週に3回、塾に通っている。宿題も一応やっている。それなのに、北辰テストの偏差値は半年前とほとんど変わらない。
中3の秋は、こうした悩みが出やすい時期です。しかも、お子さん本人が「授業がわからない」と自分から言い出すとは限りません。むしろ「大丈夫」「ちゃんとついていってる」と答えるのです。親が異変に気づくのは、成績表の数字が動かないときや、塾のテキストが手つかずで残っているのを見たときです。
「塾では先生が黒板をどんどん進めてしまって、うちの子は置いていかれている気がする」
「かといって、受験の秋に塾を変えて、かえって混乱しないか心配」
集団授業についていけないとき、最初にやるべきことは、塾をやめることでも、気合を入れ直すことでもありません。「どこで置いていかれているか」を見分けて、塾に伝えることです。そのうえで、伝えても変わらない部分が残るなら、個別指導や家庭教師に「一部だけ」切り替える方法があります。全部を乗り換える必要はありません。
この記事では、ついていけない原因の見分け方、まず家庭と塾でできること、集団授業・個別指導塾・家庭教師の違い、そして切り替えを考えてよい判断基準を、北辰テストと公立入試の日程に照らして整理します。特定の塾や会社の名前は出しません。
まず整理:「ついていけない」は、4つの別の状態を混ぜた言葉
「集団授業についていけない」と一口に言っても、中身は同じではありません。原因が違えば、打つ手も違います。最初に、お子さんがどれに近いかを見分けましょう。
よくある4つのパターン
- 進度が速すぎる:先生の説明を聞いている間に、次の問題に進んでしまう。ノートを写すだけで授業が終わる
- 前の学年の抜けがある:今日の単元を理解する前提になる、中1・中2の内容が抜けている。数学の方程式、英語の文法の土台などで起こりやすい
- 質問ができない:わからないところはあるが、みんなの前で手を挙げられない。授業後に聞きに行く時間もない
- 授業の難度が合っていない:クラスの設定が志望校より上、または下で、解いている問題が今の自分の課題とずれている
この4つは、見た目はどれも「授業中ぼんやりしている」「宿題が終わらない」という同じ姿になります。だからこそ、親が「やる気がない」と受け取ってしまいがちです。しかし、やる気の問題ではなく、わからない状態が積み重なって、聞く気力そのものが落ちているケースも少なくありません。
家で確かめる、5つのチェック
お子さんを責めずに、次のことを、会話の中で自然に確かめてみてください。
- 塾のテキストを開かせて、直近の授業でやった問題を1問、解き方を口で説明してもらう
- 塾の宿題にかかる時間と、「終わらなかった日」が週に何回あるかを聞く
- 塾の授業のあと、先生に質問できた回数を聞く(「ゼロ」なら要注意)
- 塾のテストや確認テストの結果が、返却されたあとに見直されているか
- 北辰テストの結果で、塾で習ったはずの単元の問題を落としていないか
説明できない、宿題が終わらない日が多い、質問ができていない。このうち2つ以上当てはまるなら、授業の中身が頭に残っていない可能性が高いと考えてください。
塾の三者面談で先生にどう伝えればよいか迷う場合は、こちらも参考になります。
集団授業が「合わない」のは、珍しいことではない
ここで押さえておきたいのは、集団授業の仕組みです。集団授業は、クラスの真ん中あたりの生徒に合わせて進度を決める仕組みです。これは良し悪しではなく、構造の話です。
一人の先生が20人、30人に同じ内容を同じ速さで教えるのですから、クラスの中には「少し速い」と感じる子も、「少し遅い」と感じる子も必ず出ます。中3の秋は、受験範囲を終わらせて演習に入る時期です。塾側も、全体の進度を落とすことはできません。そのため、ついていけない子が出ること自体は、塾の質が低いからではなく、集団授業の仕組みから起こりやすい現象です。
ついていけないことを、本人のせいにしない
よくあるのが、親が「ほかの子はできているのに」と比べてしまう場面です。しかし、集団授業で「できている子」の中には、別の塾や家庭学習で先に学んでいる子、小学生のころから基礎が固まっている子も含まれます。クラスの見た目の優劣は、今の努力の差だけで決まるものではありません。
比べるべき相手は、ほかの子ではなく、1か月前のその子自身です。11月8日の北辰までに、何が一つできるようになればよいか。その目標を小さく置くほうが、受験の秋には現実的です。
切り替える前に、塾と家庭でできること
「ついていけない」とわかったとき、いきなり塾を変える前に、試せることがあります。変えたあとで同じ壁にぶつかっても、原因がわからないままになってしまうからです。
1. 塾の先生に、具体的に伝える
「うちの子がついていけていない気がします」とだけ伝えても、先生は対応しにくいものです。次のように、具体的な場面で伝えると、塾側も動きやすくなります。
- 「数学の関数の単元で、授業中に説明できなかったと言っています」
