1:1:1。1:1:2。1:1:3。
この3つの数字の並びが、埼玉県の公立高校入試で、中1・中2の通知表がどれだけ入試に響くかを決めています。
「内申点は中3の成績だけで決まるんでしょう?」
「中1のころは遊び半分だったから、もう取り返せないですよね」
中1・中2の保護者の方にも、中3になってから初めて仕組みを知った保護者の方にも、出やすい疑問です。結論を先に言うと、県が公表している選抜の方針では、調査書の基本点は「中1・中2・中3それぞれの評定の合計」に学年ごとの比率をかけて計算します。中1・中2の通知表も、点数に入る仕組みです。ただし、比率は高校ごとに選ばれるため、「中1・中2が何割効くか」は志望校によって変わります。
この記事では、まず県の資料で確認できた調査書の計算のしくみを整理し、次に学年の比率を見るときの考え方、中1・中2の保護者が今から家庭でできること、外部の力を借りるか迷ったときの比べ方をまとめます。確認できなかった点は、はっきり「未確認」と書きます。
まず確認|埼玉の公立入試で調査書はどう点数になるのか
通知表の数字が入試でどう使われるかは、県教育委員会の「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施基本方針」に書かれています。県の資料で確認できた内容を、そのまま整理します。
調査書に載る成績は「9教科5段階の評定」が基本
調査書の記載項目は、「各教科の学習の記録」(9教科5段階の評定)と「総合的な学習の時間の記録」とされています。点数の計算に使う中心は、各教科の学習の記録(9教科5段階の評定)です。
つまり、点数の計算に使う中心は、通知表の9教科の数字です。ここは学年が変わっても同じ形で、1年・2年・3年の通知表にそれぞれ9教科の評定があります。
「評定の各学年別合計」は45点満点
9教科それぞれが5段階なので、1学年分の評定の合計は最大で45点です。県の資料には、この「評定の各学年別合計(9教科×5段階=45点満点)」に、学年ごとの比率をかけて足した数が「調査書の基本点」になると書かれています。
共通選抜の学年の比率は3つから選ぶ
県が定める方法で選抜する「共通選抜」では、各高校が学科・コースの特色に応じて、次の3つから学年の比率(1年:2年:3年)を選びます。
- 1:1:1(基本点は135点満点)
- 1:1:2(基本点は180点満点)
- 1:1:3(基本点は225点満点)
さらに、各高校は基本点を、200点・300点・400点のどれかに換算して「調査書の得点」にします。小数点以下が出たときは、小数第1位を四捨五入するのが原則です。
特色選抜は、学校が比率を決める
学校の特色に応じて実施できる「特色選抜」では、各学年の比率は学校が定めます。県の資料では、比率の数値は1以上の整数で、3学年の数値の合計は10を超えない範囲とされています。つまり、特色選抜では、共通選抜の3つの型とは別の比率になる学校もありえます。
ほかの資料との重さ
学力検査は、5教科で500点満点(各教科100点)です。面接は30点を基本点として、学校が1倍か2倍かを選びます(共通選抜の場合)。調査書の得点が200〜400点に換算されることを考えると、調査書は入試の総合点の中でかなり大きな割合を占めると言えます。
ここで注意が必要なのは、これがいま中3のお子さんが受ける令和9年度(2027年)入試の方針だという点です。いま中2のお子さんが受ける入試は令和10年度(学力検査は2028年2月29日)で、日程は県が2026年5月21日に発表しています。調査書の比率など選抜方法の詳しい内容がこの記事の方針と同じかどうかは、県の公式サイトで確かめてください。
学年の比率で、中1・中2の通知表は何割効くのか
比率の数字だけではピンとこないので、共通選抜の3つの型で、各学年が調査書の基本点に占める割合を計算してみます。割合は、比率の合計で割っただけの単純な計算です。
3つの型を割合に直すと
- 1:1:1の学校:中1・中2・中3がそれぞれ3分の1ずつ。中1と中2をあわせると全体の3分の2です
