「うちは公立が第一志望だから、私立のことはあとで考えればいいよね」「確約って、結局とったほうがいいの? それとも要らないの?」
中3のお子さんがいるご家庭では、こうした疑問が秋になると出てきます。公立が本命でも、私立の併願確約について秋のうちに知っておくと、受験の見通しがかなり立てやすくなります。
結論から言うと、公立が第一志望のご家庭でも、併願確約は「行き先を先に確保しておく保険」として確認する価値があります。ただし、確約の基準は学校ごとに違い、年度によって変わることもあります。必ず2027年入試向けの情報を、個別相談会や学校の公式サイトで確かめてください。
この記事では、確約の2つの種類、2027年入試(令和9年度入試)で公立に加わる面接と自己評価資料、確約を取らない場合に起こりやすいこと、就学支援金と私立の学費、保護者が相談会の前後に確かめておきたい項目を、順番に整理します。
併願確約の仕組み
埼玉の高校受験には、他の都道府県ではあまり聞かない独特のやり取りがあります。それが、私立高校の「確約」と呼ばれるものです。
おおまかな流れは次のとおりです。中3の秋ごろ、各私立高校が個別相談会を開きます。そこへ通知表や北辰テストの成績を持っていき、学校が示す基準を満たしていれば、入試本番より前に「この成績なら合格の見込みが高い」という見通しを伝えてもらえます。学校側は「確約」という言葉をそのまま使わないことも多いので、相談会での言い回しにも注意して聞いてください。
これは国が定めた制度ではなく、私立高校がそれぞれ行っている運用です。基準の数字も、公表している学校と公表していない学校があります。公表されていない場合は、個別相談会で直接確かめるしかありません。
確約には、大きく2種類があります。
単願確約
その私立高校を第一志望にして、合格したら必ず入学することを約束するタイプです。併願よりも基準が低めに設定されている学校が多い、という傾向はありますが、学校によって違うので一律には言えません。
併願確約
公立高校などを第一志望にしつつ、私立を「滑り止め」として確保しておくタイプです。公立の合格発表まで入学手続きを待ってもらえる(延納)かどうかなど、細かい条件は学校ごとに違います。相談会では、基準だけでなく手続きの条件まで確認しておくと安心です。
確約の判定で北辰テストの偏差値を使う学校もあり、「基準の偏差値を複数回クリアしていること」を条件にする学校もあります。1回だけ良い結果が出ても足りない場合があるので、どの回の結果が対象になるのかも、学校ごとに確かめておきましょう。
→ 内申・北辰の確約基準一覧【2027年入試】埼玉私立の学校別
2027年入試で変わること
今の中3生が受ける2027年(令和9年度)入試は、公立も私立も、これまでと違う点があります。
公立高校の変更点
埼玉県教育委員会が公表している実施方針では、次のような変更が示されています。
- すべての受検生に、個人面接または集団面接が行われる
- 調査書の記載が「各教科の学習の記録(9教科5段階の評定)」と「総合的な学習の時間の記録」が中心になる
- 受検生全員が「自己評価資料」を提出し、面接の参考資料として使われる
自己評価資料には、これまでに力を入れたことや努力したこと、入学後に取り組みたいことなどを、自分の言葉で書きます。部活動や資格の記録が調査書の欄として並ぶ形から、本人の言葉で説明する形に比重が移る、と考えるとイメージしやすいと思います。
共通選抜の配点は、県の実施基本方針で、学力検査が各教科100点で5教科合計500点、面接は基本点30点とされています。面接の得点は、各高校が1倍(30点満点)か2倍(60点満点)のどちらかを選んで決めます。面接の実施日は2月26日です。詳しい扱いは、志望校の「選抜実施内容」で確認してください。
私立高校の確約まわり
確約の基準は、私立高校がそれぞれ決めているものです。そのため、2027年入試では「前年と同じ基準が使われる」とは限りません。偏差値だけでなく、内申点や当日の試験、面接をどう扱うかが、学校によって変わる可能性があります。
