高校に通えなくなったら|転入・編入の仕組みと埼玉の相談先

転学と編入学。似た言葉ですが、意味はまったく別です。

「高校に入ったのに行けなくなった。このまま退学しかないのだろうか」
「別の高校に移れると聞いたけれど、誰に何を聞けばいいのかわからない」

この記事は、お子さんが高校に入学したあとに通えなくなった保護者の方、そして中3の保護者で「入学後に合わなかったらどうなるのか」を知っておきたい方に向けて書いています。

高校に通えなくなったとき、退学以外の道は用意されています。ただし、転入学・編入学の募集の有無や時期は学校ごとに違い、県の案内ページには受付時期が書かれていません。だから「まず誰に聞くか」「何を準備しておくか」の順番が大切です。焦って一つに決めず、先に仕組みを知って、選べる状態をつくりましょう。

この記事では、言葉の整理、埼玉県の公立高校の仕組み、相談先、家庭での学習の支え方、外部の力を借りる場面を順に整理します。なお、お子さんの心の状態や通えなくなった原因について、この記事では判断できません。気がかりな点は、学校や公的な相談窓口、専門家に相談してください。

転学と編入学は別もの:言葉の整理

埼玉県の「公立高等学校の転入学・編入学情報」のページでは、2つの言葉が次のように分けて説明されています(2025年9月9日掲載、2026年10月28日確認)。

  • 転学:現在高校に在籍している生徒が、ほかの高校の相当する学年に学籍を移すこと
  • 編入学:海外からの帰国者、中等教育学校の後期課程や高等専門学校に在籍していた人、高校を中途退学した人などが、第1学年の当初の入学時期以外や、第2学年以上に入学すること

つまり、いまの高校に在籍したまま別の高校に移るのが「転学」、いったん高校をやめた状態から入り直すのが「編入学」です。ここを混同すると、問い合わせ先でも話がかみ合いません。「転学のつもりで電話したのに、退学の手続の話になっていた」という行き違いは、避けたいところです。

さらに大事なことがあります。退学してから考える、という順番にしないことです。在籍しているうちなら、現在の学校を通じて手続を進められる場合があります。退学の届けを出す前に、転学や課程変更の可能性を、学校に必ず確認してください。

学校に通えなくなった後の勉強のことは、家庭の中で一番先に気になることかもしれません。家庭教師や個別の指導を使うかどうかは、仕組みを知ってからでも遅くありません。

通えなくなったとき、先に整理したいこと

転入や編入を調べる前に、「何が一番の壁になっているか」を家庭で整理しておくと、相談のときに話が早く進みます。原因の診断はできませんが、事実の整理はできます。

状況の整理チェックリスト

  • 通えない日が続き始めたのはいつ頃か(月ごとのおおまかな記録でよい)
  • 欠席・遅刻・早退の日数は、学校からどう報告されているか
  • 授業のうち、受けられていない教科はどれか
  • 定期テストや課題の提出は、いまどうなっているか
  • 学校の先生に、家庭から状況を伝えられているか
  • お子さん本人が「こうなりたい」と話したことはあるか(急かさずに)
  • 通学の距離、時間、人間関係のどれが負担になりやすそうか

このうち、一番最初に確認してほしいのは、欠席の日数と単位のことです。高校は、授業への出席と、課題や試験の結果にもとづいて単位が認められる仕組みです。学校ごとに欠席の扱いは違うため、「このまま通えない期間が続くと、進級や卒業にどう影響するのか」は、必ず担任や学年の先生に聞いてください。聞きにくいときは、電話やメールで、事実として「いま何日休んでいて、進級の条件は何か」と確認するだけで十分です。

お子さんが話したがらないとき、無理に原因を聞き出す必要はありません。「親が先に調べておく」ことと、「本人に決めさせる」ことは別です。仕組みを調べるのは親の役目、どれを選ぶかは本人の気持ちを聞きながら決める、と役割を分けておくと、家庭の空気が荒れにくくなります。

課程の種類そのものについては、前の記事で整理しています。

→ 不登校の中3の進路|埼玉で選べる高校の種類と調べ方

埼玉の公立高校の転入・編入の仕組み

ここからは、埼玉県の公式ページで確認できた内容です。私立高校や、さいたま市立の高校、他県の高校は仕組みが違うことがあるので、そのときは各校に直接確認してください。

出願資格

  • 全日制:志願者本人と保護者が埼玉県内に住んでいること、または入学日までに県内に住所を持つことが確実であること
  • 定時制:志願者本人が県内に住所か勤務地(在学地)を持つこと、または持つことが確実であること
  • 海外からの帰国者:出願できる学年は、年齢や外国の学校で修了した課程によって決まる

全日制と定時制で、条件の書き方が違います。定時制は「勤務地」まで含まれる点が、全日制と異なります。

試験と複数校への出願

  • 試験問題は、各県立高校の校長が定める。過去の問題は、志願先の学校に直接問い合わせる
  • 試験日が重ならなければ、複数の学校に出願できる
  • ただし、複数校を受けて最初に合格した高校には、必ず入学することになる
  • 県内に住む人が、ほかの県内公立高校へ転学したい場合は、志願先の校長が特別な事情があると判断すれば、出願と受験が認められることがある