- 「宿題が週に2回は終わらないようです。量を調整してもらえますか」
- 「質問したいことが残っているようなので、授業後に5分だけ時間をもらえますか」
伝えたあとの塾の反応は、その塾を続けるかどうかを決める大事な材料になります。個別に対応してくれる、補習の枠を用意してくれる、宿題の量を調整してくれる。そうした反応があれば、塾の中で解決できる可能性があります。反対に、「みんなこれでやっているので」と返されるだけなら、その塾の仕組みでは対応しきれない部分があると考えてよいでしょう。
2. 家庭で「前の学年の抜け」を1つだけ埋める
前の学年の抜けが原因だと思われるときは、全単元を戻ろうとせず、1つの単元に絞ってやり直します。たとえば数学なら、「一次関数」「連立方程式」「図形の証明」のうち、北辰で落としている単元から1つ。中1・中2の教科書やワークの基本問題を、1日15分、1週間続けるだけでも、授業の聞こえ方が変わることがあります。
- 北辰の成績表で、単元別の正答率が低いところを1つ選ぶ
- その単元の中1・中2の基本問題を、ワークで10問だけ解く
- 間違えた問題は、解説を読んで、自分の言葉で説明させる
ここで大切なのは、時間を区切ることです。夜遅くまで取り組ませると、翌日の授業で眠くなり、かえって悪循環になります。
3. 授業の「予習」ではなく「直前の確認」をする
ついていけない子に「予習をしなさい」と言っても、続きません。そこで、塾に行く前の10分で、前回のノートの要点だけを見返す習慣をつけます。前回の内容が頭に残っていれば、今日の授業の最初の10分で置いていかれる確率が下がります。
たとえば数学の授業だけがついていけない場合、塾の先生に具体的な場面を伝えれば、宿題の量を減らしてもらえたり、質問の時間を取ってもらえたりすることがあります。一方で、前の学年の連立方程式の抜けのように、塾の授業の中では戻れない部分は残ります。家庭で夜に15分ずつ付き合う方法もありますが、保護者の帰りが遅い日が続くと、続けにくくなります。
このように、塾に伝える、家で1単元だけ戻る、という2段階を試しても、なお手が回らない部分が出てくることがあります。そのときが、外部の選択肢を検討するタイミングです。
それでも手が回らない部分が、いちばん厳しい
北辰テストは、11月8日(日)が第6回、12月6日(日)が第7回の予定です(実施の最終日程は、北辰テストの公式案内で確認してください)。そして埼玉県の令和9年度公立入試の学力検査は、2027年2月25日(木)と県から発表されています。
学力検査の2月25日までに、11月8日と12月6日の北辰が2回あります。この間に、授業についていけない状態をそのままにすると、塾に通う時間はあっても、点数に結びつく学びが残らないまま冬を迎えることになります。
しかも、冬期講習や直前講座が始まると、塾の授業はますます演習中心になり、速度が上がります。土台の抜けを抱えたままだと、講習の分だけ「わからない時間」が増えてしまいます。塾が悪いのではなく、時期の性質として、ついていけない部分は秋のうちに手当てしておくほうが、あとが楽です。
家庭では、塾の宿題の確認、前の学年の戻り学習、親子の声かけまで、できる範囲でやってきたはずです。ただ、それでも「毎日、誰かが隣で見る」ことは、仕事や家事を抱える保護者には現実的に続けにくいものです。
集団授業・個別指導塾・家庭教師は、何が違うのか
切り替えを考えるとき、いちばん混乱しやすいのが「どれを選べばよいのか」です。特定の会社の話ではなく、形式ごとの考え方の違いを整理します。
集団授業の塾
- 向いている子:基礎がある程度固まっていて、授業のペースに乗れる子。周りの目があるほうが頑張れる子
- 弱い点:一人ひとりの抜けに合わせて戻れない。質問のしやすさは先生や教室の雰囲気に左右される
個別指導塾
- 向いている子:自分のペースで質問したい子。教室という場所に通うことで、勉強のスイッチが入る子
- 弱い点:講師1人が複数の生徒を同時に見る形式の教室もあり、見てもらえる時間は教室ごとに違う。講師の層や時間割にも左右される
家庭教師
- 向いている子:特定の教科の抜けを集中的に戻したい子。通塾の移動時間を減らして、勉強時間にあてたい子。人前で質問するのが苦手な子
- 弱い点:講師との相性で効果が大きく変わる。料金体系や、講師を交代できるかどうかは会社によって違うので、事前に比べる必要がある
このどれが「正解」かは、お子さんの状態と家庭の事情で変わります。ひとつ言えるのは、集団授業と別の形式は、二者択一ではないということです。集団授業を続けながら、数学だけ家庭教師、というように、足りない部分を補う使い方もあります。
費用の話は、金額を書くと会社や地域で食い違うため、ここでは相場の数字は出しません。比べるときは、月謝だけでなく、入会金、教材費、交通費、入試までの総額、そして講師を交代できるかどうかを、同じ項目でそろえて見てください。塾代の総額の考え方は、こちらでも整理しています。
