「内申点も北辰の偏差値も悪くないのに、過去問をやらせたら全然解けなくて……」
「学校選択問題の対策って、いつから始めればいいんでしょうか。うちはまだ何もしていません」
浦和、浦和一女、大宮などの学校選択問題採用校を考え始めた保護者からは、こうした悩みが出やすくなります。夏から秋にかけて過去問を開いてみて、はじめて問題の違いに気づく方が少なくありません。
結論から言うと、学校選択問題を見据えた準備は、中2の夏から冬にかけて始めておくと余裕が出ます。ただし中3の秋からでも、やることを絞れば取れる点を増やすことはできます。
この記事では、学校選択問題とは何か、令和9年度(2027年)入試で何が変わるのか、学年ごとの準備の目安、そして中3の秋からでもできることを順番にお話しします。冷静に「何を確認すればよいか」を整理します。
学校選択問題とは何か|令和9年度の23校
埼玉県の公立高校入試では、数学と英語に限って、2種類の問題が使われています。多くの高校が使う「共通問題」と、校長から届出のあった高校だけが使う「学校選択問題」です。国語・理科・社会は共通の問題です。
埼玉県教育委員会が2026年5月21日に発表した資料では、令和9年度は次の23校が学校選択問題を出題します。県は「一部に応用的な内容を含む学力検査問題」と説明しています。
令和9年度に学校選択問題を出題する高校
- 浦和、浦和第一女子、浦和西、大宮、春日部
- 川口北、川越、川越女子、川越南、熊谷
- 熊谷女子、熊谷西、越ヶ谷、越谷北、所沢
- 所沢北、不動岡、和光国際、蕨
- さいたま市立浦和、さいたま市立浦和南、さいたま市立大宮北、川口市立
志望校がこの一覧に入っているかどうかが、最初の確認です。入っていなければ、共通問題が中心の対策で足ります。入っている場合は、共通問題より一段上の問題に慣れる必要があります。
共通問題と学校選択問題の違い(感覚の目安)
公式資料に詳しい形式の説明はないため、ここからは一般的な傾向の目安です。年度や学校によって変わりうるので、実際の問題で確かめてください。
英語
- 共通問題:語彙と文法の正確さで取れる問題が中心
- 学校選択問題:長めの文章を初見で読み、内容を整理する力が問われる傾向
数学
- 共通問題:典型的な解法を再現すれば解ける問題が多い
- 学校選択問題:図形と関数の融合など、条件を自分で整理する問題が増える傾向
つまり「典型問題を速く正確に解く」勉強だけでは、学校選択問題には届きにくい、ということです。逆に言えば、読む力と考える力は、時間をかけて育てるほど有利になります。
令和9年度入試で変わること|マークシート方式の導入
令和9年度(2027年2月)の入試から、学力検査の解答方法にマークシート方式が導入されます。得点に換算すると、マークシート方式の問題が約9割、記述式の問題が約1割とされています。この割合は2025年7月に県が公表しており、2026年5月の発表でも確認できます。
これまで学校選択問題は記述の比重が高いと言われてきましたが、令和9年度はこの前提が変わります。「記述力さえ鍛えれば安心」という従来の対策を、そのまま当てはめるのは適切ではありません。
ただし、マークシートになったから易しくなる、と決めつけるのも危険です。選択肢の問題でも、本文を正確に読んで根拠を探さなければ選べない問いは残ります。「問題の中身が変わる」というより「答え方が変わる」と受け止めて、次の点を準備しておくとよいでしょう。
マークシート化に向けて確認したいこと
- 県が公開しているサンプルの問題と解答用紙を一度は解いてみる
- 選択肢を消去していく方法だけに頼らず、本文や図から根拠を探す習慣をつける
- 時間内に処理する量が増えても、塗り間違いやずれがないよう、模試で解答用紙に慣れる
- 出題方針の発表は、県教育委員会のページで随時確認する
具体的な出題の形式(問題数や配点の配分)は、2026年11月4日に確認した県の資料には出ていません。確かでないことは決めつけず、県の発表を待って対策を調整する、という姿勢が現実的です。
北辰の偏差値と学校選択問題の対応力は別の力
