「受験生なんだから、ゲームは禁止にしないと」「毎晩ゲームのことで言い合いになって、こちらも疲れてしまった」。中3のお子さんがいるご家庭では、こうした声は珍しくありません。仕事や家事で忙しい中、毎晩のように声を張り上げるのは、保護者の方にとっても消耗するものです。
結論からお伝えします。受験生のゲームを、親が一方的に決めて全面禁止にするのはおすすめしません。多くの場合、続きにくく、かえって親子の関係や勉強への気持ちに響いてしまうためです。代わりに、本人と一緒にルールを決め、環境を整え、時期に合わせて見直す形が現実的です。
この記事では、全面禁止が続きにくい理由、ゲームの種類ごとの注意点、依存が心配なときのサイン、ルールの作り方、声かけの言い換え、時期ごとの考え方を順にお話しします。お子さんによって事情は違いますので、ご家庭に合う部分だけ取り入れてください。
結論:全面禁止より、本人と決めたルールの方が続きやすい
ゲームの全面禁止が続きにくい理由は、大きく2つあります。
1つ目は、隠れてやるようになりやすいことです。禁止されたゲームを我慢し続けるのは、大人でも難しいものです。親の目を盗んで夜中にこっそり遊んだり、友達の家でやってから「やっていない」と言ったりするようになると、ゲームの時間だけでなく、親子の信頼まで傷つきます。
2つ目は、親子関係が悪化しやすいことです。受験生にとって、ゲームが数少ない気分転換になっていることは珍しくありません。それを取り上げられた反発が、勉強そのものへのやる気を下げてしまうことがあります。
なぜ「やめなさい」だけでは通用しにくいのか
そもそも、なぜお子さんはゲームをやめにくいのでしょうか。多くのゲームには、レベルアップ、ログインボーナス、あと少しで勝てそうな試合など、「もう少しだけ」と思わせる工夫が入っています。大人がスマホを手放しにくいのと、構造は似ています。
つまり、やめられないのは、本人の意志が弱いからと決めつけられるものではありません。この前提を親が持っているかどうかで、声かけの説得力は変わります。「意志が弱い」と責めるより、「そういう仕組みだから、ルールで区切る工夫が必要だよね」と伝えた方が、本人も受け入れやすくなります。
期間を区切った禁止が合う場合もある
とはいえ、禁止が合う場合もゼロではありません。次のような場合は、期間を区切った休止が役に立つことがあります。
- 本人自身が「しばらくやめたい」「預かってほしい」と望んでいる
- ゲームの時間が生活リズムを崩している(昼夜逆転ぎみ、など)
- 入試直前の数週間など、期間がはっきり決まっている
ポイントは、親が一方的に決める禁止ではなく、本人が納得したうえでの休止であることです。いつまで、どんな条件で再開するのかも、先に決めておきます。
ゲームの種類によって、注意点が変わる
ひとくちに「ゲーム」といっても、種類によって区切りやすさが違います。ここを分けて考えないと、決めたルールが現実に合わなくなります。
ソロプレイ型(物語を進めるもの、パズルなど)
自分のペースで中断しやすいタイプです。「このステージまで」「セーブできるところまで」のように、区切りを作りやすく、ルール化もしやすい傾向があります。
オンライン対戦型(対戦ゲーム、チーム戦など)
もっとも注意したいタイプです。試合の途中で抜けるとチームの仲間に迷惑がかかる、友達と「何時から一緒にやろう」と約束している、負けたまま終わると気持ちの区切りがつけにくい、といった事情が重なり、自分で時間をコントロールしにくくなります。「あと1回だけ」が1回で終わらないのは、このためです。
このタイプのゲームでは、「30分まで」のような時間よりも、「試合は2回まで」「1試合が終わったら終了」のように、試合の切れ目を基準にした方が守りやすいことが多いです。
コミュニケーション中心型(ゲーム内のチャットや通話が中心)
友人関係そのものがゲームの中で保たれていることがあります。単純に時間を減らすだけだと、「友達づきあいを切られた」と感じてしまうかもしれません。時間を減らすときは、「誰と、何のためにやっているのか」を先に聞いてから話し合うのが安心です。
依存傾向のサインを見逃さない
「ルールを守れないこと」と「依存傾向があること」は、似ているようで別の問題です。次のようなことが複数、しかも長く続く場合は、家庭内のルール調整だけでは難しいことがあります。
- ゲームをやめさせようとすると、激しく怒ったり、暴言が出たりする
- ゲーム以外のことには、何にも関心を示さなくなっている
- 睡眠時間が、明らかに削られ続けている
- 本人が「やめたい」と言いながら、自分でコントロールできない状態が続いている
- 学校を休みがちになった、食事や入浴が不規則になった
