに決めて、入学後の準備や部活動に中3後半の時間を使いたい
単願の良さは、公立入試本番のプレッシャーから離れて、後半戦を落ち着いて過ごせることです。学校によっては、単願のほうが併願より基準が低く設定されていることもあります。ただし、学校ごとに異なるので、個別相談で確認してください。
一方で、公立を受ける道を手放すことになるため、「公立でも十分狙えたのでは」という思いが残る可能性があります。基準が緩やかかどうかだけでなく、公立にチャレンジする選択肢を手放すことも含めて、親子で納得しているかを確かめてください。
併願確約が向いているタイプ
- 部活を引退した夏以降、北辰偏差値が右肩上がりで伸びている
- 志望する公立高校への思いが強く、最後までチャレンジしたい
- 内申点に大きな不安がなく、私立の基準を無理なく満たせる見込みがある
併願確約の良さは、私立の進学先を確保した状態で、公立入試に全力で向かえることです。偏差値が伸び続けているなら、直前まで上位校を目指す選択肢を残せます。
ただし、内申点と北辰偏差値の両方で基準を満たす必要があり、公立入試の準備と並行して進めるため、やることは増えます。確約の基準は年度で変わることもあるので、前年の情報だけで判断しないでください。併願は結果を保証するものではなく、公立への挑戦の幅を持たせるための選択だと考えてみてください。
見分けるための2つの軸
お子さんがどちらに近いかは、直近3回ほどの北辰偏差値の推移と、内申点の安定度を並べて見ると、意外とはっきりします。「なんとなく不安だから単願」「なんとなく可能性を残したいから併願」ではなく、この2つの軸で一度整理してみてください。
併願校の選び方そのものに迷う場合は、次の記事も参考にしてください。
単願か併願かを決める前に確認したいこと
お金の面で確認しておきたいこと
単願か併願かの選択は、家計にも関わります。見落としやすい点を3つ整理します。
授業料の支援(就学支援金)
文部科学省のリーフレットによると、2026年度(令和8年度)から高等学校等就学支援金の所得制限がなくなり、私立高校(全日制等)の支給上限は年額45万7,200円になりました。公立高校(全日制等)は11万8,800円、私立の通信制は33万7,200円です。
- 申請が必要:入学後に、学校の案内にしたがって申請します
- 授業料が対象:入学金や施設費、制服代などは、この支援の対象ではありません。学校ごとに別途かかります
- 差額は自己負担:授業料が上限を超える学校では、超えた分は家庭の負担になります
この制度の変更で、私立を第一希望にする場合の授業料の負担は、以前より見通しを立てやすくなっています。私立の授業料以外の費用がいくらかかるかは、学校ごとに違うので、募集要項や説明会で確認してください。
入学金と延納の扱い
併願で公立を受ける場合に、実際に手元からいくら出ていくかを左右するのが、入学金など入学手続きの納入金の扱いです。多くの私立は、公立の合格発表まで納入を待つ「延納」の仕組みを用意していますが、条件は学校ごとに違います。
- 延納の手続きが不要な学校:公立の結果が出るまで、特に何も納めなくてよい場合があります
- 延納のために一部を先に納める学校:公立の合格発表前に、入学金の一部などを納める必要があります
- 延納の制度がない学校:併願でも、手続き期限までに納入が必要です
こうした条件は、募集要項に書かれていることが多いので、確約の相談と同じ時期に見比べておくと安心です。「確約が取れたら終わり」ではなく、納入の時期と金額まで含めて比べるのが、後悔の少ない選び方です。
各校の延納や手続きの期限は、次の記事にまとまっています。
特待生・奨学生制度
学校によっては、内申点や入試の成績が一定の水準を超えると、授業料などが減免される特待の制度があります。特待の基準は、確約の基準とは別に設けられていることが多く、公表の仕方も学校によって異なります。
同じ私立でも、特待の枠に入れるかどうかで、3年間の負担が変わる可能性があります。個別相談では、確約の見込みだけでなく、特待の条件が公表されているか、どの成績が見られるのかも合わせて聞いてみてください。
直前期の追加講座を足す前に
公立にチャレンジする場合、塾から直前期の学校選択問題対策などの追加講座を勧められることがあります。必要な対策であることも多いので、一概に断る必要はありません。
ただ、足す前に「足りないのはどの科目のどの単元か」「その講座で何が補えるのか」を確認すると、出費の中身が整理できます。講座の選び方については次の記事も参考にしてください。