- 1:1:2の学校:中1が4分の1、中2が4分の1、中3が2分の1。中1と中2をあわせると半分です
- 1:1:3の学校:中1が5分の1、中2が5分の1、中3が5分の3。中1と中2をあわせると5分の2です
どの型を選んでも、中1・中2の通知表は、合計すると基本点の4割から3分の2を占める計算になります。中3の成績が一番重い型でも、中1・中2をあわせた分は小さくありません。
評定の合計が1点違うと、点数でどれくらい差が出るか
計算の目安として、評定の1学年分の合計が1点上がったときの調査書の得点の増え方を出してみます。県が示した範囲の中から、2つだけ例を挙げます。
- 1:1:1で基本点135点を200点に換算する学校なら、1点あたり約1.5点です(200÷135)
- 1:1:3で基本点225点を400点に換算する学校なら、中3の評定1点あたり約5.3点、中1・中2の評定1点あたり約1.8点です
換算の型は学校ごとに選ばれるので、これはあくまで計算上の目安です。志望する学校の実際の数字は、あとで説明する「選抜実施内容」で確認してください。それでも、通知表の「3」を「4」にした教科が3つあれば、評定の合計は3点変わるという計算になり、学力検査の500点満点の中でも無視できない差になりえます。
ここで押さえたいのは、「終わった学年の通知表は動かせない」ことと、「これから終わる学年の通知表は動かせる」ことです。評定が上がるかどうかは、お子さんの状況や学校の評価のしかたによって変わりますが、この2点は、1:1:1でも1:1:3でも、どの家庭にも共通しています。
中1・中2の親が知っておきたい5つの注意点
仕組みがわかったところで、中1・中2の保護者が誤解しやすい点を整理します。
注意点1:「中3の成績だけ」ではない
いちばん多い誤解がこれです。県の方針では、評定の学年別合計に比率をかけて足す形で、学年を分けて計算します。中3だけで決まる仕組みではありません。ただし、どの比率でも中3が一番重いか、中1・中2と同じ重さのどちらかです。中3で挽回する余地は、比率の面でも残されています。
注意点2:比率は志望校ごとに違う
共通選抜では3つの型、特色選抜では学校が定める比率です。同じ県内でも、志望校が違えば、中1・中2の重さも違います。「埼玉県の公立はこうだ」と一括りにして覚えず、志望校ごとに確認する必要があります。
注意点3:学力検査と調査書の重さも学校ごとに違う
共通選抜では調査書が200・300・400点のどれかに換算されます。特色選抜では、調査書と面接の得点の合計が、学力検査の基本点(500点)の1.5倍を超えない範囲で、学校が定めます。調査書の重さは、学校によって幅があります。
注意点4:令和10年度以降の調査書の扱いは、県の公式サイトで確かめる
いま中1・中2のお子さんが受ける入試について、調査書の比率の決まり方は、この記事では確認できていません。令和9年度の方針は参考になりますが、同じとは限りません。この記事の内容を「うちの子の入試にもそのまま当てはまる」と決めつけず、県の公式サイトの入学者選抜の情報で確認してください。
注意点5:通知表の数字は「テストの点」だけで決まらない
評定は、定期テストの点だけでなく、提出物や授業中の取り組みなども含めて学校が評価します。評価のしかたは学校や先生によって違いがあります。点数が取れているのに評定が伸びない教科があるなら、何が評価に入っているのかを、先生に聞いて確かめておくのが近道です。
→ 通知表に「2」がある中3へ|2学期でできることと確約への影響
志望校の「選抜実施内容」の探し方
県は、各高校が調査書の扱い(学年の比率や換算の型)などを定めた「選抜実施内容」を公表しています。令和9年度分は、県のページに掲載されています(確定版・2026年9月16日掲載)。
- 県の「各高等学校の選抜実施内容(確定版)」のページを開く
- 志望しそうな高校の名前(学科・コース別に分かれています)から、その学校のPDFを開く
- 調査書の欄にある「各学年の比率」と「換算した得点」を確認する
