埼玉だけの「確約」とは|他県出身の親が知る私立の仕組み

「確約って何ですか?」

「前に住んでいた県では、そんな話は聞いたことがなかったのですが…」

他県から埼玉に引っ越してこられた保護者の方が、こうした疑問を持つのは無理もありません。確約は埼玉県の私立高校入試で広く使われている言葉で、他の都道府県の「推薦」や「併願優遇」とは仕組みが少し違うからです。

結論からお伝えします。確約は私立高校だけの仕組みで、公立高校にはありません。内申点と北辰テストの結果をもとに、入試本番より前に、合格の見通しを学校と相談して確かめるものです。基準は学校ごとに違い、多くの場合、学校の説明会や個別相談で初めて分かります。

この記事では、他県出身のご家庭でも迷わないように、確約の基本、他県との違い、基準の見方、時期、個別相談での考え方を順に整理します。

そもそも「確約」とは?公立にはない私立高校の仕組み

確約は、私立高校が入試本番より前の時期に、内申点や北辰テストの成績をもとに「この数字であれば、受験すれば合格の見込みが高い」という見通しを伝える仕組みです。多くは秋から冬にかけての個別相談の場で話が進みます。

正式な合格発表ではありません。あくまで学校と保護者・生徒の間で行う事前のすり合わせで、法的な契約書を交わすものでもありません。学校によって「確約」「入試相談」「事前相談」など、呼び方も扱いも異なります。

ここで、他県出身の方がつまずきやすいのが「北辰テスト」という言葉です。北辰テストは、北辰図書が実施する、埼玉県の中学生向けの民間の模擬試験です。学校のテストではありません。公立高校の合否には使われません(令和9年度の公立入試は、学力検査・調査書・面接の得点で選抜されます)が、私立高校の基準では内申点と並ぶ材料として扱われることがあります。

整理すると、次のようになります。

  • 公立高校:学力検査(2027年2月25日)、調査書の評定、面接(2月26日)の得点で合否が決まる。確約という仕組みはない。出願は1月26日正午から2月9日正午まで、入学許可候補者の発表は3月5日(令和9年度入試、埼玉県の日程表)
  • 私立高校:学校が示す内申点・北辰テストなどの基準を事前に相談し、合格の見通しを確かめる場合がある

この二つの仕組みが並行して動いているのが、埼玉の高校入試の特徴です。

なお、確約が出ていても、入試は入試です。欠席や白紙答案など通常ではない事情があれば、見通しどおりにならない可能性があります。確約の受け止め方は、別の記事でも詳しく書いています。

→ 確約があっても不合格になる?私立高校で起きる5つのケース

他県との違い:推薦・併願優遇・確約はどう違うか

他の都道府県で受験を経験したご家庭ほど、確約に戸惑います。私立高校の入試の仕組みは、都道府県ごと、学校ごとに決まっていて、同じではありません。前に住んでいた県の呼び方や基準を、そのまま当てはめないでください。

  • 他県で聞いた「推薦」「併願優遇」などの言葉:県や学校によって、意味も基準も違います。前の県の募集要項で確かめてください
  • 埼玉県の私立高校:内申点に加えて、北辰テストの結果を基準に使う学校があり、個別相談で直接すり合わせます

埼玉では、学校によって内申点(学校の成績)と北辰テストの結果(外部の模試)の両方を基準にすることがあります。「模試の結果が関わるの?」と驚かれるのは、このためです。

ただし、すべての学校が同じ見方をするわけではありません。北辰テストを使わない学校や、内申点だけで基準を示す学校もあります。志望校ごとに、募集要項や説明会の資料で確かめてください。

確約の判断材料:内申・北辰・欠席日数・加点

確約の可否を考える材料は、内申点と北辰テストの2つだけと思われがちです。実際には、学校によって次のような項目も見られます。

  • 中学校の内申点(9教科の評定の合計や、特定の教科の基準)
  • 北辰テストの結果(基準になる回数や期間は学校ごとに違う)
  • 欠席日数(3年間の合計や学年ごとの上限を示す学校がある)
  • 加点になりうるもの(英検・漢検・数検などの検定、生徒会や部活動の実績など)

北辰テストについては、1回分の結果だけで決まるとは限りません。たとえば「9月から12月のうち2回の平均が基準を満たすこと」のように、期間と回数を決めている学校があります。対象になる回は学校ごとに違うので、1回だけ調子が良かったからといって安心はできません。

