あと1。
通知表を開いたとき、その「1」が何を指しているのかで、打つ手はまるで変わります。評定の「3」を「4」にしたいのか、9教科の合計をもう1点積み上げたいのか。同じ「あと1」でも、必要な動きは別物です。
「内申があと1足りなくて、志望校の基準に届かない。2学期の期末テストで取り返せるものなの?」
「提出物を出していないのは知っていたけれど、本当にそれで評定が変わるの?」
2学期は、こうした疑問が出やすい時期です。結論から言うと、2学期の評定は、期末テストの点数だけでは決まりません。「あと1」が本当に届く範囲かどうかは、先生が評定をつけるときの材料を、早めに確かめれば見分けられます。
この記事では、埼玉県の公立入試で調査書がどう点数になるのかを確認したうえで、「あと1」の中身の見分け方、期末テストまでにできること、家庭だけでは手が回らなくなる部分の考え方をお伝えします。
まず確認:「あと1」はどの「1」か
「内申があと1足りない」という言葉は、実は3つの違う状況を混ぜて使われています。最初に、どれに当たるのかをはっきりさせましょう。
よくある3つのパターン
- 私立の確約基準に、9教科の合計があと1点足りない:個別相談で示される基準(例:5教科や9教科の合計)に、1点届かない
- 公立志望で、ある教科の評定を3から4にしたい:合計点としては「あと1」だが、教科が絞れるので対策も絞れる
- 北辰の偏差値と内申のバランスが悪い:内申が1つ低いだけで、志望校の目安とずれてしまう
私立の確約基準は学校ごとに違い、年度によっても変わります。数字は公式の募集要項や個別相談で確認してください。基準の考え方そのものは、こちらの記事にまとめています。
→ 内申・北辰の確約基準一覧【2027年入試】埼玉私立の学校別
「あと1」を数える前に手元に置くもの
通知表を見るだけでは、足りない「1」の正体はつかめません。次の3点を手元に出してみてください。
- 1学期の通知表(9教科の評定)
- 志望校の基準(私立なら個別相談や募集要項の数字、公立なら学校ごとの選抜方法)
- 各教科の、これまでの定期テストの点数と提出物の状況
この3つを並べると、「どの教科の1つ上げれば基準に届くのか」「その教科は今どの位置にいるのか」が見えてきます。9教科すべてを頑張らせる必要はありません。むしろ、全部に手を出すと時間が足りなくなります。
通知表に「2」がある場合の考え方は、別の記事で詳しく書いています。
なお、同じ中3でも、3学期制の学校と2学期制の学校があります。学校によって2学期の成績が出る時期が違うため、自分の学校でいつ通知表が渡されるのかは、学校の年間行事予定で確認してください。
埼玉県の公立入試で、内申はどう点数になるのか
「あと1」の重みを知るには、調査書が入試の点数にどう反映されるかを知っておく必要があります。県の基本方針を、事実だけ整理します。
令和9年度入試の調査書の扱い
- 調査書に載る成績:「各教科の学習の記録」(9教科の5段階評定)と「総合的な学習の時間の記録」。出欠の記録は削除され、特別活動などの記録は、受検生が書く自己評価資料に移る
- 学習点:各学年で、9教科×5段階=45点満点
- 学年の比率:1年:2年:3年の比を学校ごとに決める。基本方針では1:1:1(135点満点)、1:1:2(180点満点)、1:1:3(225点満点)という例が示されている
- 入試全体の得点:学力検査は5教科500点満点。調査書は基本点を200点・300点・400点のいずれかに換算する形が示されている
どの学校がどの比率・換算を選ぶかは、県が公表している「各高等学校の選抜実施内容(確定版)」に載っています。志望校のページを一度は開いて、自分の志望校が3年の成績をどれだけ重く見るかを確かめておいてください。
評定1つの重さを計算してみる
基本方針に示された仕組みをそのまま使うと、評定が1つ上がったときの影響を概算できます。たとえば、学年比が1:1:2で、調査書を200点に換算する場合を考えます。
- 3年の評定が1教科で1つ上がると、学習点は1点増える
- 3年の比は2なので、180点満点の中で2点分に当たる
- 200点に換算すると、おおよそ2.2点
これは、基本方針の仕組みから計算した目安です。実際の換算は学校ごとの選抜実施内容で変わります。それでも、3年の評定を1つ上げることは、入試当日の学力検査で数点を拾うのと同じくらいの意味を持つことがわかります。反対に、1年・2年の評定は、この時期にはもう動かせません。動かせるのは3年の分だけ、ということも押さえておいてください。
学年比や換算を比較する際の補足として、「3年の成績をどれだけ重く見るか」で、2学期の追い込みの価値は変わります。3年の比が大きい学校ほど、今の頑張りの影響が大きくなります。
もう一つ、令和9年度入試では面接が全志願者に実施される方針が示されています。内申だけで勝負が決まるわけではないので、「あと1」にとらわれすぎないことも大切です。
2学期の評定は、何で決まるのか
評定は、期末テストの点数をそのまま換算したものではありません。学習指導要領にもとづく「観点別評価」(知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度)を総合して、先生が決めます。
