確約=絶対合格ではない?埼玉県の私立高校が隠す不合格ケース

秋になると、「うちの子、確約もらえたので一安心です」という保護者の声をよく耳にします。

お仕事や家事で忙しい毎日の中、やっと得た「合格の約束」に胸をなでおろした方も多いのではないでしょうか。

その安心感、とてもよくわかります。

ただ、塾講師や家庭教師として、そして今は個人で家庭教師として多くのご家庭を見てきた立場から、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。

確約は「絶対合格」ではありません。

「確約をもらっていたのに、ふたを開けたら不合格だった」という悲鳴は、毎年のように上がっています。

確約はあくまで条件付きの約束であり、その「見落としがちな条件」を保護者にきちんと説明してくれる高校は、実はそれほど多くないのです。

今回は、確約が固まっていく実際の流れを踏まえたうえで、確約があっても不合格になってしまう以下の5つの具体的なケースを整理していきます。

  • ケース1:入試当日の態度に問題がある場合(白紙・遅刻など)
  • ケース2:二学期の内申点が確約基準を大きく下回った場合
  • ケース3:確約後の素行に問題が生じた場合
  • ケース4:単願確約の約束を破ってしまった場合(他校への重複出願)
  • ケース5:出席日数が確約基準に含まれている場合(見落とし注意)

そもそも「確約」とは何なのか

まず前提を確認しておきます。

確約とは、埼玉県内の私立高校で広く行われている「個別相談会で北辰テストの偏差値や内申点などの基準を満たせば、合格の約束をもらえる」という慣習のことです。

大切なのは、これが私立高校側が公式に認めている制度ではないという点です。

学校のパンフレットや募集要項に「確約」という言葉が載ることはまずありません。

これには理由があります。

かつては中学校の先生が北辰テストの成績などをもとに私立高校と直接やり取りをして、合格の見通しをつけていました。

しかし国からの通達により、中学校と私立高校が直接連絡を取り合うことや、模試の結果を合否判定に使うことが認められなくなりました。

そこで生まれたのが、生徒本人と保護者が直接高校の個別相談会に出向き、成績を見せて合格の可能性を確認するという今の仕組みです。

こうした経緯があるため、私立高校の担当者は「確約」という言葉自体を避け、代わりに「安心してください」「合格圏です」「A判定です」「このままの成績なら大丈夫です」といった、やや遠回しな表現を使うのが一般的です。

つまり確約は、学校・保護者・塾の三者のあいだで交わされる、いわば「公然の約束事」であって、法的な拘束力のある契約書のようなものではないのです。

この前提を押さえたうえで、次に確約が固まっていく実際の流れを見ていきましょう。

確約が固まっていくまでの流れを詳しく知っておく

「確約は9月ごろの個別相談会で一発でもらえるもの」というイメージを持っている方も多いのですが、実際にはもう少し段階的なプロセスになっています。

1. 夏の学校説明会で基準の目安が示される

早い学校では7月ごろから、学校説明会や合同進学フェアで「今年度の確約基準」の目安が案内され始めます。

ここで示される数字は前年の実績をもとに毎年少しずつ調整されるため、古い年度の情報を鵜呑みにせず、その年の説明会で確認することが欠かせません。

2. 9月以降、個別相談会で北辰テストの成績を提示する

多くの学校では、7月以降の北辰テスト2回分の偏差値(多くは「2回とも基準以上」を満たす方式で、「2回の平均」で判定する学校は一部の例外です)と、その時点までの内申点をもとに、個別相談会で合格の見通しを確認します。

このとき基準にわずかに届かなかった場合でも、そこで終わりではありません。

「次の北辰テストで偏差値〇〇を1回取ってください」「2学期の通知表でこの教科をあと1つ上げてください」といった、具体的な追加条件を提示してくれる学校が多いという点は、保護者にとって心強い情報だと思います。