この記事では、このページの構成までは確認しましたが、個別の学校のPDFの中身までは読んでいません。学校ごとの比率の数字は、ご自分で志望校のPDFを開いて確かめてください。いま中1・中2のお子さんの場合は、受検する年度の分が公表されたときに、同じ手順で確かめます。
中1・中2のうちに、家庭でできる5つのこと
比率がどうであれ、通知表の数字は「これから終わる学年」でしか動かせません。中1・中2の保護者が、家庭でできることを5つに絞ります。
1:通知表を学期ごとに並べて、動いた教科を見る
中1の1学期から今までの通知表の9教科の数字を、1枚の紙に並べます。上がった教科、下がった教科、ずっと同じ教科が見えてきます。「ずっと同じ」の教科が、実は伸ばしやすい場所だったりします。
2:評定が下がった教科は、理由を「テスト」と「それ以外」に分ける
定期テストの点が低かったのか、提出物の遅れや欠けが響いたのか。どちらかで、打つ手が変わります。テストの点なら単元ごとの穴を探し、提出物なら出し方の習慣を直します。
3:提出物は「期限の前日」ではなく「配られた日」に予定を入れる
提出物は、評定を左右しやすい部分です。ワークや課題は、配られた日にカレンダーへ提出日を書き、いつやるかを決めておくだけで、出し忘れが大きく減ります。
4:授業中の取り組みを、お子さんに聞いてみる
「先生に質問した?」「ノートは取っている?」と責める形で聞くのではなく、「どの授業が一番わかりやすい?」と、答えやすい聞き方で話を聞くと、状況が見えてきます。
5:志望校が決まっていなくても、選抜の仕組みだけは知っておく
志望校を決める必要はありません。ただ、調査書が点数にどう入るかの仕組みを親が知っているだけで、「この学年のこの教科を、どう扱うか」の判断がしやすくなります。
→ 中2の冬から始める高校受験準備|埼玉の親が今知っておくこと
ここまでの5つは、家庭で十分に始められます。ただし、評定が下がった理由がテストの点なのか、提出物なのか、授業中の取り組みなのかを、親だけで切り分けるのは難しい場合があります。とくに、親が勉強を見られない教科では、つまずきの場所を特定するところで止まってしまいがちです。評定を上げるための手が家庭内で足りなくなったときは、第三者の目を入れる選択肢もあります。通知表の数字は学年が終わると動かせない以上、残りの期間で手を打てる範囲を知っておくことが大事です。
外部の力を借りるか迷ったとき|塾・個別指導・家庭教師の見方
通知表の評定を上げたい場合、「集団塾」「個別指導」「家庭教師」のどれが合うかは、お子さんの状況で変わります。特定の塾や会社を勧める意図はありません。選ぶときの見方だけを示します。
どんな場合に、外部の力を借りる価値があるか
- 学校の授業で止まっている単元がある:前の学年の内容にさかのぼって教えてもらえる形が合います
- 定期テストの点が安定しない:テスト前の計画づくりまで見てくれる形が合います
- 提出物や学習の習慣が崩れている:毎週決まった時間に、人と会う(または画面越しに話す)ことが、習慣の支えになります
- 親が教えると、感情的になってしまう:第三者が入ることで、親子の関係が保ちやすくなる場合があります
3つの形の大まかな違い
- 集団授業の塾:決まった時間割で授業を受ける。学校の進度とは別に進むことが多く、つまずきの細かい穴までは拾いにくい場合がある
- 個別指導塾:評定が下がった教科の、止まっている単元だけを選んで進めやすい。講師が1〜数人の生徒を同時に見る形で、担当変更の有無は教室ごとに差がある
- 家庭教師:自宅やオンラインで1対1。苦手の特定と、学校の評価(提出物・テスト範囲)に合わせた計画を作りやすい。講師との相性が合わないと続かない
比べるときの項目は、費用の金額ではなく、次のような「中身」で見ます。費用は会社によって大きく違うので、この記事では金額を挙げません。
- 月謝のほかにかかる費用(入会金・教材費・交通費・季節講習)
- 定期テストの対策や、提出物の管理まで見てもらえるか
- 前の学年にさかのぼって教えてもらえるか
- 講師を選べるか、合わなかったときに交代できるか
- 部活や習い事と両立できる時間帯か
