提出日の朝、カバンの底からくしゃくしゃになったワークが出てきて、慌てて走り出す。そんな光景は、中1・中2のご家庭でそう珍しくありません。
「テストは平均より上なのに、通知表の数字が思ったほど上がらない」
「提出物を出し忘れただけで、内申点が下がるって本当ですか?」
テストの点と通知表の評定が噛み合わないとき、親が最初に疑うのは提出物や授業態度です。ただ、「出していれば評価される」「態度が悪いと下げられる」という単純な話ではなく、評価の仕組みを知らないまま家庭で声をかけると、的外れになりやすい部分でもあります。結論からお伝えすると、提出物と授業態度は、点数をつけるための材料の一つで、見られているのは「出したか」ではなく「学び方を工夫しながら取り組めているか」です。
この記事では、通知表の評定のもとになる「観点別評価」の3つの観点を、文部科学省の資料をもとに整理します。そのうえで、提出物と授業態度の見られ方、家庭でできる整え方、親の手に余る場面での外部の力の比べ方をまとめます。評定を実際にどう決めるかは学校や先生によって違うため、学校ごとに違う部分は「学校に確認する」と書きます。
通知表の評定は、3つの観点を見てつけられる
まず、通知表の評定(5段階)が何をもとに決まるのかを整理します。中学校の学習評価は、教科ごとに3つの観点で評価されます。文部科学省の資料(中央教育審議会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」の概要)では、観点別評価は次の3つで、それぞれ A・B・C の3段階で行うと示されています。
- 知識・技能:学んだ知識や技能を身につけているか
- 思考・判断・表現:身につけた知識や技能を使って、考えたり、判断したり、表現したりできるか
- 主体的に学習に取り組む態度:粘り強く学ぼうとしているか、自分の学び方を調整しようとしているか
提出物や授業態度が関係してくるのは、主に3つ目の観点です。ただし、3つ目だけで評定が決まるわけではありません。定期テストは、おもに1つ目と2つ目の観点を見るための材料になります。
観点ごとの評価が、最終的に5段階の評定にどう結びつくか、つまり A や B をどんな割合で足し合わせるかは、学校ごとに決めています。ここは文部科学省の資料でも「こうしなさい」とは決まっておらず、学校のルールを確認するしかありません。
評定に近づく見方のチェックリスト
- 通知表に観点別の A・B・C が載っているか(学校によっては載せていないこともある)
- 評定が低い教科は、テストの点が原因なのか、提出物や授業の取り組みが原因なのか、切り分けられているか
- 学期のはじめに配られる「評価の仕方」のプリントを、保管してあるか
- 先生が評価の方針を、授業や面談で説明していたか
この4つのどれも「わからない」場合は、まず評価の方針を学校から聞くところから始めます。順番を間違えて、「提出物を全部出させる」「態度を叱る」から入ると、子どもの反発だけが残ることがあります。
「主体的に学習に取り組む態度」は、何を見ているのか
3つ目の観点の中身を、文部科学省の資料で確かめます。ここがいちばん誤解されやすい部分です。
同じ資料には、この観点の評価は「単に継続的な行動や積極的な発言等を行うなど、性格や行動面の傾向を評価するということではなく」、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら、学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を評価する、と書かれています。さらに、評価する側面は次の2つだと示されています。
- 知識・技能を身につけたり、考える力を身につけたりするために、粘り強く取り組もうとしている側面
- その粘り強い取組の中で、自分の学習を調整しようとしている側面
また、資料は、課題として「挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れていない」ことにも触れています。つまり、手を挙げた回数や、ノートを毎時間取ったかどうかだけで決まる評価ではない、というのが国の整理です。
具体的な評価の材料としては、「ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察や、児童生徒による自己評価・相互評価の状況の考慮など」が挙げられています。提出物は、この「記述」の一つとして使われることがあると読めます。
「出しただけ」と「取り組んだ」の違い
国の資料を、家庭の言葉に直すと次のようになります。
- 空欄だらけでも、期限に出せば評価される、とは限らない
- 間違いを直して出し直したり、わからないところに印をつけて質問したりする子は、「学び方を調整している」と見てもらいやすい
- 提出物の「回数」より、中身に取り組んだ跡があるかどうかが問われやすい
ただし、これは資料から読み取れる考え方で、学校の実際の採点基準ではありません。提出期限を過ぎたら何点引くのか、未提出が何回で観点をどう下げるのか、といった運用は学校によって違います。
提出物で点を落とす子に多い、5つのつまずき
提出物が原因で評価を落とすケースには、いくつかの典型があります。「やる気がない」とひとまとめにせず、どれに当たるかを見分けると、打てる手が見えてきます。