数値だけで判断されるわけではなく、部活動での実績や英検・漢検などの取得級、生徒会活動といった要素を加点材料として考慮してくれる学校もあります。

基準にあと一歩届かないからといって、早々に志望校をあきらめる必要はありません。

3. 12月、2学期の通知表を踏まえた最終相談

学校によっては、3年生2学期の通知表が生徒に渡される12月下旬のタイミングで、最終の個別相談会が設けられています。

確約は「夏〜秋の見込みで決まる話」ではなく、冬の通知表が出そろって初めて最終的に固まるものだと理解しておくと、後になって慌てずに済みます。

この最終確認で何が起こりうるかは、次の「ケース2」で詳しく取り上げます。

チェックすべきこと
  • 志望する私立高校の確約基準を、その年の学校説明会で直接確認したか(前年度の情報を鵜呑みにしていないか)
  • 基準にわずかに届かない場合の追加条件(北辰の再挑戦、内申点の上乗せなど)を確認したか
  • 12月下旬前後に最終の個別相談会が設定されているかどうかを、事前に把握しているか

学校ごとに運用がかなり違うという事実

もうひとつ、あまり知られていないポイントとして、確約の判定方法は学校によってかなり幅があるということが挙げられます。

  • 内申点について、3科・5科・9科のいずれか1つが基準を満たせばよい学校が一般的な一方で、3科・5科・9科すべての基準を満たすことを求める学校もあります
  • 北辰テストの偏差値について、2回とも基準を超える方式が主流ですが、2回の平均で判定する学校も一部存在します
  • 同じ学校の中でも、単願は併願より基準がやや緩やか(偏差値換算で1〜2ポイント程度低く設定されることが多い)に設定される傾向があります
  • コースが複数ある学校では、上位コースほど基準が高く、コースごとに数値がまったく異なります

つまり「知り合いの子がA高校で確約をもらえたから、うちの子も同じくらいの成績で大丈夫」とは限らないのです。

同じA高校でも、コースが違えば必要な内申点も偏差値もまったく別物になります。

チェックすべきこと
  • 志望校の確約基準が「いずれか1科目区分」なのか「全科目区分」なのかを確認したか
  • 単願と併願で基準が違うことを理解したうえで、どちらで相談に行くか決めているか
  • コース別の基準を、志望するコースにあわせて正確に把握しているか

ケース1:入試当日の態度に問題がある場合(白紙・遅刻など)

これは確約制度において、最も明確に「不合格になる」と言われているケースです。

具体的には、次のような行為が該当します。

  • 答案を白紙のまま提出する
  • 試験中に居眠りをする
  • カンニングなど不正行為を行う
  • 試験会場や周辺で他の受験生の迷惑になる行動をとる

これらは複数の私立高校関係者や進学情報サイトで共通して指摘されている条件で、確約の有無にかかわらず、入試を「まともに受ける」という最低限の姿勢が前提になっているということです。

また、公表はされていないものの、確約がある受験生にも当日の得点にごく低い足切りラインを設けている学校があるという指摘も見られます。確約なしの受験生よりは低く設定されているのが一般的ですが、「何点でも合格」というわけではないと理解しておくほうが安全です。

裏を返せば、普段通りに、真剣に試験へ向き合いさえすれば、まず問題にはなりません。

ただし「普段通りに」という部分が実は落とし穴になります。

確約をもらった安心感から当日の緊張感が抜けてしまい、遅刻ぎりぎりに会場入りしたり、持ち物を忘れて慌てたりする生徒を、私は実際に何人も見てきました。

確約はプレッシャーを軽くしてくれるものですが、「気を抜いていい」という意味では決してないということを、受験当日が近づいたら改めて子どもと確認しておきたいところです。

チェックすべきこと
  • 確約がある場合でも「当日は普通に受験する」という基本姿勢を子どもと共有できているか
  • 試験当日の持ち物・集合時間・服装(多くの学校で中学校の制服着用が原則)を前日までに確認したか
  • 「確約があるから多少ミスしても大丈夫」という油断が子どもの中に生まれていないか