基準まで「あと一歩」のときの考え方
志望校の目安と直近の偏差値の差が小さいなら、大きな追加講座を足すより、苦手な分野をピンポイントで補うほうが、費用に対する効果は大きくなりやすいです。差が大きい場合は、単願で進路を確保するのも、決して「逃げ」ではありません。
「確約の基準まで、北辰偏差値があと1〜2、内申点があと1」というような状況では、集団授業のカリキュラムだけでは、その子に合わせた配分がしにくいことがあります。たとえば、内申点対策の比重を上げて、北辰対策は最小限に絞る、といった調整です。
そのようなときは、苦手な1〜2科目だけを、個別指導や家庭教師などでスポット的に補う方法も選択肢になります。集団塾、個別指導、家庭教師は、それぞれ向き不向きがあります。違いは次の記事で比較しています。
→ 家庭教師と個別指導塾の違い|埼玉の中3の親が比べる7項目
どの方法を選ぶ場合も、1か所の説明だけで決めないことが大切です。料金体系、指導の内容、短い期間や少ないコマ数に対応しているかは、会社や塾によって大きく違います。次の点を見比べると、判断しやすくなります。
- 北辰テストや確約の仕組みを踏まえた指導の経験があるか
- 苦手な1〜2科目だけ、必要なコマ数だけ頼めるか
- 中3の途中から、短期間でも受けられるか
- 月謝のほかに、入会金・教材費・交通費がいくらかかるか
- 高額な教材のセット購入が条件になっていないか
よくある質問
Q. 「単願」と「単願確約」は同じ意味ですか?
A. 同じ文脈で使われることが多いですが、「単願確約」は、基準を満たして合格の見込みを確認した単願を指すことが多い言葉です。「単願で出願する」ことと、「基準を満たして見込みを確認できているか」は分けて考えると、塾や中学校とのやり取りが整理しやすくなります。
Q. 確約をもらえば、合格は保証されますか?
A. 確約は、学校の内々の運用であり、公式な合格保証ではありません。確約を得たあとも、入試当日は最後まで解答するなど、最低限の準備をして本番に臨むことが大切です。確約が取れても不合格になるケースについては、次の記事で整理しています。
→ 確約があっても不合格になる?私立高校で起きる5つのケース
Q. 確約は何校まで取れますか?
A. 比較のために複数校の個別相談を受け、見込みを聞いておくこと自体は問題ありません。ただし、単願として正式に出願できるのは1校です。併願は複数校を受験することもできます。本命を絞る段階になったら、中学校の進路担当の先生に状況を伝え、相談しながら進めてください。
Q. 内申点は、中3のいつの成績が使われますか?
A. 学校や方式によって異なります。併願推薦などでは、中3の1学期など、早い時期の通知表を基準にする学校もあります。志望校の募集要項か個別相談で、どの時期の成績が使われるのかを確認しておきましょう。
Q. 入学金は、公立の結果が出るまで待ってもらえますか?
A. 多くの私立高校に延納の制度がありますが、条件は学校ごとに違います。入学金の一部を先に納める学校もあれば、延納の制度がない学校もあります。確約の相談と同じ時期に、募集要項で確認してください。
まとめ:単願か併願かは、数字と本人の納得で決める
ここまでの要点を振り返ります。
- 単願として正式に出願できるのは1校。併願は複数校を受験できる
- 「確約」は公式な制度ではなく、個別相談での見込みの確認。基準は学校・年度で変わるので、直接確認する
- 2026年度の北辰テストは年8回。確約の相談で使える結果は、おおむね12月の第7回まで
- 志望校との偏差値の差と、直近3回の推移を並べて、単願か併願かの目安を持つ
- お金は、授業料の支援(私立は上限年額45万7,200円)だけでなく、入学金・延納・特待の条件まで含めて比べる
親が次にやることは、三つです。まず、お子さんの直近の北辰偏差値と内申点を一枚の紙に書き出してください。次に、気になる私立の個別相談で、確約の基準、延納の条件、特待の条件を質問してください。そして最終判断の前に、お子さん本人の希望を聞く時間をつくってください。
単願でも併願でも、数字を見て、親子で納得して選んだ進路なら、後悔はぐっと少なくなります。落ち着いて、一つずつ確認していきましょう。
この記事で確認した資料
- 北辰図書(北辰テスト)(2026年度 中3の実施日程・確認日 2026年11月5日)
- 文部科学省 令和8年度(2026年度)高校生の「授業料支援制度」リーフレット(確認日 2026年11月5日)