- 締切を把握していない:連絡帳に書かない、書いても見返さない。やる力はあるのに、出し忘れで落とすタイプ
- やっているのに、出し方が雑:名前や学年の書き忘れ、ページを抜く、折れたまま出す。提出物の扱いが評価に響くことがあるため、先生の指示を確認したい
- 量が多すぎて、終わらない:部活の時間が増えて、週末にまとめてやるうちに追いつかなくなる
- 全部が同じ重さに見えている:最後に出す冬休みの宿題と、毎週の小さな課題の区別がつかず、順番を間違える
- わからなくて、手が止まっている:解けないから後回しにして、期限を過ぎてしまう。いちばん見過ごされやすいタイプ
提出物のつまずきを見分けるチェックリスト
- 直近の提出物で、期限に遅れたものが何回あったか、子どもに聞いてみた
- 遅れた理由が、「忘れていた」「終わらなかった」「わからなかった」のどれかを、本人の言葉で確認した
- 提出物の中に、答えを写しただけの箇所や、空欄のままのページがないかを、見た
- 連絡帳やアプリに、提出期限を書く習慣があるかを、確認した
- 各教科の提出物の「出す場所・出し方」を、本人が説明できるか、聞いてみた
5つのタイプのうち、いちばん手を打ちにくいのは最後の「わからなくて止まっている」タイプです。これは、提出物の問題に見えて、実は学習内容のつまずきです。提出物を出させる声かけだけを続けても、状況は変わりません。
提出物は「出す」ことより、「どう取り組んだか」が見えるかどうかが大切です。テストの点は平均前後なのに評定が伸びないときは、期限内に出していても、後半が空欄のままだったり、間違えた問題の直しがなかったりしないかを見てください。そして、家庭でできることには限りがあることも、このあとの節で触れます。
授業態度は、どこまでが評価に関わるのか
次に、授業態度です。「態度が悪いと評定を下げられるのか」と心配になる方もいるでしょう。
国の資料に沿って整理すると、授業中の発言やノートの記述は、「学び方を調整しながら取り組んでいるか」を見る材料の一つになります。一方で、「性格や行動面の傾向を評価するということではない」とも書かれています。つまり、おとなしい子や、人前で発言するのが苦手な子が、それだけで不利になるべきではない、というのが国の整理です。
とはいえ、実際の評価は先生によって違います。発言を重視する先生もいれば、ノートや振り返りの記述を重視する先生もいます。ここは学校や先生に直接確かめてください。
授業態度で、家庭から確認できること
- ノートに、板書だけでなく自分のメモや間違いの直しがあるか
- 授業のあと、わからなかったことを先生に質問できているか(質問しにくい子もいる)
- 小テストや課題の振り返りを、書いたり直したりしているか
- 先生から指摘された点(忘れ物、私語など)が、本人の言葉で説明できるか
この中で、親が直接手を貸しにくいのが「質問する」ことです。教室で手を挙げるのが苦手な子は、わからないまま授業が進み、結果として取り組みの記録が薄くなってしまいます。こうした子には、授業の中で手を挙げさせるより、授業のあとの時間にまとめて質問する方法を探すほうが現実的です。
なお、授業中にぼんやりしている、急に表情が暗くなった、といった様子が続くときは、評価の話より先に、学校の先生やスクールカウンセラーなど身近な相談先に話してみてください。ここで書いているのは、学習面の整理です。
家庭でできる、提出物と授業の整え方
ここまで見てきたとおり、評価の中心は「取り組み方」です。家庭でできる整え方を、3つの順番で示します。
1.提出物の見える化:締切を1か所に集める
- 連絡帳か、家のカレンダーのどちらかに、提出期限を1か所に集める
- 週に1回、日曜の夜などに、提出物の一覧を一緒に見る(点検ではなく、確認の時間にする)
- 期限の前日に慌てないよう、「終わらせる日」を期限の2日前に決める
ここで大事なのは、親が代わりに管理しすぎないことです。管理を全部親がやると、子どもは自分で学習を調整する機会を失います。「見える化の仕組みは作るが、動かすのは本人」と線を引いておきます。
2.提出物の中身:解けなかった問題に印をつける
- 解けなかった問題や、迷った問題に、先に印をつける習慣を作る(空欄にして放置しない)
- 間違えた問題は、直した跡が残るように、消さずに赤で直す
- 印をつけた問題は、学校の先生に聞くか、教科書やワークの解説で確かめる時間を週に一度取る
こうして残った跡は、「わからないところを自分で把握し、直そうとしている」ことの記録になります。国の資料にある「自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤する」という見方とも合います。
3.授業のあとに:1つだけ質問する
- 授業のあと、その日いちばんわからなかった点を、1つだけ先生に聞く(教室で聞きにくければ、職員室でも、ノートに書いて渡すのでもよい)
- 学期のはじめの評価の説明を、わからなければ、保護者面談や連絡帳で先生に聞いてみる
この3つを一度に始める必要はありません。子どもに合う一つを選んで、2週間続けてみてください。評価がすぐ動くとは限りませんが、取り組み方が変わるきっかけにはなります。
定期テストで点が取れない原因の見分け方は、別の記事にまとめています。
それでも家庭だけでは手が回らなくなる場面
提出物の見える化も、印をつける習慣も、授業後の質問も、家庭で試せる方法です。ただ、次のような状況では、家庭だけでは行き詰まりやすくなります。
