「塾から追加講座の案内が来たけれど、これは払うべき金額なのだろうか」「子どもの前で、塾代の話をしていいのかわからない」。中3の秋から冬にかけては、こうした迷いを抱えるご家庭が少なくありません。
仕事や家事に追われながら、塾から届く案内を一つひとつ吟味するのは簡単ではありません。その場で決めきれず、迷ったままになってしまうのは、親御さんの落ち度ではありません。
中3の塾代の「相場」は、塾やコースで大きく違うため、平均の数字だけでは判断できません。いちばん確かな物差しは、いま通っている塾の料金表と案内を1年分足し上げた「ご家庭の見込み総額」です。そして、その金額と使い道は、春・秋・冬の3つの時期に、お子さんと一緒に確認しておくと迷いにくくなります。
この記事では、文部科学省の統計で分かる補助学習費の数字と、ご家庭で出せる見込み総額を分けたうえで、塾代の話を春・秋・冬の3つの時期に子どもへどう伝えるかを整理します。
中3の塾代の相場を、公的な数字と家庭の数字に分けて考える
「相場はいくらですか」というご質問は多いのですが、お答えが難しいのが正直なところです。通う塾の種類(集団塾・個別指導・家庭教師・通信教育)、週に何回通うか、講習をどこまで取るか、で金額が大きく変わるからです。
そこでまず、公的な統計から分かることを確認します。
文部科学省の調査で分かること
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」は、保護者が1年間に支出した、子ども一人あたりの教育費の平均を調べたものです。公立中学校についての数字は、次のとおりです(令和8年1月公表の訂正版による)。
- 学習費の総額:約54万2千円(学校教育費、給食費、学校外活動費の合計)
- 学校外活動費:約35万6千円
- そのうち補助学習費:約27万2千円(学習塾、家庭教師、通信教育、参考書などにかかる費用)
これは中学1年から3年までを平均した数字で、塾に通っていない家庭も含まれています。公立中学校では、学校外活動費のなかで補助学習費がもっとも大きな割合を占めています。
中3だけの数字はこの資料では確認していませんが、受験の年は講習や模試が増えるため、平均より多くなる家庭が多いと考えるのが自然です。これは推測で、統計の数字ではありません。
統計の平均を、そのまま自分の家庭に当てはめない
平均は、塾に通っていない家庭や、通信教育だけの家庭を含んだ数字です。大手の集団塾に週2〜3回通い、季節講習もすべて受ける場合は、この平均を大きく上回ることもあります。逆に、苦手な1科目だけを個別に頼む場合は、下回ることもあります。
ですから、平均は「全国でこのくらいかかっている家庭がある」という目安にとどめてください。ご家庭の判断には、次の節の「見込み総額」を使います。
ご家庭の「見込み総額」を自分で出す手順
塾代の不安の多くは、「全部でいくらになるのかが見えない」ことから来ています。月謝は分かっていても、講習や教材費、模試の費用が後から加わるため、年間の合計を把握していない家庭は少なくありません。
次の手順で、お手元の資料から合計を出してみてください。
見込み総額を出すためのチェックリスト
- 月謝:通常授業の月額に、通う月数(4月から翌年2月または3月まで)をかける
- 入会金、施設費、教材費、システム利用料など、月謝以外に毎月・毎年かかる費用
- 夏期講習、冬期講習、正月などの特訓の費用(案内が出ていない分は、前年度の案内を塾に尋ねる)
- 模試の受験料(北辰テストなど)と、塾経由で申し込む場合の手数料の有無
- 選抜クラスや特別講座など、通常授業に追加する講座の費用
- 通塾の交通費、お弁当や夕食代など、塾に通うことで増える周辺の費用
わからない項目は、塾に「年間でかかる費用の一覧をいただけますか」とたずねて構いません。きちんとした塾であれば、項目ごとに答えてくれるはずです。
一覧がもらえたら、月ごとの支出に直してみてください。夏と冬に支出が集中する家庭が多いので、その月に家計がどうなるかも見えてきます。
月ごとの支出に直して、家計との関係を見る
年間の合計だけを見ると、大きな数字に驚いてしまいがちです。月ごとに並べ直すと、「毎月の月謝は無理なく払えるが、夏と冬は負担が重くなる」「模試の月は出費が重なる」といった、家計との関係が見えてきます。
夏と冬の講習の時期に出費が集中するなら、あらかじめその月のために積み立てておく方法もあります。突然の請求に慌てないことが、お子さんの前で落ち着いて話すための土台になります。
もし見込み総額が家計の想定を超えているなら、その事実をそのまま塾に相談して構いません。通う回数や科目を絞る、講習を一部にするなど、予算の中で組み立てられる案を出してくれる塾もあります。無理をして払い続けるより、早めに相談したほうが、結果的に選択肢が広がります。
見込み総額と、ほかの方法を比べる