ここで大切なのは、噂や前年の情報で判断せず、志望校の説明会や個別相談会で2027年入試の扱いを直接聞くことです。保護者の方が一緒に参加して、聞いた内容をメモしておくと、あとで比べやすくなります。
→ 【2027年入試】埼玉県公立・私立高校入試の年間スケジュール
公立の面接や調査書に「読みにくい部分」が増えるからこそ、秋のうちに私立の行き先を確保できる併願確約の意味は、大きくなっていると私は考えています。ただしこれは私の見方であって、確約がなければ不利になる、という公式の説明ではありません。
確約を取らない場合に考えておきたい3つのこと
「確約がなくても、当日がんばれば受かるのでは」と考える方もいます。もちろん、確約なしで受験して合格する人もいます。そのうえで、確約を取らない場合に起こりやすいことを、冷静に整理しておきましょう。
1 一般入試で当日の得点だけで勝負することになる
確約を持つ受験生が多い学校では、確約なしで受ける場合、当日の試験の点数で合否が決まる場面が増えます。模試で学校の基準に届いていなかった場合、本番で点数を大きく伸ばす必要があります。どのくらいの割合の受験生が確約で入学しているかは学校ごとに違い、公表されていないことも多いので、これも個別相談で聞いておきたい点です。
2 公立入試に向かう気持ちの余裕が変わる
私立の行き先が決まっていないまま公立入試に向かうと、「ここで落ちたら後がない」という気持ちが強くなりやすいものです。緊張でふだんならしないミスが出ることもあります。逆に、行き先が一つ決まっているだけで、落ち着いて本番に臨めるお子さんは少なくありません。これは気持ちの話なので、お子さんの性格によって差があります。
確約を取らないと決める場合でも、私立の出願日程が近づいてから受験校を探し始めると、個別相談会で話を聞く時間が取りにくくなります。北辰テストの第7回は12月6日なので、その結果を待ってから動くのではなく、秋のうちに受験校の候補だけでも絞っておくと、選べる学校の幅が広がります。
3 公立の欠員補充や私立の二次募集は選択肢が限られる
私立も公立も不合格だった場合、残る道は公立の欠員補充や、一部の私立の二次募集です。令和8年度は、欠員補充を行う全日制の学校が66校で、欠員補充人員は2,275人と県が発表しています。数字だけを見ると多く感じるかもしれませんが、どの学校に空きが出るかは公立の合格発表のあとでないと分かりません。希望する学力帯や学科、通える範囲の学校に空きがあるとは限らない、ということは知っておきたいところです。
確約を取るかどうかは、ご家庭の方針でもあります。取らないという判断も選べますが、そのときは「万一のときの行き先をどう確保するか」まで、事前に家族で話しておくことをおすすめします。
→ 確約があっても不合格になる?私立高校で起きる5つのケース
私立の学費の負担は、制度が変わっている
「公立一本でいく。私立は学費が高いから」という理由で、確約を最初から考えないご家庭もあります。ただ、この点は制度が変わってきています。
国の高校生等就学支援金は、2026年度(令和8年度)から所得制限が撤廃されたと政府広報などで案内されています。私立の全日制では、支給の上限額が年額45万7,200円とされています。ただし、支援の対象は授業料の範囲内です。入学金、施設設備費、制服や教材、修学旅行の積立金、通学費などは対象外で、自己負担が生じます。また、申請が必要です。
私立高校には、学校ごとに独自の奨学金や特待生制度を設けているところもあります。条件は学校ごとに違うので、個別相談会で一緒に聞いてみてください。「私立は無理」と決めてしまう前に、授業料以外も含めた総額の目安を、志望校ごとに確かめてみる価値があります。
制度の詳細や自分の家庭が対象になるかは、文部科学省の案内、お子さんの中学校、進学先の学校の案内で必ず確認してください。
確約に向けて、保護者ができること
「高校受験は本人の問題だから、自主性に任せたい」というお考えは、教育方針としてとても大切だと思います。そのうえで、埼玉の私立の確約まわりは、日程や手続きが複雑です。保護者が情報の整理役をすると、お子さんも勉強に集中しやすくなります。
