通信制高校の選び方|埼玉の家庭が比べたい5つの項目

「通信制」と名前がつけば、どの学校も同じなのでしょうか。

「パンフレットを3冊取り寄せたけれど、どれも明るい写真ばかりで違いが見えない」
「週1回通う学校もあれば、ほぼ家で完結する学校もあるらしい。何を基準に選べばいいのか」

通信制高校は、学び方の土台が同じでも、通う頻度、費用の出方、学習の支え方が学校によってかなり違います。だから「どこがいいか」を探す前に、「お子さんが無理なく続けられる条件」を先に言葉にして、同じ項目で比べることが大切です。

この記事では、通信制の学び方の基本、比べたい5つの項目、見学や個別相談で聞くこと、そして家庭で学習の支えをどう作るかを整理します。学校に通えていない時期の進路の種類そのものについては、前回の記事で扱っています。お子さんの心の状態や不登校の原因について、この記事では判断できません。気がかりな点は、学校や公的な相談窓口、専門家に相談してください。

→ 不登校の中3の進路|埼玉で選べる高校の種類と調べ方

通信制の学び方:どの学校にも共通する土台

比べるには、まず共通の土台を知っておく必要があります。文部科学省の「通信制高校とは?」のページでは、学習方法が次の4つで示されています。

  • レポート(添削指導):決められた回数のレポートに取り組み、先生からアドバイスやコメントをもらう
  • スクーリング(面接指導):先生や他の生徒と対面で学ぶ。実験や実習もここで行う
  • 試験:学習内容がどの程度身についたかを確認する
  • 多様なメディアを利用した指導:テレビやインターネットの動画を視聴し、報告課題を提出する

卒業に必要な単位数は74単位以上で、特別活動(ホームルーム活動を含む)は卒業までに30単位時間以上の指導が行われます。レポートの回数やスクーリングの時間数には学習指導要領で標準が決まっていますが、同じページに「学校によって定める回数が異なる場合がある」と書かれています。つまり、レポートの量やスクーリングの時間は、学校ごとに確認が必要です。

また、同じページには、通信制高校の教育を支えるための施設として、面接指導や試験を連携して行う「面接指導等実施施設」と、進路や心身の健康に関する相談、学習の支援を行う「学習等支援施設(サポート施設)」が紹介されています。学校によって、こうした施設を使って学習の支えを用意している場合があります。

ここまで読んで、「結局、自分で学ぶ時間が多いのでは」と感じた方もいると思います。その通りで、通信制は自分で学ぶ時間が軸になります。

比べたい5つの項目

ここからが本題です。通信制高校を比べるときは、次の5つを同じ順番で見る方法が使いやすいです。パンフレットの雰囲気ではなく、項目で比べると、違いがはっきりします。

1. 通学の頻度と形(スクーリングの日数)

最も違いが出るのが、ここです。スクーリングは、決められた日数を校舎で受ける学校もあれば、通う日を選べる学校もあります。通学コースを用意していて、週に何日も通える学校もあります。「週1回なら行けそう」「月に数日なら大丈夫」「毎日は難しい」という感覚は、お子さんによってまったく違います。

確認したいのは、次の点です。

  • スクーリングは年に何日か、1日の時間はどれくらいか
  • 宿泊を伴う日程があるか、ある場合は参加が必須か
  • 通う日を自分で選べるか、日程が決まっているか
  • 通学コースとそれ以外のコースで、費用や卒業までの流れがどう違うか
  • 行事への参加は、自由か必須か

お子さんが人の多い場所を苦手としている場合は、1日あたりの人数や教室の雰囲気も、見学のときに自分の目で確かめてください。ただし、これは親が判断することではなく、お子さんの様子を見ながら一緒に決めることです。

2. 費用の内訳(学費は「授業料」だけでは見えない)

通信制の費用は、学校によって出方が大きく違います。埼玉県のページ「埼玉県立高等学校の授業料・入学料等のあらまし」を見ると、県立の通信制課程は入学料500円(令和8年4月1日現在)、授業料は1単位あたり330円に履修する単位数を掛けた額で、5月に年1回まとめて納める形です。県立は、履修する単位数に応じて決まる、シンプルな仕組みです。

同じページには、令和8年度から就学支援金の所得による制限がなくなり、保護者の所得にかかわらず支給されること、そして支給には申請が必要であることも書かれています。なお、このページは県立高校の説明です。私立の通信制では、授業料の仕組みも、就学支援金の扱いも、学校の案内で確認が必要です。

私立の通信制の費用を比べるときは、パンフレットの「授業料」という一行だけで判断せず、次の内訳を同じ形で書き出してください。

  • 入学金(入学時にかかるお金)
  • 授業料(1単位あたりか、年額か、月額か)
  • 施設費・教材費・システム利用料など、授業料以外の項目
  • スクーリングにかかる交通費や宿泊費
  • 通学コースやサポートコースを選んだ場合の追加費用
  • 就学支援金を受けた場合に、実際にいくらかかるか(申請の手続きは誰が行うか)