北辰テストの偏差値が高いのに、学校選択問題の過去問でつまずく。これは決して珍しいことではありません。北辰テストは県内の多くの受験生が同じ問題を解くテストで、学校選択問題とは問われ方が同じではないからです。
北辰テストは、典型問題を速く正確に解く力が点数に表れやすいテストです。一方、学校選択問題の英語では長文の後半、数学では大問の後半に、初見の長い文章や見慣れない設定を読み解く力が求められます。典型問題の練習が中心だと、過去問を解いたときに時間切れになったり、大問の後半が手つかずになったりすることがあります。
このように、偏差値が足りていることと、学校選択問題に対応できることは、別々に確かめる必要があります。確かめるいちばん簡単な方法は、志望校の過去問を時間を計って1回解いてみることです。
→ 公立の過去問はいつ始める?学校選択問題は9月、標準問題は10月〜
内申点と時間の取り合いになる
学校選択問題の準備で見落としやすいのが、内申点との時間の取り合いです。公立入試では、調査書の「各教科の学習の記録」(9教科の5段階評定)が使われます。学年ごとの比率は学校によって違うため、志望校の選抜実施内容で確かめる必要があります。
中3の2学期の定期テストと提出物は、評定に直結します。ここで学校選択問題の演習に時間をとられすぎると、音楽・美術・保健体育・技術家庭といった副教科の評価が下がり、思わぬところで差がつくことがあります。
注意したいのは、過去問演習に力を入れるあまり、定期テスト前の勉強が後回しになる流れです。副教科の評定が思うように伸びないまま、2学期末の通知表を見て「内申は大丈夫と思っていた」と気づくことになりかねません。
防ぐ方法は単純です。定期テストの勉強時間を先に確保し、その残りで過去問演習の計画を立てること。提出物や小テストも計画に入れておきます。
私立の併願校で確約を考える場合は、北辰テストの偏差値や内申点の基準を満たす必要があり、その確認も同じ時期に重なります。学校ごとの基準は公表の有無が分かれるため、個別相談で確かめるのが基本です。
→ 確約の基準は下がらない?少子化でも私立が強気な3つの背景
こうして、公立の学校選択問題、内申点、私立の併願校の準備と、中3の秋はやることが重なります。
学年ごとの準備の目安
ここからは、いつ何をするかの目安です。これは公式の基準ではなく、一般的な進め方の目安なので、お子さんの状況に合わせて調整してください。
中1〜中2前半:土台づくり
この時期は、学校選択問題という名前の勉強をする必要はありません。土台になるのは次の習慣です。
- 少し硬めの文章(新聞のコラムや教科書以外の読み物)を読む習慣をつける
- 数学は、解き方を覚えるだけでなく「なぜその解き方になるのか」を自分の言葉で説明できるようにする
- 提出物や授業態度など、内申点の基本を落とさない
中2の夏〜冬:違いを体感する
志望校が学校選択問題の対象校なら、この時期に過去問や類似問題に少しずつ触れます。目的は得点ではなく、共通問題との違いを体感することです。いきなり時間を計って本番形式で解く必要はありません。
令和9年度(2027年)の入試を受ける学年は中3で、この段階はすでに過ぎています。中2のお子さんは令和10年度の入試になるので、県の発表を確認しながら進めてください。
中3の4月〜9月:現在地を知る
- 北辰テストで自分の位置を確かめつつ、志望校の過去問を定期的に解く
- 解いた結果から、英語と数学のどこで時間を失っているかを記録する
- 私立併願校の確約の条件を確認し、必要な北辰テストの受験計画を立てる
中3の10月〜2月:仕上げ
- 2学期の定期テストと提出物を最優先で確保する
- 過去問演習を本格化し、時間配分の練習をする
- マークシートの解答用紙に慣れる
- 2月25日の学力検査に向けて、体調管理と最終調整をする
令和9年度の日程は、学力検査が2027年2月25日(木)、面接が2月26日(金)、追検査が3月2日(火)、入学許可候補者発表が3月5日(金)と、県が発表しています。2学期の定期テストが終わったあと、2月25日の学力検査までを、過去問演習と体調管理の計画に分けて組み立てます。