- 提出物が、わからない問題で止まっている。親が教えようとしても、中学の内容を教えられない、または教えようとすると口論になる
- 部活で帰宅が遅く、提出物にかけられる時間そのものが少ない
- 質問しにくい子で、授業のあとに自分から先生に聞けない
- 提出物の管理を、親が毎日見る形になってしまい、親子の関係がぎくしゃくしている
- どの教科でどの観点が足りないのか、親には判断がつかない
この中で、「わからない問題で止まっている」と「質問しにくい」は、家庭だけで解決しようとすると重くなりやすい部分です。評価の材料になる「学び方の調整」は、誰かに質問したり、見てもらったりする機会があって初めて形になるためです。
提出物と授業態度で外部に頼るなら
提出物や取り組み方の相談で外部の力を借りるときの選択肢は、大きく3つあります。特定の会社を勧める意図はなく、比べる見方だけを示します。
集団授業の塾
決まった進度で授業が進み、学校より先の内容を扱う塾も多くあります。その分、学校の提出物の「わからない」に付き合う時間は取りにくく、質問しにくい子は、わからない状態のまま次に進んでしまうことがあります。
個別指導塾
講師1人に生徒1〜2人という形が多く、提出物のわからない問題をその場で聞けるのが特長です。一方で、教室に通う時間が要り、学校の提出物にどこまで付き合ってもらえるかは教室によって違います。
家庭教師
自宅で教えてもらえるので、学校のワークやノートを一緒に見ながら進められます。「どこで止まっているか」まで見てもらえるかは、会社や講師によって違うため、事前に聞いておく必要があります。講師との相性が成果に大きく影響するため、合わなかったときに交代できるかも確かめたい点です。
外部の力を借りる価値が出やすいご家庭
- 提出物が、わからない問題で止まっていて、家庭で教えられない
- 質問しにくい性格で、学校では「聞く」機会が少ない
- 部活が忙しく、塾に通う時間を新たに作るのが難しい
- 親が関わると衝突しやすく、第三者のほうが話しやすい
どの形でも、入会しただけで通知表の評定が上がるわけではありません。大切なのは、料金・指導の形・講師の相性・合わなかったときの対応を、同じ項目で比べてから決めることです。特に、「学校のワークや提出物を見てもらえるか」は、入会前に聞いておくと、入会後のずれが減ります。
→ 家庭教師と個別指導塾の違い|埼玉の中3の親が比べる7項目
提出物の置き場所から質問の習慣まで|3学期前に作る仕組み
評価の仕組みを踏まえて、提出物と授業のことで最初に動けるものを6つに絞りました。全部をそろえる必要はなく、一つ選べば十分です。
提出物と授業のチェックリスト
- 直近の通知表と、各教科の提出物の状況を、子どもと一緒に見る(責めずに、確認する)
- 学校から配られた、評価の仕方のプリントがあるか探す(なければ先生に聞く)
- 提出期限を書く場所を1か所に決める
- 解けなかった問題に印をつけてから出す習慣を、1教科から始める
- 授業のあとに聞きたいことを、1つだけ決めて、先生に聞けるか様子を見る
- 次の三者面談や連絡帳で、先生に「評価で見ているところ」を聞いてみる
今のうちに確認しておきたいこと
- 通知表の評定が入試にどう関わるかは、県の公表資料で確認する(いま中1・中2のお子さんが受ける入試の制度や日程は、まだ県から発表されていないため、数字には踏み込みません)
→ 学年末テストで内申点を上げる|中1・中2が2月までにやること
中2・中3に進級するのは2027年4月です。2学期の通知表のあとには、3学期の学年末テストと提出物の締切が続きます。ただ、提出物の習慣や、「わからないところを聞く」習慣は、数週間では身につきません。3学期が始まる前に、一つだけでも仕組みを作っておくほうが、学年末の評価に間に合いやすいです。
まとめ:提出物と授業態度は「出した」より「どう取り組んだか」
- 通知表の評定のもとになる観点別評価は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つ。提出物や授業態度が関わるのは主に3つ目
- 国の資料では、3つ目の観点は「粘り強く取り組もうとしているか」「自分の学習を調整しようとしているか」を見るもので、挙手の回数や性格・行動面の傾向を見るものではないと整理されている
- 提出物は、期限に出したかより、取り組んだ跡があるかが問われやすい。ただし、実際の運用や評定への反映のさせ方は学校によって違うため、学校に確認する
- 提出物で落とすつまずきは、締切の把握・出し方・量・優先順位・わからなくて止まる、の5タイプ。いちばん見過ごされやすいのは「わからなくて止まる」
- 家庭では、締切を1か所に集める、解けなかった問題に印をつける、授業のあとに1つだけ質問する、の3つが始めやすい
- 家庭だけで手が回らないときは、料金・指導の形・講師の相性・交代の可否を同じ項目で比べてから、外部の力を検討する
まずは、子どもと一緒に、いちばん評定が気になる教科の提出物を1冊だけ開いてみてください。「どこが一番しんどかった?」と聞くところから、取り組み方を整える最初の一歩が決まります。
この記事で確認した資料
- 文部科学省「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)の概要」(2019年、2026年11月5日確認)