こうした様子が強く当てはまる場合は、家庭だけで抱え込まず、学校のスクールカウンセラーや担任の先生、地域の相談窓口など、専門の人に相談することを選択肢に入れてください。この記事は医療や心理の専門的な判断をするものではなく、状態を診断することはできません。判断に迷うときは、早めに専門の方に聞いていただくのが安心です。
多くのご家庭では、ここまで深刻にならず、ルールと環境の調整で落ち着いていきます。過度に不安になる必要はありませんが、「うちの子は当てはまるかも」と感じたら、様子を見るだけで終わらせず、早めに動いてください。
ゲームとの付き合い方|ルール作りの4ステップ
全面禁止の代わりにおすすめしたいのは、「一緒にルールを決めて、守れたら見直す」というやり方です。
ステップ1:現状を数字で確認する
まず、いまどれくらい遊んでいるかを、感情的にならずに確認します。親の印象(「たぶん毎日3時間は」)、本人の自己申告、実際の時間は、ずれていることがよくあります。ゲーム機やスマホには、利用時間を確認できる機能がついていることが多いので、感覚ではなく画面に出る数字で見るのがおすすめです。
数字を見せるときは「多すぎる」と責めるのではなく、「実際はこうだったね。どう思う?」と本人の感想を先に聞いてください。
ステップ2:本人と一緒にルールを決める
親が決めたルールを伝えるのではなく、本人にも意見を出してもらいます。たとえば、次のような項目を一緒に決めます。
- 平日は何分まで、休日は何分まで
- 宿題やその日の勉強が終わってから始める
- 寝る1時間前には終わる
- 対戦型は、時間ではなく「試合〇回まで」で区切る
とくに優先したいのは、寝る前のゲームです。寝る直前まで強い光の画面を見たり、気持ちが高ぶるゲームをしたりすると、寝つきが悪くなりやすいと言われています。睡眠が足りなければ、翌日の授業の理解にも響きます。ルールを一つだけ決めるなら、まず「寝る前」を決めるのがよいでしょう。
ステップ3:約束だけに頼らず、環境を整える
「破ったらどうするか」を決めておくことも大切です。たとえば「1回目は注意、2回目は翌日の時間を減らす」のように、あらかじめ本人と合意しておきます。
ただ、口約束だけでは守りきれず、親子ゲンカになるご家庭は少なくありません。そこで、意志の力に頼らず、環境の方を先に整える方法があります。
- ゲーム機やスマホは、自室ではなくリビングで充電する
- ルーターの機能や見守りアプリで、決めた時間になったら使えなくする
- 寝る場所と、ゲーム機を置く場所を離す
「やめさせる」のではなく、「やめやすい環境を作っておく」という発想です。ペナルティは最後の手段、環境の調整は毎日の仕組み、と分けて考えると、日々の消耗が減ります。また、罰則を感情的な取り上げにしないことも大切です。その場の怒りで急に厳しくすると、本人には「約束」ではなく「親の気分」でルールが変わったように見えてしまいます。
ステップ4:定期的に見直す
一度決めたルールも、成績や生活リズムの変化に合わせて見直します。受験学年は、時期によって必要な勉強時間が大きく変わるためです。
見直すときは、ゲームを何分減らすかだけでなく、「勉強する時間を先にどこへ固定するか」も一緒に決めてください。そうすると、話し合いがゲームの取り合いになりにくくなります。
声かけの言い換えと、親がやりがちなNG対応
同じことを伝えるにも、言い方ひとつで受け取られ方は変わります。いくつか例を挙げます。
NGとOKの言い換え
- NG「いつまでゲームやってるの、いい加減にしなさい」→ OK「今、何分くらいやった? そろそろ区切りのいいところかな」
- NG「そんなにゲームばかりだから成績が下がるんでしょ」→ OK「最近ゲームの時間が増えている気がするけど、勉強とのバランスはどう感じてる?」
- NG「もうゲームは禁止だから」→ OK「今のルールだと厳しくなってきているから、一緒に見直してみようか」
ポイントは、決めつけではなく、確認の形にすることです。受験生本人も、内心では焦りや罪悪感を抱えていることが多く、頭ごなしに責められると、その気持ちが反発として出てきます。
声かけの全般については、こちらも参考になります。
北辰テストの前日の過ごし方の記事ですが、前夜のゲームや睡眠の考え方は、日ごろのルールを決めるときにも使えます。
親がやりがちなNG対応
- 成績が下がった瞬間に、予告なしで取り上げる。罰が突然だと、反発を強めるだけで終わりやすいです
- きょうだいや友達と比べて制限する。「〇〇君の家はもっと厳しいらしいよ」では、本人の納得につながりません
- 親自身はスマホやテレビを自由に見ている。子どもだけに制限をかけると、不公平感が出ます。家庭全体で「夜は画面を見ない時間」を作ると、受け入れられやすくなります
- ルールを決めたあと、細かく確認しすぎる。監視されている感覚が強いと、自分で調整する力を育てる機会を減らしてしまいます。最初は確認が必要でも、少しずつ本人に任せていく姿勢が大切です