保護者がやっておきたいことチェックリスト
- 北辰テストの申込期間をカレンダーに入れて、忘れずに申し込む
- 志望校候補の私立高校の個別相談会の日程を一覧にして、早めに予約する(人気校は予約が埋まることもあります)
- 通知表、北辰テストの成績表、検定の合格証などのコピーを整理しておく
- 相談会には保護者も同行し、先生から聞いた基準や条件をメモする
- 複数校のメモを並べて、条件を比べられるようにしておく
- 中学校の三者面談でも、私立の併願プランについて担任の先生に相談する
相談会では「今の成績で確約をもらえそうか」だけでなく、事務的な点も確かめておくと安心です。
手続きまわりの確認事項
- 入学手続きの締め切りはいつか
- 延納(公立の結果が出るまで納入を待ってもらえる制度)は使えるか
- 延納に必要な書類や費用は何か
- 確約の基準に使われる北辰テストは、どの回の結果が対象か
手続きの流れは学校によって違います。複数校を比較しているときほど、メモの有無が後で効いてきます。
確約ラインまであと一歩のときの考え方
今の成績で、志望校の確約ラインまであと少し足りないご家庭もあると思います。2026年度の中3北辰テストは、第3回が7月19日(日)、第7回が12月6日(日)と案内されています(日程は変更されることがあるので、北辰図書の公式情報で確認してください)。第3回はすでに終わっているので、確約の判定に使える回は、第7回までの限られた回数です。
確約の基準が学校ごとに非公表であったり、年度で変わったりする以上、最後は「基準に届くかどうか」を自分たちの力でコントロールしきれない部分があります。だからこそ、できる手は、第7回までの期間で弱点を絞って得点を上げる準備を進めることです。
もちろん、塾や家庭教師を使えば必ず成績が上がる、ということではありません。今の塾や学習方法を続けるのか、変えるのかを決める材料をそろえる、という位置づけです。
基準の偏差値や内申点の「あと少し」をどう埋めるかについては、次の記事も参考にしてください。
→ 英検準2級は公立受験の加点にならない?令和9年度入試の変更点
確約に向けた年間スケジュールの目安
確約の動きは、実は夏から始まっています。目安として、次の流れで考えてみてください。
- 夏から初秋:北辰テストを受け続けて、志望校の目安になる偏差値を把握する
- 9月から10月:私立高校の説明会や個別相談会の日程を調べて、予約を取る
- 10月から11月:個別相談会に参加し、成績資料を持参して確約の可能性を確認する
- 11月から12月:確約について見通しがついた高校の書類や条件を整理する
- 1月:私立高校の入試(単願・併願)
- 2月から3月:公立高校の入試・面接
年度によって細かい日程は変わります。必ず志望校の公式の案内で確かめてください。ゲームやスマホの使い方など、家庭の中での関わり方で悩んでいる場合は、こちらも参考になります。
→ 受験生のゲームは禁止しないほうがいい?中3のルールの決め方
まとめ:確約は子どもの安心のために
この記事の要点を振り返ります。
- 併願確約は、秋のうちに私立の行き先の見通しを立てる、埼玉ならではの運用です。国の制度ではなく、基準や手続きは学校ごとに違います
- 2027年入試では、公立で全員面接と自己評価資料が加わります。私立の確約の基準も年度で変わる可能性があるので、2027年入試の情報を直接確かめましょう
- 確約を取らない選択もありますが、その場合は万一のときの行き先をどう確保するかを、事前に家族で話しておきましょう
- 私立の授業料は、就学支援金の所得制限撤廃で負担のあり方が変わっています。授業料以外の費用は別に必要なので、学校ごとに総額を確かめましょう
- 12月6日(日)の北辰テスト第7回までの受験計画と、個別相談会の予約状況を確認しておきましょう
保護者の方が次にやることは、志望校候補の個別相談会を予約して、2027年入試の基準と手続きの条件を直接聞くことです。聞いた内容を家族で共有できれば、お子さんも安心して本命の受験に向かえます。焦らず、一つずつ準備していきましょう。
この記事で確認した資料