欠席日数も見落とされがちです。成績が基準に届いていても、欠席日数の条件を超えていると話が変わる学校があります。病気や家庭の事情などでやむを得ない欠席は、個別相談で正直に事情を伝えて、学校の考え方を確かめてください。

検定や部活動の実績は、基準に少し届かないときの材料として扱われる場合があります。ただし、どの検定が何級から対象になるか、そもそも加点があるかどうかは、学校ごとに違います。公表されていなければ、個別相談で聞くのが確実です。

→ 内申・北辰の確約基準一覧【2027年入試】埼玉私立の学校別

→ 部活の県大会出場は内申点に?令和9年度入試の調査書

単願確約と併願確約の違い

確約には、大きく分けて2つの形があります。

  • 単願確約:その私立高校を第一志望として、合格したら入学することを前提にした形
  • 併願確約:公立高校を第一志望にして、私立高校を併願校として受ける形

単願と併願でどちらの基準が高いか、差があるかどうかは、学校によって違います。必ず志望校の基準で確認してください。

他県出身の保護者の方が誤解しやすいのは、「併願は滑り止めだから簡単に取れる」という見方です。基準は学校ごとに違うため、想定より高い数字が必要になることもあります。

単願の場合は、原則として入学が前提になります。あとから「やっぱり公立一本に絞りたい」と変えるのは難しくなるため、出す前に家族で話し合っておきましょう。単願と併願の違いと選び方は、こちらの記事で詳しく整理しています。

→ 単願確約は何校まで?併願確約との違いと選び方

→ 併願確約は取るべき?2027年入試で保護者が知ること

他県出身のご家庭がやりがちな誤解

よく聞く誤解を3つ挙げます。

誤解1:合格保証書のような書類がもらえる

確約は、正式な合格通知とは性質が違います。学校によっては「確約」という言葉を使わず、「出願してください」「受験すれば大丈夫です」といった言い方で伝えることもあります。受け取った内容は、その場でメモを取り、帰ってから家族で確認しておくと安心です。

誤解2:確約をもらったら、その後の成績や生活は関係ない

内申点や出欠が大きく変わると、見通しが変わる可能性があります。確約をもらったあとも、普段どおりの学習と生活を続けることが大切です。

誤解3:どの学校も同じ物差しで決まる

学校・学科・コースごとに基準は違います。内申点と北辰テストの両方を満たす必要がある学校もあれば、どちらか一方でよい学校もあります。友人の話や過去の年度の情報をそのまま当てはめず、志望校の今年度の情報で確かめましょう。

他県から転入した中3の夏に「内申点が足りていれば大丈夫」と考え、北辰テストを1回も受けないまま秋の個別相談に行くと、「北辰テストの結果も見て判断する」と言われて提出できる成績がほとんどない、という事態になりえます。北辰テストの第6回は2026年11月8日、第7回は12月6日、第8回は2027年1月31日です。学校が基準にしている回数に届かないこともあるので、志望校の基準は早めに確かめておきましょう。

確約はいつ、どこで決まるのか:1年の流れ

確約の話が動き出すのは、私立高校の学校説明会や個別相談会の場です。事前予約が必要な学校が多く、日程や予約方法は各校の公式サイトで案内されます。大まかな流れは、次のようなものです(年度や学校で異なります)。

  • 夏(7月・8月ごろ):学校説明会が始まり、その年度の基準の目安が示される学校がある
  • 秋(9月〜11月ごろ):個別相談会が本格化する。北辰テストの回を重ね、内申点も固まってくる
  • 冬(12月ごろ):相談会を続ける学校が多く、志望校の最終的な組み立てを決める時期になる

北辰テストについては、2026年度の中3は全8回が予定されています(北辰テストの実施予定日は、2026年4月8日時点の予定)。

  • 第5回:2026年10月11日(日)
  • 第6回:2026年11月8日(日)
  • 第7回:2026年12月6日(日)
  • 第8回:2027年1月31日(日)

実施日は変更される可能性があるため、日程は北辰図書の公式サイトで確認してください。

学校によっては、基準に使う北辰テストを「中3の夏以降の回」などと限っています。他県から転入したばかりで北辰テストの経験がないご家庭は、早めに志望校の基準を調べ、受ける回を決めておくと安心です。

個別相談に持っていくものは、次のようなものです。

  • 内申点がわかる資料(中学校から受け取った成績関連の書類)
  • 北辰テストの成績表(複数回分)
  • 英検・漢検・数検などの合格証のコピー(取得している場合)
  • 出席状況がわかる資料