中3の秋から始めるなら|取れる点を増やす優先順位
すでに中3の秋で、学校選択問題の準備がまだという場合でも、あきらめる必要はありません。ただし、全部を完璧にしようとせず、優先順位を決めます。
まず確認すること
- 志望校が学校選択問題の対象校か(上の23校の一覧)
- 志望校の過去問で、いま何点取れるか
- 得点を落としているのは「時間切れ」か「問題が分からない」か
英語
長文を読むスピードそのものを短期間で大きく上げるのは難しいものです。まずは、設問と本文の対応する場所を素早く見つける手順を固めると、効果が出やすくなります。大問ごとに時間を区切って解き、どこで止まるかを確かめてください。
数学
大問の最初の小問は、設定の確認や基本的な計算で取りやすい問題です。まずここを着実に取り切る練習をします。後半の応用問題で何点を狙うかは、志望校の合格に必要な得点や、現在の力と相談して決めます。上位校ほど応用問題まで取ることが求められやすく、余裕を持って捨てられる問題は少なくなります。
志望校の見直しも選択肢に入れる
これは気持ちのよい話ではありませんが、残りの時間と現在の得点を比べて、志望校を見直す選択肢も持っておいてください。見直すかどうかは、過去問の得点、内申点、北辰テストの結果、お子さんの意向を合わせて判断することです。担任や塾の先生に、同じ資料を見せて相談するのが確実です。
よくある失敗と、塾選びで確認したいこと
よくある失敗
- 共通問題の過去問だけで演習を終えて、学校選択問題との難しさの差に気づかない
- 北辰テストの偏差値に安心して、読解力や考える力を後回しにする
- 中3になってから慌てて内申点の対策を始める
- 塾のカリキュラムが学校選択問題に合っているかを確かめずに入塾する
最後の項目は見落とされがちです。塾によっては、学校選択問題の対象校向けの専用クラスがない場合があります。体験授業や面談の際に、次のことを聞いてみてください。
塾に確認したいこと
- 学校選択問題向けのクラスや教材はあるか
- 志望校の過去問を、授業の中でどう扱うか
- マークシート方式への対応を、どう考えているか
- その校舎の、志望校への合格実績はどうか(人数だけでなく、母数や在籍期間も聞く)
お子さんの現在地と志望校の距離を、自分だけで判断するのは難しいものです。共働きで時間が限られているご家庭は、無理に全部を見守ろうとせず、役割を決めておくと続けやすくなります。
まとめ:学校選択問題は「早めに違いを知る」ことから
- 学校選択問題は、令和9年度は浦和・浦和一女・大宮など23校が数学と英語で出題する
- 令和9年度から解答方法にマークシート方式が入り、得点換算で約9割がマークシート、約1割が記述になる
- 北辰テストの偏差値と学校選択問題への対応力は別の力なので、過去問を1回解いて確かめる
- 準備は中2の夏から冬が目安。ただし定期テストと提出物を最優先にして、内申点を落とさない
- 中3の秋からなら、時間を失う場所を記録し、取れる問題を着実に取る練習に絞る
- 学力検査は2027年2月25日(木)。残りの期間で何ができるかを、現在の得点から考える
保護者の方がまずやることは三つです。志望校が23校に入っているかを確認する、志望校の過去問を時間を計って1回解く、県の発表をときどき確かめる。この三つから始めてみてください。
この記事で確認した資料
- 埼玉県「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜について」(2026年5月21日発表、2026年11月4日確認)
- 埼玉県「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜学力検査問題について」(2025年7月24日発表、2026年11月4日確認)
- 埼玉県「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜の日程について」(2025年5月22日発表、2026年11月4日確認)