ケース2:二学期の内申点が確約基準を大きく下回った場合

これは保護者の間でも意外と知られていない、しかし実際に起こりうるケースです。

先ほど触れた通り、確約は12月の最終相談で2学期の内申点が確定して初めて固まるという性質を持っています。

つまり、夏や初秋の個別相談会で確約の見通しを得られたとしても、それはあくまでその時点での成績を前提にした「見込み」にすぎません。

その後、2学期の成績が想定より大きく下がってしまうと、確約の前提条件そのものが崩れることになります。

進学相談の掲示板では、「単願確約をとって安心していたところ、3年次の成績に1がついてしまい、推薦基準を満たさないと学校から連絡があった」という声が、受験シーズンのたびに必ずといっていいほど上がります。

この点について、私立高校側の対応は学校によってかなり差があります。

多少の下降であれば大目に見てもらえることもありますが、下がり幅が大きい場合は、個別相談会でのやり直しを求められたり、確約自体が白紙に戻ったりする可能性があります。

チェックすべきこと
  • 確約の基準が「いつの時点の内申点」を指しているのか、個別相談会の場で確認したか
  • 2学期の成績が確約時点より大きく下がった場合の対応(再相談の要否など)を、確約をもらった段階で高校に聞いてあるか
  • 確約をもらった後も、2学期の定期テスト・提出物への取り組みを緩めていないか

ケース3:確約後の素行に問題が生じた場合

確約は成績面だけの約束ではありません。

確約をもらったあとに、学校生活の中で素行面の問題(トラブルや大きな規律違反など)が生じた場合、高校側がその生徒を「合格させるにふさわしくない」と判断する可能性があるという指摘も、複数の情報源で共通して見られます。

これは中学校側から私立高校へ直接情報が伝わる、という意味ではありません(前述の通り、埼玉県では中学校と私立高校の直接のやり取りは基本的に行われていません)。

むしろ、入試当日の受験生本人の言動や態度、試験会場までの移動中の振る舞いなど、高校側が実際に目にする範囲での印象が影響しうる、という趣旨で語られることが多いポイントです。

「確約さえもらえば、あとは何をしても大丈夫」ではなく、確約は入試までの生活態度も含めた総合的な信頼のうえに成り立っていると捉えておくのが安全です。

チェックすべきこと
  • 確約後も、学校生活・提出物・生活態度に大きな乱れが出ていないか
  • 個別相談会や試験当日、受験生本人の言動・服装・持ち物のマナーに問題がないか
  • 「確約=無条件のフリーパス」という誤解が子ども自身の中に生まれていないか

ケース4:単願確約の約束を破ってしまった場合(他校への重複出願)

確約には、大きく分けて単願確約併願確約の2種類があります。

  • 単願確約:合格したら必ずその高校に進学することを前提にした確約(基準はやや緩やかに設定される傾向)
  • 併願確約:公立高校や他の私立高校への進学の可能性を残したままもらう確約(単願より基準が厳しい傾向)

単願確約は、「この高校に進学することを約束する代わりに、合格を約束してもらう」という、いわば双方向の約束です。

そのため、単願確約をもらったにもかかわらず、実際には別の私立高校に単願で出願してしまう、といった約束違反があった場合、高校側との信頼関係が崩れ、確約が成立しなくなる可能性があります。

併願で確約をいくつ持っていても基本的に問題はありませんが、単願確約だけは「その1校に進学する」という前提がセットになっていることを、家族の中で正確に共有しておく必要があります。

チェックすべきこと
  • 取っている確約が「単願」なのか「併願」なのか、1校ごとに正確に把握しているか
  • 単願確約をもらった高校以外を、単願扱いで重ねて受験していないか
  • 家族の中で「単願確約=進学する約束」という認識にズレがないか

ケース5:出席日数が確約基準に含まれている場合(見落とし注意)

確約の基準というと、内申点や北辰テストの偏差値にばかり目が行きがちですが、欠席日数を基準に含めている私立高校も少なくありません。

「偏差値も内申点も基準を満たしているのに、欠席日数が基準を超えていたために確約がもらえなかった」という相談は、保護者向けの相談掲示板でも毎年繰り返し見られるパターンです。