合計が出たら、同じ科目・同じ時間数で、ほかの方法ならいくらになるかを大まかに比べてみてください。個別指導や家庭教師は、1コマあたりの料金は高めでも、必要な科目と回数だけに絞れば総額が変わることがあります。
比べるときの視点は、次の記事にまとめています。
→ 家庭教師と個別指導塾の違い|埼玉の中3の親が比べる7項目
なぜ塾代の話を、子どもと共有しておいたほうがよいのか
「お金の話は子どもにするべきではない」という考え方は、日本の家庭では根強いものです。その気持ちは自然なものですし、金額を細かく伝えることが、すべてのお子さんに合うわけでもありません。
それでも、高校受験は、お子さんが「自分のためにお金が使われている」ことを初めて実感する機会になりえます。共有しておくよい点は、主に3つあります。
- 面談で追加講座の案内を受けたとき、親子で「本当に必要か」を一緒に考えやすくなる
- お子さん自身が、足りない科目や不安な点を言葉にしやすくなる
- 後から金額を知ったときの驚きや、「聞いていなかった」という気持ちを避けられる
面談の場で、塾から追加の提案を受けることがあります。そのとき、子どもが提案の意味を知らないまま黙っていると、親も子もその場の流れで「お願いします」と答えやすくなります。事前に話し合ってあれば、「持ち帰って相談します」と落ち着いて返せます。
塾側の提案が悪いというわけではありません。その時期に必要な学習を提案するのが塾の役目です。ただ、提案が目の前のお子さんに合っているかどうかは、ご家庭で確かめるものです。
塾代を子どもに伝える3つのタイミング
お金の話を切り出す時期として、特に向いている場面は次の3つです。
1. 受験生になる春(中3のスタート時)
この時期にしたいのは、細かい金額の説明ではなく、「今年は塾や模試にお金がかかる年で、途中で追加の案内が来ることもある」という見通しの共有です。
「夏や冬に講習の案内が来るから、そのたびに一緒に考えよう」と、あらかじめ予告しておくと、後から金額の話が出ても、お子さんが身構えずに済みます。
見込み総額を出していれば、「だいたいこのくらいを考えているよ」と伝えることもできます。無理に数字を言う必要はありません。
2. 北辰テストの結果が出た秋(志望校を具体的に考える時期)
秋は、北辰テストなどの結果をもとに、志望校の候補を絞る時期です。ここで初めて、「目標と今の成績の距離」と「どの講座が必要か」を結びつけて考えられます。
確認したいのは、塾の提案が「お子さんの弱点」に合っているかどうかです。次の質問を、塾の先生にしてみてください。
- この講座は、どの科目のどの単元を伸ばすためのものか
- お子さんの今の成績で、この講座を受けると何が変わる見込みか
- 受けない場合、通常授業だけでは何が足りなくなるのか
- 講座の内容は、学校の定期テストや北辰テストの弱点と合っているか
志望校の難しさによって、必要な演習量は変わります。難関校を目指す場合は発展的な演習が必要になることがありますし、基礎の定着がいちばんの課題なら、講座を重ねるより苦手な単元をピンポイントで補うほうが合うこともあります。提案が成績や志望校に合っているかを、毎回確かめることが大切です。
お子さんの現在地と志望校の距離を知るには、各校の偏差値の目安を一覧で見ておくのが助かります。次の記事も参考にしてください。
この時期には、私立高校の「確約」(学校が公表した内申点や北辰テストの基準を満たすと、事前の相談で合格の見通しが示される埼玉の仕組み)に関する相談も増えます。基準は学校ごとに違い、公表されていない学校もあります。
基準を知らないまま「対策の講座が必要です」と言われると、判断の材料がありません。公表されている基準を確認し、足りない分だけ補うのか、すでに満たしているので講座は見送るのかを、親子で決められるようにしておきましょう。基準の整理は次の記事にあります。
→ 内申・北辰の確約基準一覧【2027年入試】埼玉私立の学校別
3. 冬の三者面談の前(最終的な志望校を決める時期)
三者面談で、提案書を見たその場で結論を出さなければならない、ということはありません。決めきれなければ、「一度持ち帰って、家族で相談してお返事します」と伝えれば十分です。
面談の前に、次のことを親子で確認しておくと、落ち着いて臨めます。
- 面談の場で、金額の話が出るかもしれないこと
- その場では決めず、持ち帰って考えてよいこと
- 見込み総額に、すでに入っている費用と入っていない費用
- お子さん自身が「やりたい」「不安だ」と思っていること
持ち帰れば、その提案をほかの方法と比べる時間ができます。1つの説明だけで決めないための、いちばん手軽な工夫です。
なお、高校側の個別相談では、学校の示す基準と、お子さんの内申点や成績を照らし合わせて、正直に相談する場として使うのが基本です。基準を確かめたうえで、進路についての不安を率直に伝えてください。
伝え方のコツ:金額より「意味」を伝える