持ち物の詳しい一覧は、こちらにまとめています。

→ 私立高校の個別相談、持ち物は何を用意する?|通知表と成績表

なお、私立高校の募集規模については、埼玉県が2026年9月11日に公表した令和9年度の入試要項の発表で、全日制高校(内部進学のみの学校を除く)は47校、募集人員は17,129人とされています(前年度は17,156人)。学校ごとの入試要項は、県のホームページで見ることができます。

個別相談での考え方:基準を確かめて、正直に相談する

個別相談の目的は、学校が示す基準に対して、お子さんの数字がどの位置にあるかを確かめることです。基準が募集要項に書かれていないことも多いため、聞く内容を事前に整理しておくと、限られた時間を有効に使えます。

確かめておきたいことを挙げます。

  • 北辰テストは、どの回を、何回分、どう数えるか(平均か、各回の基準か)
  • 内申点は、9教科の合計か、特定の教科の基準があるか
  • 欠席日数の上限があるか、あるとしたらいつまでの日数か
  • 検定や部活動などが、基準に影響することがあるか
  • 単願と併願で、基準に違いがあるか
  • 今後の成績で、基準を満たす見込みが変わるか

検定や課外活動の実績がある場合は、聞かれるのを待つだけでなく、資料を持参して「こういう実績がありますが、判断の材料になりますか」と、率直に尋ねてみてください。学校が基準に含めていなければ、その答えをそのまま受け止めます。大切なのは、学校の示す基準を正しく聞き取ることです。

また、数字が基準にあと少し届かない場合も、まずは正直に現状を伝え、これからの期間で何を伸ばすとよいかを聞くのが一番確実です。無理に押し切ろうとしたり、事実と違う説明をしたりすることは、後々の信頼を損ねます。

相談の場では、担当者の説明に不明な点があれば、その場で聞き返して構いません。「持ち帰って家族で相談します」と伝えて、その場で決めない選択もあります。複数の学校の説明を聞き比べてから決めるほうが、納得のいく判断につながります。

→ 確約の基準は下がらない?少子化でも私立が強気な3つの背景

併願確約を考えるなら、公立の志望校の位置づけも整理する

併願確約は、公立高校を第一志望にするご家庭が、私立高校を併願校として確保しておくために使うことが多い仕組みです。そのため、私立の基準だけを見ても、判断は十分ではありません。

まず、お子さんが目指す公立高校が、県内でどのあたりの学力帯にあるかを把握しておくことが前提になります。公立高校の偏差値の目安は、当ブログの偏差値ランキングの記事にまとめています。

→ 埼玉県公立高校偏差値ランキング【2026年度】

次に、内申点対策と北辰テスト対策は、求められる勉強の質が少し違う点も押さえておきましょう。内申点は、実技教科を含む9教科の評価で、定期テストの点数に加えて、提出物や授業への取り組みも関わります。一方、北辰テストは初見の問題に対応する力が問われます。

定期テストは得意でも、模試形式の問題が苦手なお子さんもいます。その場合は、まず、どの教科が基準の足を引っ張っているのかを見極めましょう。苦手が1〜2教科に絞れるなら、その教科に時間を集中させる方法が現実的です。学校の先生や、通っている塾・個別指導・家庭教師など、身近に相談できる人に、いまの数字を見せて意見を聞くのもよいでしょう。

まとめ:確約の仕組みを知って、早めに志望校の基準を確かめる

埼玉の確約について、ポイントを振り返ります。

  • 確約は私立高校の仕組みで、公立高校にはない
  • 他県の推薦や併願優遇とは違い、埼玉では内申点と北辰テストの結果をあわせて見る学校が多い
  • 基準は内申点・北辰テストだけでなく、欠席日数や検定などが関わる学校もある
  • 単願と併願で基準が違う場合があり、併願のほうが高めの学校もある
  • 基準は学校・学科・コースごとに違うので、志望校の今年度の情報で確かめる
  • 個別相談は、基準を聞き取り、正直に現状を伝えて相談する場として使う

次にやることは3つです。第一に、志望校の公式サイトで、説明会・個別相談会の日程と予約方法を調べてください。第二に、お子さんの内申点、北辰テストの成績、欠席日数を一覧にまとめてください。第三に、個別相談で聞きたいことを書き出して、持ち物をそろえてください。

確約は分かりにくい仕組みですが、基準を確かめる順番さえ分かれば、慌てる必要はありません。一つひとつの数字の意味を確認しながら、お子さんに合った受験の組み立てを考えていきましょう。