具体的に何が材料になるかは、学校や先生によって違います。次のような材料が使われることが多いと考えられます。
- 定期テスト(中間・期末)の点数
- 小テストや単元テスト
- 提出物(ノート、ワーク、レポートなど)の提出状況と中身
- 授業中の発言や取り組み
配分は教科ごとに違います。「期末テストで90点を取ったのに評定が4だった」ということも、「テストは平均点なのに提出物で5がついた」ということも、起こりえます。だからこそ、先に確かめるべきなのは、その教科の評定が何で決まるかです。
確かめ方(先生に聞いていいこと)
- 評定は、テストと提出物と授業態度で、おおよそどんな割合で決まるのか
- 1学期の通知表が出たあと、この教科で伸ばせる点はどこか
- 提出物で未提出のものがあれば、今からでも出せるのか
聞き方のコツは、「評定を上げてください」とお願いするのではなく、「次の期末までに何を頑張ればよいか教えてください」と、子ども本人が先生に聞く形にすることです。親が成績を交渉しているように受け取られると、かえって話がこじれます。まずは本人に、短い質問を一つ持たせてみてください。
2学期の内申を上げる全体像は、こちらの記事でも整理しています。
→ 中3の2学期で内申点は上げられる?提出物とテストの4つの工夫
「あと1」が届きやすい子、届きにくい子
ここは少し厳しい話になりますが、すべての「あと1」が2学期のうちに上げられるわけではありません。届きやすさは、次のような目安で見分けられます。
届きやすい子の特徴
- 1学期の定期テストの点数が、その教科の評定の境目に近い
- 提出物の未提出や出し遅れが、はっきり原因として思い当たる
- 苦手の中身が「ケアレスミス」や「テスト前の準備不足」で、単元の理解そのものは大きく崩れていない
届きにくい子の特徴
- 評定が下がっている理由が、前の学年の単元の抜けにある
- テストの点数が平均点を大きく下回り、期末までに取り戻す範囲を超えている
- 複数の教科で同時に「あと1」が必要になっている
後者の場合は、全部を上げようとせず、一番上がりやすい教科を1つ決めることが大切です。残りは、現状維持か、志望校の基準をもう一度見直す方向で考えます。ここで無理をして全教科に手を伸ばすと、期末テストそのものの点数が下がり、かえって評定が落ちるリスクもあります。
考え方の例を挙げます。確約の基準にあと1点届かず、9教科を見直したところ、社会だけが評定3で、テストは毎回6割前後、ワークの提出物も未提出が残っていた、という場合です。全教科で少しずつ上げようとすると、どれも中途半端になりがちです。社会だけに目標を絞り、未提出のワークを先に出し、期末までは用語の暗記と記述の練習に時間を集中させるほうが、手を打つ順番がはっきりします。評定が4になるかどうかは通知表が返るまで分かりませんが、「何を頑張ればよいか」が決まっていれば、残りの教科でも提出物を切らさずに続けやすくなります。これは具体的な誰かの話ではなく、考え方を示すための仮の例です。
このように、「絞る」と決めることが、評定を上げる最初の一歩です。そして、絞った教科は、点数の取り方が見えている分、家庭でもサポートしやすくなります。
期末テストまでに、家庭でできること
期末テストの日程は学校ごとに違うので、学校からの配布物で確認してください。ここでは、残りの期間で家庭が動かせる順番をまとめます。
1. 提出物を「出し切る」
最初にやることは、新しい勉強ではなく、未提出の洗い出しです。教科ごとに、ワーク、ノート、プリント、レポートの未提出がないかを、子どもと一緒に一覧にします。
- 返却が済んでいないものは、先生に確認する
- 提出期限が過ぎていても、出せるかを聞く
- ノートやワークは、きれいさより「やり切ったこと」が見える状態にする
提出物は、点数に比べて、努力が直接評価に結びつきやすい材料です。しかも、勉強が苦手な子でも、時間さえかければ追いつけます。逆に、ここを後回しにしていると、期末テストでどれだけ点を取っても、評定の材料が足りなくなります。
2. 期末テストの範囲を「最初の1週間」で一通り回す
テスト前日に詰め込む勉強は、短期の記憶にしかなりません。範囲表が配られたら、最初の1週間で、全範囲をざっと一周するのが理想です。難しい問題は後回しにして、教科書とワークの基本問題を解き直します。
- 間違えた問題に印をつけ、2周目はその問題だけを解く
- 暗記教科(社会・理科)は、短い時間を毎日続ける
- 数学と英語は、解き方や例文を声に出して説明させる
テスト前の勉強で気をつけたいのは、勉強時間の長さを競わないことです。夜遅くまで机に向かっていても、何をやったかが残っていなければ、翌日の学校では力になりません。「今日はワークの何ページを、何回目まで終えたか」を、一言でいいので親に報告させると、量ではなく中身で進み具合を確かめられます。報告を聞くときは、点数の予想ではなく「どこが分かりにくかったか」を尋ねるほうが、子どもは答えやすくなります。
3. 授業中の取り組みを「見える形」にする