切り替えてよいか迷ったときの、判断基準
「今の塾をやめるべきか」は、親にとって一番重い判断です。次の基準で、順番に考えてみてください。
切り替え(または追加)を考えてよいサイン
- 塾の先生に具体的に伝えたが、2週間たっても状況が変わらない
- 北辰の成績表で、塾で習った単元の正答率が上がっていない
- 宿題が終わらない日が、週に2回以上続いている
- 本人が「塾に行きたくない」と言い始めている、または前日の夜に腹痛などを訴えるようになった
- 授業内容を説明させても、ほとんど説明できない
最後から2番目の「行きたくない」「腹痛」は、心理面のサインのことがあります。無理に塾へ行かせることを続けず、必要なら学校の先生やスクールカウンセラーなど、専門の窓口に相談することも考えてください。
今は切り替えなくてよいかもしれないサイン
- 授業の理解はできているが、演習量が足りないだけ
- 本人が「このクラスで頑張りたい」と、はっきり言っている
- 北辰の偏差値が、ゆるやかでも上がっている
- 入試まで日が浅く、環境を変えること自体の負担が大きい
入試まで日が浅いほど、環境を丸ごと変えるのはリスクもあります。中3の秋の転塾については、リスクと進め方をこちらの記事でまとめています。
全部を乗り換えるのではなく、「いまの塾は続ける。ただし数学だけ、別の形で見てもらう」という部分的な切り替えは、環境の変化が小さく、本人の負担も少なくて済みます。受験直前期は、ほかの教科の流れを崩さないためにも、こうした「足し算」の形が選びやすい方法です。
切り替えるとき、先に決めておくこと
- 見てもらう教科は何か(全教科ではなく、まず1〜2教科)
- いつまでに何ができるようになればよいか(例:12月6日の北辰までに、苦手単元の基本問題を解ける)
- 週に何回、1回あたり何分か。家の事情で続けられるペースか
- 講師が合わなかったとき、交代できるか。交代の手続きに費用がかかるか
- 費用は、月謝のほかに何がかかるか。入試までの総額はいくらか
この5つを決めてから比べると、「何となく良さそう」で選ぶ失敗を減らせます。
親が確認することのチェックリスト
集団授業についていけない中3の親のチェックリスト
- 塾のテキストの直近の問題を、本人が口で説明できるか確かめた
- 塾の宿題が終わらなかった日が、週に何回あるか把握した
- 北辰の成績表で、塾で習った単元の正答率を見た
- ついていけない原因が、進度・前の学年の抜け・質問・クラス設定のどれに近いか、仮の見立てを立てた
- 塾の先生に、具体的な場面を挙げて伝え、対応を見た
- 家庭で戻る単元を1つだけ決めた
- 見てもらう教科を絞り、いつまでに何を目標にするか決めた
- 11月8日・12月6日の北辰の申込みと実施日を、公式案内で確認した
このうち、すべてを一度にやる必要はありません。最初の2つ、直近の問題を説明させることと、宿題が終わらなかった日の数を聞くことだけで十分です。
早めに動く理由:北辰と学力検査までの時間
北辰テストは11月8日(日)と12月6日(日)の予定で、10月17日の時点では、それぞれ約3週間、約7週間先でした。県の発表では、公立入試の学力検査は2027年2月25日(木)です。10月17日からだと19週間弱になります。
12月以降は、冬期講習と直前対策が重なり、塾の授業が速く、量も多くなる時期に入ります。授業についていけない状態を秋のうちに手当てしておかないと、冬の演習量が、わからない時間をさらに増やしてしまいます。切り替えるかどうかを決めるのは、早くても遅くても構いません。ただ、迷ったまま何もしない期間が、いちばんもったいないのです。まず候補を挙げて、月謝・入会金・教材費・交通費・講師の交代など、同じ項目で比べるところから始めてみてください。
まとめ:まず「どこで置いていかれているか」を見分けよう
- 「ついていけない」は、進度が速い、前の学年の抜け、質問ができない、クラス設定が合わない、という別々の状態を混ぜた言葉。まず見分ける
- 集団授業はクラスの真ん中に合わせて進む仕組みなので、ついていけない子が出るのは構造上起こりやすい。本人の努力不足と決めつけない
- 切り替える前に、塾へ具体的な場面で伝える、家庭で前の学年の抜けを1単元だけ戻す、の2段階を試す
- それでも手が回らない部分は、全部を乗り換えず、1〜2教科だけ個別指導や家庭教師で補う「足し算」の形も選べる
- 比べるときは、月謝だけでなく入会金・教材費・交通費・入試までの総額と、講師を交代できるかを同じ項目で見る
- 北辰は11月8日と12月6日、公立入試の学力検査は2月25日。迷ったまま何もしない期間をつくらない
まずは、お子さんに「塾のテキストの今日の問題を1問、お母さん(お父さん)に教えてくれる?」と声をかけてみてください。説明できたかどうかで、授業が頭に残っているかが見えてきます。そこから、塾に伝えることと、家庭で戻ることが、はっきりしてきます。