- 体験授業や面談の条件(有料か無料か、何回まで受けられるか)
提出物の管理や定期テストの対策まで見てもらえるかは、1社の説明だけでは判断しにくい項目です。資料を机に並べて、評定を上げたい教科に合わせて、同じ項目で見ていきます。
評定が下がった教科を見てもらう場合に、家庭教師と個別指導塾のどちらが合うかを詳しく比べたいときは、こちらの記事が参考になります。
→ 家庭教師と個別指導塾の違い|埼玉の中3の親が比べる7項目
やらなくていいこと
調査書の仕組みを知ると、「全教科で評定を上げなければ」と焦る方がいます。あえて、やらなくていいことも挙げておきます。
- すべての教科で一気に評定を上げようとすること。まず、上げやすい教科から手をつけるほうが続きます
- 終わった学年の通知表を、お子さんに責める材料として使うこと。動かせない数字を責めても、これからの行動は変わりません
- 志望校が決まる前に、比率だけで学校を絞ること。比率は判断材料の一つで、学校選びの決め手ではありません
- 他の子の通知表と比べること。評価のしかたは学校や先生で違うので、数字の比較はあまり意味を持ちません
親が落ち着いて「これから終わる学年の通知表を、一つずつ良くしていこう」という姿勢でいるほうが、お子さんも動きやすくなります。
通知表の一覧づくりから、春の志望校確認まで
最後に、春までの動きを時期ごとにまとめます。お子さんの学校の予定表に合わせて、時期は調整してください。
最初にやること
- 中1からの通知表の9教科の数字を、1枚の紙に書き写す
- 県の「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施基本方針」を開き、調査書の欄を一度読む
- 評定が下がっている教科があれば、理由が「テスト」か「それ以外」かをお子さんに聞く
2学期のうちにやること
- 提出物の期限を、配られた日にカレンダーへ書く習慣をつくる
- テストで点が取れていない教科の、間違いを直したノートを見る
- 外部の力を借りる場合は、評定が下がった教科の一覧を手元に置き、資料を2〜3社分取り寄せて、同じ項目で比べる
春までにやること
- 学年末の通知表を、中1からの一覧に書き足す
- 県の公式サイトで、受検する年度の選抜の制度が公表されていないか確認する
- 志望校が決まったら、その学校の「選抜実施内容」で、調査書の比率を確認する
終わった学年の通知表は動かせない|手を打つのは学年末まで
「結局、いつから動けばいいのか」と思われたかもしれません。答えは、これから終わる学年の通知表に間に合う時期に、最初の一歩を踏み出すことです。
今年度の中3の学力検査は2027年2月25日で、11月6日の時点で3か月半ほど先です。中3の保護者の方は、中1・中2の数字はすでに確定していて、残る中3の2学期と3学期の数字に集中することになります。一方、いま中1・中2のお子さんは、今の学年末までと、新しい学年の1年間という時間が、まだ手つかずで残っています。
外部の力を借りるかどうかは、資料を見てから決めても遅くありません。まず比べる材料をそろえることが、焦らずに判断する近道です。
まとめ:中1・中2の通知表も、調査書の点数に入る
- 県の方針では、調査書の基本点は、9教科5段階の「評定の各学年別合計(45点満点)」に学年ごとの比率をかけて足して計算します
- 共通選抜の比率(1年:2年:3年)は、1:1:1、1:1:2、1:1:3から各高校が選びます。特色選抜は、学校が定めます
- 中1と中2をあわせた割合は、共通選抜の3つの型で、基本点のおよそ4割から3分の2になります
- 比率や換算の点数は、志望校の「選抜実施内容」で確認できます。令和10年度以降の制度は、県の公式サイトで確認してください
- 通知表の数字は、学年が終わると動かせません。これから終わる学年の評定に、提出物・テスト・授業中の取り組みの順で手を打ちます
最初の一歩として、中1からの通知表を並べて、9教科の数字を紙に書き写してみてください。それだけで、「どの教科が動かせそうか」が見えてきます。
この記事で確認した資料