最後の点に関連して、親が「監視役」を降りやすくする考え方を一つ補足します。ゲームをやめさせる声かけを増やす代わりに、勉強をする時間の枠を、外から作ってしまう方法です。
たとえば、決まった曜日と時間に家庭教師や塾の授業が入れば、その時間は親が言わなくても勉強の時間になります。ゲームの問題そのものを解決するものではありませんが、学習時間の枠を作る第三者を入れるのは、選択肢の一つです。ただし、料金体系も指導の形も会社によって大きく違うため、料金・指導内容・担当の決まり方といった同じ項目で比べてから決めてください。
なお、これは学習時間の作り方の話です。先にお伝えした依存傾向のサインに強く当てはまる場合は、家庭教師で解決することではありません。スクールカウンセラーや専門機関への相談を優先してください。
ご褒美のゲームは有効か、時期ごとの考え方
ご褒美としてのゲームについて
「テストで〇点取ったらゲームを買う」「模試の結果次第でゲーム時間を増やす」といったご褒美制度を取り入れているご家庭もあります。短期的なやる気につながる面はありますが、ご褒美がないと勉強しなくなる、結果が出なかったときに本人の自信を大きく下げてしまう、といった点には注意が必要です。
取り入れるなら、結果だけでなく、「今週は毎日30分、決めた計画どおりに勉強できた」のような、過程に対するご褒美も組み合わせる方が、長い目で見て続けやすいです。
中3の1年間で、ゲームとの付き合い方は変わる
中3の1年間は、時期によって求められる集中度が変わります。
春から夏のはじめは、まだ本格的な受験モードに入りきっていない時期です。この時期から極端に締めつけると、後半で息切れしてしまうことがあります。生活リズムを整えることを優先して、ゆるやかに運用するくらいで十分です。
2学期から12月ごろは、北辰テストや定期テスト、内申点に関わる試験が続きます。平日のゲーム時間をやや厳しめにするご家庭が多い時期ですが、ゼロにするのではなく、「週末にまとめて少し多めに遊べる」といった調整の余地を残しておくと、無理なく続けやすくなります。北辰テストの結果と私立高校の確約の関係については、こちらで整理しています。
入試が近づく12月から1月は、本人の希望も含めて、一時的にかなり時間を減らす、または休止するご家庭が増えます。このときも、親が高圧的に取り上げるのではなく、「入試までの期間だけ、一緒にがんばる期間を決めよう」という声かけの方が、本人のやる気を保ちやすいです。
見落とされがちなのが、入試が終わった直後の反動です。長く我慢した分、一気にゲーム中心の生活になるお子さんもいます。これは自然な反応なので、過度に心配する必要はありません。ただ、「試験が終わったら、〇日間は自由にしていい」と見通しを先に共有しておくと、本人も気持ちの整理がつきやすくなります。
ゲームを減らした時間を、どう使うか
ゲームの時間を減らしても、その時間が自然に勉強に回るとは限りません。スマホで動画を見る時間に変わるだけ、ということもよくあります。減らした時間に何をするかを、一緒に決めておくと続きやすくなります。たとえば、自習室や図書館で勉強する、過去問に取り組む、といった使い方です。自習室の使い方については、こちらも参考にしてください。
→ 「自習室完備」の塾でも北辰が上がらない理由と自習室の使い方
また、勉強以外の時間の使い方として、英検などの検定に取り組むお子さんもいます。公立受験にどう関わるのかは、こちらで整理しています。
→ 英検準2級は公立受験の加点にならない?令和9年度入試の変更点
まとめ:禁止ではなく、一緒に決めて、環境を整えて、見直す
ゲームを全面的に禁止することは、わかりやすい解決策に見えますが、隠れて遊ぶようになったり、親子関係が悪化したりと、リスクの方が大きくなる場合が多いです。要点を振り返ります。
- 全面禁止は、本人が納得していなければ続きにくい。期間を決めた休止は、本人の合意があれば役に立つことがある
- ゲームは種類で区切りやすさが違う。対戦型は、時間より「試合の切れ目」で区切る
- イライラや暴言、睡眠不足、無気力などが強く長く続くときは、家庭だけで抱えず、スクールカウンセラーや専門機関に相談する
- ルールは、現状を数字で確認し、本人と一緒に決め、環境を整え、時期に合わせて見直す。まず決めるなら「寝る前」
- 声かけは「決めつけ」ではなく「確認」の形にする
親が次にやることは、今夜、責める言い方ではなく「いま何分くらい遊んでる?」と聞いてみることです。そこから、本人と一緒にルールを決めるところに進めます。受験までの道のりは長いようで、あっという間です。ゲームを敵にするのではなく、うまく付き合いながら、親子で乗り切っていただければと思います。