学校によって「3年間で15日以内」「7日以内」など基準はさまざまで、統一された数字があるわけではありません。

体調不良や行事による欠席は珍しくないため、「うちは大丈夫」と思い込まず、通知表に記載された出席日数を早めに確認しておくことが大切です。

もし基準に近い、あるいは超えてしまっている場合は、個別相談会の場で正直に相談し、当日の試験結果次第でどう扱われるのかを確認しておくと安心です。

チェックすべきこと
  • 通知表に記載された3年間の欠席日数を、個別相談会の前に確認したか
  • 志望する私立高校の確約基準に、出席日数の条件が含まれているかを確認したか
  • 基準ぎりぎり、または超えている場合の対応方針を高校に相談してあるか

なぜ私立高校は、こうした条件をはっきり説明してくれないのか

ここまで見てきたように、確約には見えにくい条件がいくつも存在します。

にもかかわらず、多くの私立高校がこれを積極的に説明してくれないのには、理由があります。

ひとつは、そもそも確約自体が公式な制度ではなく、「確約」という言葉を使うこと自体を学校側が避けているという事情です。

明文化されていないルールについて、学校側から細かい例外条件まで自主的に説明することは、実務上あまり期待できません。

もうひとつは、2025年に、一部の私立高校が北辰テストの偏差値を基準に高額な奨学金の支給を事実上約束していたことが報道をきっかけに明らかになり、埼玉県が県内の私立高校を対象に実態調査を行ったという経緯があるという点です。

調査の結果、特待生の候補者決定に業者テストの結果を使っていた高校が9校あったことが分かり、県は22日付で全私立高校長あてに改善を促す通知を送付しています。

そもそも、業者テストの結果を入学者選抜の資料として使うことは、1993年に当時の文部省(現在の文部科学省)が出した通知によって禁じられており、確約という慣行そのものも、この方針とは本来相容れない面があります。

こうした背景もあり、私立高校側としても、確約の運用について踏み込んだ説明をしにくい空気があるのではないかと感じています。

だからこそ、保護者の側から積極的に質問し、確認しておく姿勢が欠かせません。

保護者にできること

最後に、ここまでの内容を踏まえて、確約をもらった後に保護者ができることを整理します。

  • 確約が「単願」か「併願」か、対象となる試験日はいつかを書面またはメモで残しておく
  • 確約の基準となった内申点・偏差値が、いつの時点のものかを確認しておく
  • 2学期の成績が下がった場合の対応方針を、確約時点で高校に聞いておく
  • 出席日数の基準があるかどうかを確認し、通知表の記録と照らし合わせておく
  • 12月の最終相談会の有無と、そのタイミングを事前にカレンダーに入れておく
  • 「確約があるから大丈夫」という空気が、子ども自身の油断につながっていないか、入試直前に改めて確認する

どれも特別なことではなく、個別相談会や電話での問い合わせで確認できる内容ばかりです。

おわりに

確約は、埼玉県の受験生と保護者にとって、大きな支えになる仕組みです。

ただ、それは「何もしなくても合格する魔法の切符」ではなく、条件を満たし続けることで成り立つ約束だということを、忘れずにいたいところです。

わからないことは高校に直接確認するのが一番確実です。

とはいえ、「こんな初歩的なことを聞いて、心証を悪くしないだろうか」「成績が下がってしまったけれど、どう切り出せばいいかわからない」と、直接聞くこと自体に迷ってしまう保護者の方も少なくありません。

「うちの子の確約、本当にこのままで大丈夫なのかな」

「2学期の成績、少し下がってきているけど、高校にどう相談すればいいんだろう」

そんな不安が少しでも頭をよぎった方は、一人で抱え込まず、埼玉県の高校受験に詳しい家庭教師の合格王の無料カウンセリングをうけてみるのもひとつの方法です。