伝え方としては、「〇万円かかっている」という数字より、「このお金は、あなたが行きたい高校に向けて準備するために使うもの」という意味を伝えるほうが、お子さんに届きやすくなります。
反対に、「こんなに払っているんだから頑張りなさい」という言い方は、お子さんの重荷になるだけで、学習意欲にはつながりにくいものです。成績が伸び悩んでいるお子さんが、「親に申し訳なくて、成績の話をするのが怖い」と感じてしまうことがあるからです。
お金を「頑張る理由」にするのではなく、「一緒に選択肢を考えるための材料」として使うのが理想です。
同じ伝え方が、すべてのお子さんに合うわけではありません。お子さんのタイプに合わせて、伝える情報量を調整してください。
- 不安を感じやすいタイプ:金額を聞くと「自分のせいで大変な思いをさせている」と萎縮してしまうお子さんです。細かい金額よりも「家族みんなで応援している」という気持ちを大切にして、金額の話は必要最小限にとどめましょう。
- 当事者意識が薄いタイプ:お金の話をしても「へえ」で終わってしまうお子さんです。「この講座を追加するか、一緒に決めよう」と、判断のプロセスに参加してもらうと、自分のこととして受け止めやすくなります。
どちらのタイプでも、話すのは短い時間で構いません。食事のあとや移動中など、肩の力が抜けた場面のほうが、お子さんも話しやすいようです。
塾代を「減らす」のではなく「使い道を見直す」
見込み総額が見えてくると、「この講座は本当に必要だろうか」と見直す機会が増えます。見直しの目的は、費用をできるだけ削ることではありません。お子さんの弱点に合った使い方になっているかを確かめることです。
集団塾の講座は、成績の上位から下位まで幅広いお子さんに向けて組まれているため、お子さんの弱点とぴったり合うとは限りません。次の観点で、講座ごとに点検してみてください。
講座を見直すときのチェックリスト
- お子さんの弱点(科目・単元)と、講座の内容が合っているか
- すでに得意な範囲を、重ねて学ぶ内容になっていないか
- 講座を受ける時間と、家庭学習や睡眠の時間が両立できるか
- お子さん自身が、その講座を受ける意味を理解しているか
- 同じ目的を、ほかの方法(個別指導、家庭教師、学校の補習、自習)でも満たせないか
たとえば、通常授業は今の塾のまま続けながら、特定の時期の特訓だけを見送り、その分を苦手な1科目のための個別指導に回す、という組み替えもありえます。総額を増やさずに、使い道を変えるという考え方です。
ただし、組み替えのやり方に唯一の正解はありません。今の塾の授業が合っていて、提案も弱点に合っているなら、そのまま受けるのが最善のこともあります。大事なのは、理由を言葉にして選んでいることです。
外部の指導を検討する場合は、料金体系や指導内容が、会社や教室によって大きく違う点に注意してください。1つの説明だけで決めると、塾の提案をその場で受け入れるのと同じで、妥当かどうかを判断できません。
外部の指導を検討するとき、確かめておきたいこと
- 月謝のほかに、入会金・教材費・交通費などがいくらかかり、入試までの総額がいくらになるか
- 苦手な1科目だけ、必要なコマ数だけでも頼めるか(高額な教材のセット購入が条件になっていないか)
- 通っている塾のテキストや進度に合わせたフォローができるか
- 北辰テストや確約など、埼玉の入試の仕組みを踏まえた指導ができるか
- 中3の途中からでも始められるか、先生が合わなかったときの交代に費用がかからないか
時期ごとの考え方は、次の記事でも整理しています。
→ 中3の秋から家庭教師は遅い?埼玉の入試日程で考える始め方
まとめ:塾代は「見込み総額」を出して、3つの時期に共有する
中3の塾代に、全国共通の相場はありません。文部科学省の調査にある公立中学校の補助学習費の平均(約27万2千円、全学年の平均)は目安になりますが、ご家庭の判断には、通っている塾の料金をもとにした見込み総額を使ってください。
この記事のポイントを振り返ります。
- 公的な数字は平均で、塾の種類や講習の取り方で大きく変わる
- 月謝、教材費、講習、模試、追加講座を足し上げて、ご家庭の見込み総額を出す
- 春は年間の見通しを共有し、秋は志望校と講座の中身を結びつけて考える
- 冬の三者面談では、その場で決めず、持ち帰ってよいと共有しておく
- 金額より「何のための費用か」という意味を伝える
- 見直しの目的は削減ではなく、弱点に合った使い方にすること
まず今週、お手元の塾の料金表と案内を集めて、年間の見込み総額を書き出してみてください。その紙を、お子さんとの最初の話し合いの材料にするところから始められます。
この記事で確認した資料
- 令和5年度子供の学習費調査結果のポイント(文部科学省、令和8年1月16日公表の訂正版)(確認日:2026年11月5日)
- 子供の学習費調査(令和3年度・令和5年度)の公表数値等の訂正(文部科学省)(確認日:2026年11月5日)