観点別評価の「主体的に学習に取り組む態度」は、ノートの書き方、発言、質問の姿勢などで判断されます。大げさなことをする必要はありません。授業のノートを最後まで取る、わからないところにメモを残す、先生に質問に行く。この3つを、期末までの数週間続けるだけでも、先生から見た印象は変わります。
ここまでの内容は、家庭の中でかなりのことができる部分です。ただ、実際にやってみると、「どの教科の、どの単元を、どの順番でやればよいか」を毎日見てあげる時間が、保護者にはなかなか取れないという壁にぶつかります。特に、仕事や家事で忙しい家庭ほど、提出物のチェックまでは回りきりません。期末まで残された時間が短い中で、苦手の原因が前の学年の単元にあるとわかると、家庭だけで補うのは難しくなります。
外部の力を借りるのは、どんなときか
家庭教師、個別指導塾、集団授業の塾には、それぞれ向き不向きがあります。特定の会社の話ではなく、考え方の違いを整理します。
- 集団授業の塾:決まった進度で全体を進める。範囲全体の復習には向くが、一人の「あと1」の原因までは見てもらいにくい
- 個別指導塾:生徒の質問や苦手に合わせやすい。ただし、講師の担当人数や教室での時間割に左右される
- 家庭教師:自宅で1対1。苦手の教科や提出物の管理まで細かく見てもらいやすい一方、講師との相性や料金体系は会社によってかなり違う
どれが正解かは、家庭の状況で変わります。ただ、次のような場合は、一度検討する価値があります。
- 評定を上げたい教科が1〜2教科に絞れている
- 提出物や宿題の管理を、家庭だけでは続けられない
- 前の学年の単元の抜けが原因だとわかっていて、そこをさかのぼる必要がある
費用は会社によって大きく違うため、金額の相場は書きません。比べるときは、月謝だけでなく、入会金、教材費、交通費、入試までの総額、講師を交代できるかどうかを同じ項目でそろえて見ることをおすすめします。
期末テスト前に親が確認すること
内申の「あと1」チェックリスト
- 1学期の通知表で、9教科の評定を一覧にした
- 志望校の基準(私立は個別相談や募集要項の数字、公立は学校ごとの選抜実施内容)を確認した
- 足りない「1」が、合計点なのか、特定の教科なのか、はっきりさせた
- 上げたい教科を1〜2教科に絞った
- その教科の未提出物を洗い出し、出せるものから出した
- 期末テストの日程と範囲を、学校の配布物で確認した
- 次の北辰テストの日程を、申込みも含めて確認した
- 子ども本人が、先生に「次の期末までに何を頑張ればよいか」を聞いた
北辰テストは、ベネッセの案内によると、中3の第6回が2026年11月8日(日)、第7回が12月6日(日)の予定です。念のため、実施の最終日程は北辰テストの公式案内で確認してください。内申が動かせる範囲に限りがあるぶん、北辰の偏差値は、確約や志望校選びで内申を補う材料になります。
早めに動く理由:学力検査までの時間と、通知表が返るまでの時間
県の発表では、令和9年度の公立入試の学力検査は2027年2月25日(木)、入学許可候補者の発表は3月5日(金)とされています。10月16日の時点で、学力検査まで約4か月半、週にすると19週間弱でした。
一方、2学期の期末テストから通知表が返るまでの間は、思っているより短くなります。北辰は11月8日と12月6日があり、それまでに志望校の方針を固めたい時期でもあります。評定を動かせるのは、これからの数週間の取り組みで決まる3年の分だけです。「あと1」を放置したまま冬を迎えると、残りの期間は北辰と当日の得点で補うしかなくなります。
家庭でできることをやり切ったうえで、それでも手が回らないと感じたら、早めに選択肢を比べておくことが大切です。
まとめ:「あと1」は、まず中身を見分けることから
- 「あと1」には、確約基準の合計点、特定教科の評定、北辰とのバランスという3つの意味がある。まず自分の「1」を特定する
- 埼玉県の公立入試では、令和9年度から調査書は9教科の5段階評定が中心になり、3年の評定を1つ上げる影響は、学年比によっては入試当日の数点分に当たる
- 2学期の評定は、期末テストの点数だけでなく、提出物や授業での取り組みも材料になる。評定が何で決まるかは、本人が先生に確認する
- 届きやすいのは、評定の境目に近く、原因が提出物や準備不足にある教科。全教科に手を広げず、1〜2教科に絞る
- 家庭で手が回らない部分が出たら、早めに複数の選択肢を同じ項目で比べておく
まずは通知表と志望校の基準を並べて、「どの教科の評定を上げたいか」を親子で一つ決めてみてください。そこから、提出物の洗い出しが始まります。「あと1」は、見分けて絞れば、2学期の取り組みで動かせる余地がまだ残っています。
この記事で確認した資料
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施基本方針(スライド)(県教育委員会、2026年10月16日確認)
- 令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜に関する情報(県、掲載日2026年10月1日、2026年10月16日確認)