「最初に合格した高校には必ず入学する」という点は、見落としやすい注意点です。併願の感覚で複数校を受けると、最初に出た合格を断れません。受ける前に、どの学校を第一希望にするかを、お子さんと一緒に決めておく必要があります。

募集の時期は、このページには書かれていない

県の転入学・編入学のページには、受付時期や出願期間、試験日は出ていません。同じページに「募集状況、出願期間、試験日は埼玉県公立高校ナビゲーションシステムに掲載されている」と案内があります。ナビでは課程(全日制、定時制、通信制、単位制)で学校を探せます。転編入の具体的な日程は、気になる学校ごとに募集状況を確かめてください。

ですので、「いつなら受けられるのか」は、志望する学校に直接聞くのが一番確実です。学校ごとに、募集があるかどうか、欠員があるかどうかが違います。年度の途中で受付が始まることもあれば、募集自体がないこともあります。ここは推測で書かず、問い合わせで確かめてください。

転居による転学のときの流れ

県のページには、保護者の転勤などで転居する場合の手順も書かれていました。

  1. 県内に住むことが決まったら、いま通っている高校に相談する
  2. 志願先の高校に、保護者か現在の学校から問い合わせて、出願できるかどうか回答を得る
  3. 出願が認められたら、現在の高校を通じて書類を出し、試験を受ける

この流れは転居の場合ですが、考え方は通えなくなったときにも参考になります。最初の相談先は、いま在籍している高校です。書類の多くは、現在の学校を通じて出すことになるからです。

移る先を考えるときに比べたいこと

出願資格がわかっても、「どの学校なら続けられそうか」という問いは残ります。県のページに書かれていない部分なので、比べる項目を挙げておきます。数字や制度の保証ではなく、問い合わせのときの聞き漏れを防ぐための項目です。

  • 通学にかかる時間と、乗り換えの回数(毎日のことなので、意外に大きな負担になる)
  • いまの学年に入れる場合、これまでに学んだ内容がどこまで引き継がれるのか
  • 学校の課程(全日制、定時制、通信制、単位制)によって、登校の日数や時間帯がどう違うのか
  • 入学後に面談や相談の機会があるか、担任や相談員とどのくらい話せるか
  • 試験の科目と、過去の問題を見せてもらえるか

特に「これまでに学んだ内容がどう扱われるか」は、学校によって説明が違うことがあります。ここは、志望先の担当者から言葉で説明を受けて、メモに残してください。口頭で聞いただけの内容は、あとで食い違うことがあります。可能なら、メールや書面で確認しておくと安心です。

見学や相談の機会があれば、お子さんが「行ってもいい」と感じられるかどうかも、大事な判断材料です。親が納得しても、本人が一度も足を運べなかった学校に決めるのは、あとで苦しくなりやすいからです。最初から見学まで求めず、ホームページを一緒に眺めるだけでも、最初の一歩になります。

まず誰に相談するか:埼玉県の窓口

「誰に聞けばいいかわからない」のは、保護者の方が最初に行き詰まるところです。埼玉県教育委員会の「困ったときの相談窓口」のページ(2026年10月28日確認)には、次のような窓口が載っていました。連絡先は変わることがあるので、かける前に県のページで確認してください。

  • 彩の国 よりそうみんなの電話・メール教育相談(保護者用):電話 048-556-0874
  • 同(子供用):電話 #7300 または 0120-86-3192(フリーダイヤル)。電話は毎日24時間。対象は原則18歳まで
  • 面接相談:048-556-4180(予約制、約60分、無料)。保護者や関係する教職員が対象
  • 学校関係の電話相談:048-830-6737(月〜金 9時〜16時、祝日・年末年始を除く)。公立学校の児童生徒と保護者が対象で、さいたま市立学校を除く

転入学・編入学そのものの問い合わせ先は、同じ県の資料で、教育局 県立学校人事課 学事担当(電話 048-830-6735)とされていました。

ここで、窓口を使い分ける目安をまとめます。

  • お子さんの様子や、親の関わり方がわからない → 教育相談の電話・面接相談
  • 進級や単位、今の学校での手続を知りたい → いま在籍している高校の担任・学年の先生
  • 県立高校への転学の仕組みを知りたい → 県立学校人事課 学事担当
  • 特定の学校の募集の有無・時期を知りたい → 志望先の学校に直接

相談のときは、先ほどの「状況の整理チェックリスト」のメモを手元に置くと、話が伝わりやすくなります。メモがあるだけで、電話の10分が大きく違います。

家庭でできること:学習の空白を作りすぎない

通えない期間が続くと、手続の話と同じくらい気になるのが、勉強の遅れです。転入学や編入学の試験は、学校ごとに問題が違います。受けると決まってからあわてて勉強を始めるより、通えていない間も「最低限の学習の土台」を保っておくほうが、選べる道が広がります。