ここで見落としやすいのは、「3年間でいくらか」です。学校によって、入学金・授業料・追加費用のどれが大きいかが違うため、1年目の金額だけで比べると、後から差が出ます。必ず3年間の総額で書き出してください。

3. 学習の支え方(自分で学ぶ時間をどう支えてくれるか)

通信制は自分で学ぶ時間が軸なので、「その時間を学校がどう支えてくれるか」が、続けられるかどうかを大きく左右します。具体的には、次のような点です。

  • 担任やコーチのような相談役が決まっているか、連絡の方法と頻度はどうか
  • レポートでつまずいたとき、質問できる場と時間があるか
  • 提出が遅れたとき、どのように声をかけてもらえるか
  • 心身の不安や進路の相談ができる窓口があるか(文部科学省のページでは、学習等支援施設の役割として紹介されています)
  • 学習のやり直し(中学の内容に戻る)に対応してもらえるか

「サポートが手厚い」と書かれていても、中身は学校ごとに違います。パンフレットの言葉をそのまま受け取らず、「具体的に、誰が、週に何回、何をしてくれるのか」を聞いてください。ここは、見学や個別相談で必ず確認したい部分です。

どの学校も「サポートが手厚い」と書いていて違いがわからないときは、「連絡は誰が、どれくらいの頻度で取るのか」「レポートが遅れたらどうなるのか」の2点を、全校に同じ文面で問い合わせる方法があります。返事の具体性を並べると、学校ごとの違いが見えやすくなります。

4. 卒業後の道(進学・就職の準備にどれだけ対応するか)

通信制の課程で卒業できるのは、全日制・定時制と同じく高校の課程です。ただ、その先の進路にどう備えるかは、学校の特色が出る部分です。大学進学を目指すコースがあるか、就職や専門学校のための授業・支援があるか、実際に卒業生がどこに進んでいるのかを、案内や説明会で聞いてください。

進学実績は、数字だけを見るのではなく、「何人のうち何人か」という分母も確認してください。入学者の数に対して、どの程度の人が進学しているのかがわからなければ、比べようがありません。出していない学校には、「この数字の分母は何ですか」と尋ねてみてください。

5. 学校の種類と、通う場所の条件

通信制の学校は、公立と私立があり、本校のほかに通う場所(キャンパスや学習センターなど)を持つ学校もあります。文部科学省のページでは、通信教育を行う区域が本校の所在する都道府県を含めて3つ以上にまたがる学校を「広域通信制高校」としています。お住まいの地域から通う場所が近いか、遠い場合はオンラインで済む部分がどれくらいか、確認が必要です。

公立の通信制は、埼玉県教育委員会が作成する「高等学校定時制・通信制 入学案内」で調べられます。ただ、この記事の作成時点で確認できたのは令和7年度版で、令和9年度(2027年入試)の分は確認できていません。出願資格や募集の時期は年度で変わることがあるため、県のページか中学校の進路担当の先生に、令和9年度の案内を確認してください。

出願や選考の方法も、学校によって異なります。面接や書類のみの学校もあれば、学力検査を行う学校もあります。時期も、年に複数回ある学校や、入学時期が複数ある学校があります。「中3の2月にしか入れない」とは限らない点は、通信制の特徴ですが、各校の募集要項で確認してください。

見学・個別相談で、聞いておきたいこと

パンフレットだけでは、5つの項目の「中身」まではわかりません。見学や個別相談では、次の質問を、候補の学校すべてに同じ形でしてください。答えを同じ紙に書き留めておくと、あとで比べられます。

見学・個別相談で聞くことのチェックリスト

  • スクーリングは年に何日で、通う日は選べますか
  • 入学金・授業料のほかに、3年間でかかる費用はいくらですか(内訳を書面でもらえますか)
  • 相談役の先生は決まっていますか。連絡は誰が、どれくらいの頻度で取りますか
  • レポートが遅れたり、通えなくなったりしたとき、学校はどう対応しますか
  • 中学の内容に戻って学び直すことはできますか
  • 卒業生の進路は、何人のうち何人が、どこに進んでいますか
  • 途中で別のコースや、別の課程(定時制など)に移ることはできますか

お子さんが一緒に行けない場合は、親だけで先に見学することも可能な学校が多いです。ただし、親だけの参加が可能かどうかは学校によって違うので、申し込みのときに確認してください。お子さんが行ける日は、「見るだけでいい」「気になったら帰ってもいい」と先に伝えておくと、本人の負担が軽くなります。