ただ、ここで強い言葉をかけすぎると、お子さんの負担になります。次のように、小さく始めるのが現実的です。

家庭でできる学習の支え

  • 1日30分でも、毎日同じ時間帯に机に向かう時間を作る(内容は本人が選ぶ)
  • 教科は、英語と数学のように積み上げが必要なものを優先する
  • 学校から配られた課題とプリントを捨てずに、1か所にまとめる
  • 今の学年の範囲が重いときは、前の学年の復習から入る
  • 「今日どこまでやったか」を、一言メモに残す
  • できなかった日を責めず、再開できた日をほめる

勉強の継続と、手続の調べものは、同時に少しずつ進めるのが現実的です。登校の話をいったん横に置いて、英語と数学の課題を1日30分ずつ進めながら、担任に欠席日数と進級の条件を確認する、という進め方もあります。どちらか一方に偏ると、あとで苦しくなります。

とはいえ、家庭でできることには限界があります。親が教えようとするほど、子どもが話さなくなることもあります。数学の積み上げや英語の文法のように、「どこで止まっているか」を見極めて戻る作業は、保護者だけでは手が回らない部分です。

塾・個別指導・家庭教師の違い:どんなときに外部の力が合うか

学校に通えていないお子さんの学習の支えとして、外部の力を借りる場合、仕組みの違いを知っておくと選びやすくなります。ここでは、特定の会社や塾の名前は出さず、形式の違いだけを整理します。

  • 集団授業の塾:決められた時間に教室に通う。人の中に入る負担が大きい時期は、続けにくいことがある
  • 個別指導塾:教室に通うが、1対1か少人数。通学の負担はあるが、進度は合わせやすい
  • 家庭教師:自宅で受けられる形式がある。会社によっては、オンラインの授業に対応しているところもある。通学の負担が小さい分、講師との相性が続けやすさを大きく左右する

比べる項目は、次のようなものです。

  • 授業の場所(自宅・教室・オンライン)と、通えない日の振り替えのしかた
  • 前の学年の内容から戻って学べるか
  • 講師が合わなかったとき、交代できるか
  • 月謝以外にかかる費用(入会金、教材費、交通費)
  • 保護者への報告の頻度と内容

くわしい比べ方は、次の記事にまとめています。

→ 苦手な1教科だけ外部に頼むとき、先に確認したい7つのこと

外部の力を借りる価値があるのは、数学の積み上げや英語の文法のように、「どこで止まっているか」を見極めて戻る作業が、保護者だけでは進めにくい場面です。

家庭教師が万能というわけではありません。合わない講師に当たれば、かえってお子さんの負担になることもあります。だからこそ、「契約する前に資料を比べ、体験や面談の条件を確認する」という順番が大切です。急いで一社に決める必要はありません。

在籍校への連絡から始める、転入学・編入学の動き方

ここまでの内容を、動く順番にまとめます。

最初にやること

  • 担任か学年の先生に、欠席日数と、進級・卒業の条件を確認する
  • 退学の手続は、転学・課程変更の可能性を確認してから考える
  • 県の「転入学・編入学情報」のページを読み、出願資格を確認する
  • 気になる学校があれば、募集の有無と時期を電話で聞く
  • 教育相談の窓口に、親として一度相談する

そのあとにやること

  • お子さんと、無理のない形で希望を話す機会を作る(結論を急がない)
  • 学習の空白を、英語・数学を中心に確認する
  • 必要なら、外部の力を借りる選択肢の資料を、いくつか集めて比べる

待つ間に条件が変わることがあります。今年度は2027年3月31日で終わります。年度の変わり目は、学校側の手続や学年の区切りが重なる時期です。募集の時期は学校によって違うため、「春になってから考えよう」と待つと、選べる学校や時期が狭まるおそれがあります。早めに問い合わせて、選択肢を知っておくだけで、あとの判断が楽になります。

まとめ:退学の前に、仕組みと窓口を知っておく

  • 転学は「在籍中の高校から別の高校へ移ること」、編入学は「高校をやめた状態などから入り直すこと」で、意味が違う
  • 退学の手続を進める前に、転学や課程変更の可能性を在籍校に確認する
  • 埼玉県の公立高校の出願資格は、全日制と定時制で書き方が違う。複数校を受けるときは、最初に合格した高校に必ず入学することになる
  • 県のページには受付時期が載っていない。募集の有無と時期は、志望する学校に直接確認する
  • 相談先は、県の教育相談、在籍校の先生、県立学校人事課の学事担当など、目的で使い分ける
  • 通えない間も、英語と数学を中心に、小さな学習の習慣を保つ。家庭で手が回らない部分は、外部の力を比べて選ぶ

最初の一歩は、担任の先生への連絡文を一通書くことと、県の転入学・編入学のページを一度開いてみることです。お子さんの進路は、一度の決断で閉ざされるものではありません。仕組みを知り、選べる状態をつくることから、始めてみてください。

→ 通信制高校の選び方|埼玉の家庭が比べたい5つの項目

この記事で確認した資料