見学の後に、お子さんに「どうだった?」と感想を求めすぎないことも大切です。評価や結論を急がせず、帰りに好きな飲み物を買う程度で十分です。気持ちが落ち着いたころに、「あそこの何が気になった?」と、小さく聞いてみてください。

入学までと入学後、家庭でできる学習の支え

5つの項目で学校を比べたあと、もう一つ考えておきたいのが、「家でどう支えるか」です。通信制は学校が支えてくれる部分もありますが、レポートに取り組む時間の多くは、家庭での学習になります。

学習の再開は「小さく」始める

  • 最初は1日10〜15分から。取り組みやすい1教科だけを選ぶ
  • どの学年の内容までなら取り組めそうかを、お子さんと責めずに確認する
  • 「やったか」ではなく「やれた時間」を一緒に記録する
  • 同じ時間帯に取り組む形にして、生活のリズムを作る

親が教えようとすると、お互いの感情が入って続かないことがあります。それは親の力不足ではなく、距離が近すぎるからです。ここで、家庭教師や個別の力を借りるのは、決して逃げではありません。

通信制は、レポートを提出するための勉強を自分で進める時間が長くなります。入学前から、どの学年の内容までなら戻れるのかを一緒に確かめてくれる相手がいると、再開のきっかけを作りやすくなります。

塾・個別指導・家庭教師の違い

特定の会社や塾を勧める意図はなく、タイプごとの違いだけを整理します。お子さんの状態によって、合うものは変わります。

  • 集団授業の塾:周りの刺激で頑張れる子には向く。教室に入ること自体が負担なときは、続けにくい
  • 個別指導塾:通う場所と時間が決まるので、生活のリズムを作りたい子には合うことがある。同じ教室に他の生徒がいる点が負担にならないかは確認が必要
  • 家庭教師:自宅で1対1。移動がなく、お子さんのペースに合わせて内容を決めやすい。講師との相性の影響が大きいので、体験や交代の条件を確認する

金額は会社や教室によって違うため、ここでは書きません。資料で、同じ項目をそろえて比べてください。詳しい比べ方は、こちらの記事にまとめています。

→ 家庭教師と個別指導塾の違い|埼玉の中3の親が比べる7項目

親がやることのチェックリスト

最初にやること

  • お子さんが「無理なく続けられそうな条件」を、親の頭の中で整理する(通う頻度、時間帯、人数など)
  • 通信制・全日制・定時制から、種類をまたいで3〜5校の案内を取り寄せる
  • 担任か進路担当の先生に、進路の選択肢について相談したいと連絡する

11月〜12月にやること

  • 候補の学校の見学や個別相談を申し込み、上のチェックリストの質問を全校に同じ形で聞く
  • 入学金・授業料・授業料以外の費用・交通費を、3年間の総額で書き出す
  • 出願や選考の時期を、学校ごとに一覧にする

お子さんと一緒にやること

  • 案内を机に置いて、「気が向いたら見てね」とだけ伝える
  • 見学に行けるかどうかは、本人に決めてもらう
  • 学習は、1教科・10〜15分から再開できるかを試す

見学や個別相談の予約は、出願の前から埋まっていく

県の発表では、令和9年度の公立高校の学力検査は2027年2月25日です。学力検査までの間に、学校の見学や個別相談、出願準備が重なります。通信制の出願時期は学校ごとに違うため、案内で個別に確認が必要ですが、見学の予約は日程が埋まっていくことがあります。

決断を急ぐ必要はありません。ただ、案内を取り寄せたり、見学を申し込んだりといった「調べる作業」は、時期が遅くなるほど選べる日程が減ります。お子さんの気持ちが動いたときに、すぐ見学に行ける状態を作っておくことが、親にできる大きな支えです。

まとめ:学校名より先に、続けられる条件を決める

  • 通信制の学びは、レポート・スクーリング・試験・メディアを利用した指導が基本。回数や時間は学校ごとに違う
  • 比べる5項目は、通学の頻度、費用の内訳、学習の支え方、卒業後の道、学校の種類と通う場所
  • 県立の通信制は、入学料500円、授業料は1単位330円(令和8年4月1日現在)。私立は学校ごとに仕組みが違うので3年間の総額で比べる
  • 令和8年度から就学支援金の所得制限はなくなったが、支給には申請が必要
  • 見学や個別相談では、同じ質問を全校に同じ形でして、答えを書き留める
  • 確認できていない制度や数字は、学校や先生に事実のまま聞く。心配なときは相談窓口や専門家も頼る

まず最初に、「お子さんが無理なく続けられそうな条件」を紙に3つだけ書き出してみてください。そのうえで、案内を数校分取り寄せ、机に置いておきましょう。決めるのは、お子さんの気持ちが動いてからで構いません。

この記事で確認した資料